媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「O2Oではリアルとバーチャルを 回すサイクルをつくることが重要」--吉羽一高 (電通 デジタル・ビジネス局 メディア企画部 アート・ディレクター)

吉羽一高氏

 O2Oの進展で企業のマーケティングはどう進化していくのか。また、広告代理店はどう動いていくのか。電通 デジタル・ビジネス局 メディア企画部の吉羽一高氏にO2Oの現状と展望を語ってもらった。

吉羽一高(電通 デジタル・ビジネ局 メディア企画部 アート・ディレクター)

吉羽一高(電通 デジタル・ビジネ局 メディア企画部 アート・ディレクター)

O2Oの立ち上がりと電通の役割

 O2O的なアプローチは、マーケティングのプロセスの中の1つとしては、新しいものではないと思っています。十年くらい前も、「クリック&モルタル」という言葉で、ウェブで商品や店舗の告知をして、リアル店舗に顧客を誘導することは行われていました。ここに来てO2Oというキーワードが注目されている理由は、技術的・環境的な進化がいくつか起きていて、今までできなかったアプローチができるようになったからです。ひとつはスマートフォンの普及、もうひとつは認証です。O2Oには、リアルな世界とバーチャルなネット世界を紐づけるため、個人を特定する認証のキーが必要です。Facebookや他のソーシャルなサービスが多様性を持つ形で広がり、リアルとバーチャルで特定の人を紐づけるキーが普及してきました。

 O2Oの定義は一番シンプルな形で言うと、リアルとバーチャルを一方向ではなく回していくサイクルをいかに作るかだと思います。これまではウェブで告知してリアルに連れてくるという一方的なアクションでした。それが現在はウェブで告知して、人が誰かを認識してリアルな場所に連れてきて、その人がどういうアクションを取ったかということをまたウェブに返すというように、リアルとバーチャルをサイクルさせることができるようになってきました。この新しい進化が起きているため、O2Oというキーワードが注目されています。

 ただし、どこまでがO2O的なサービスなのかは定義が難しく、O2Oという言葉だけが先走っている部分もあります。企業が行っているビジネスの構造に紐づけた形でのO2Oを実践しないと、企業の中には浸透しないですし、マーケティングサイクルの中に乗っていきません。今のマーケティングのサイクルの中で、こういうO2Oならその企業に合うのではないかという設計をすることが電通の中の役割だと思っています。

 そういう意味で言うと、「PASSS」とか「Click AD」のようなO2O的なサービスを自分たちで作ることもやります。実はO2O周りはいろいろなハードルがあり、特に海外系のサービスは言語的なハードルがある上に、リアルが絡むので技術だけでは浸透しないサービスだと思っています。昨年9月にアップルの「iPhone5」が出ましたが、アップルの電子クーポン管理アプリ「Passbook」を日本国内で使いやすい環境に持っていくために発行管理システム「PASSS」とクーポン紹介サイト「Passbank」を作りました。

 ただし電通は何か1つに限定的にコミットしているわけではないです。他のパートナーと組んだりして、他のサービスもいろいろと手掛けています。

この1~2年でO2Oの形が定まり本格普及

 また、なぜO2Oなのかということが実は重要だと思っています。クリック&モルタルから今のO2Oの流れで言うと、その間に大きく変わったこととして、Eコマースの爆発的な伸びがあります。クリック&モルタルという新しいコミュニケーションが出てきた時、当初はクレジットカードで物を買うとか、触れない物を買うのは気持ち悪いと感じる分野があって、誰がネットで服を買うのかという時代がありました。ただし、当時の人たちが心理的なハードルだと思ったものは意外と簡単に抜けてしまって、今ではみんなクレジット決済しますし、普通のアパレル製品も買う、ネットオークションも流行るという形でEコマースが伸びました。

 ただしEコマースが伸びてきた裏では、いろいろなトライ&エラーが起きていました。アマゾンのワンクリックで商品が買えるというものもあれば、ある商品を買ったら、こういう商品も買った方が良いというレコメンデーションなど、リアルではなかなかできなかったアクションがいくつもトライ&エラーされて、それがまたユーザーのモチベーションを喚起してEコマースを大きくしてきました。その技術を今度はどうやってリアルリテールのほうにもっていくかが実はO2Oで隠れている重要な要素だと思っています。

 O2Oと言っても、単なる新しいアプローチというより、ここまでメーカーやユーザーがかかわって、いろいろなことができるようになってきたものが、ウェブの中の世界からリアルの世界にも紐づいていく入口になっています。このことが今、O2Oが本来注目されている本当の理由だと思います。

 一方で、O2Oは新しい試みであるので、影響力としては限定的なケースも多いと思っています。しかし新しい試みは、そのサイクルが回り始めれば次第に大きな影響力を持つということが形として見えるのであれば、そういったものをピックアップして、市場やクライアントに浸透させていくことが電通の役割だと思っています。

 たぶんこの1~2年くらいの期間は、どういう形のO2Oが世の中的に回る形なのかが膨れつつも整理されていくフェーズになると思います。ある程度ビジネスモデルが整理されていく過程で、カロリー(労力)を多くの人が投下し始めるので、そうするとその形がより影響力を持ってきます。メディアとしての影響力を持ち、多くのユーザーを抱え、実際に使えるエリアが広がっていきます。

 その言葉がキーワードとしてフォーカスされなくなった、呼ばれなってきたタイミングのほうが、実は影響力が大きくなり、使っている人の規模も大きくなっているケースというのが多々あります。そういう意味で言うと、O2Oという言葉は2年もすれば使われなくなると思いますけど、その時に今言っている思想に近しいものが世の中のプラットフォームとして浸透しているのではないかと思います。 (談)

 
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