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松浪健四郎・日本体育大学理事長【高齢化社会にも対応して『健康』をキーワードに新時代の体育振興を目指す】

大学の挑戦

明治時代初頭から体育、スポーツの普及、発展、そして教員の養成を主軸に、長い歴史を持つ日本体育大学。青少年のみならず、昨今は高齢者層への体育の普及、幼年教育における体育教育の重要性に着目し、次世代に向けた新学部、学科の設立を積極的に行っている。今後の展望について松浪健四郎氏に話を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

日本体育大学、オリンピックメダルの 4分の1を獲得する実力

―― 日本体育大学は著名アスリートを輩出し、優秀な体育教員を養成されていますね。

日本体育大学 理事長
松浪健四郎(まつなみ・けんしろう)
1946年生まれ。70年日本体育大学体育学部武道学科卒業。75年日本大学大学院博士課程修了。その後、専修大学教授。96年衆議院議員に初当選しその後3選。自民党副幹事長、文部科学副大臣などを歴任。2011年6月より現職。日本レスリング協会副会長、日本アフガニスタン協会理事長など公職多数。

松浪 1891年に本学の前身である日本体育会体操練習所が設立されています。明治時代末期には、当時としては画期的な女子体育教育も行っています。戦後に、現在の日本体育大学の形になり日本体育大学女子短期大学や、1963年には保育科も開設しました。また、先のロンドンオリンピックには23人の選手を送り込みました。これまでに日本がオリンピックで得たメダルの4分の1は本学の関係者が獲得したものです。これは本学がスポーツの強化に積極的に取り組んできた大きな成果です。

―― 最近は、一般大学でもスポーツを強化していますね。

松浪 かつてはスポーツ指導者、体育教員の養成機関としては、本学のほかには筑波大学くらいしかなかったのですが、今は多くの大学が取り入れていますし、今後も増えるでしょう。大学の知名度向上のため、スポーツに力を入れるところは古くからたくさんあります。しかし本学は、一般の大学とは全く違う側面から一歩先んじています。例えば、産学官の連携強化です。具体的には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と協力して、宇宙飛行士候補生に体育指導を行ったり、トヨタと提携してF1レーサー養成のために車の提供を受けます。面白いところでは、文化学園大学の学生がデザインした衣裳で本学の学生が体操を行う、また武蔵野音楽大学の学生による生演奏で体操演技をするといったことも計画中です。

―― 18歳人口の減少など、大学は志願者獲得で厳しい競争にさらされていますね。

松浪 既に大学の二極化が進んでいます。その中で勝ち組になるか負け組になるか、経営者としては、きらりと光る独自性に富んだ魅力的な大学を作っていかなければなりません。具体的な施策としては、本学はもともと、全国型の大学なのですが、現在は地方出身者が減ってきています。そこで、地方単位の入試、ブロックごとの合格枠の設置などを行っています。本学の強みは、全国に教員として多数の卒業生がいるので、彼らが応援してくれることです。

―― 就職対策ではどのような工夫をしていますか。  

松浪 教員や警察官、消防署員といった公務員になる学生も多いのです。そのために、学生支援センターでさまざまなサポートを行っています。同センターでは一般企業への就職支援にも力を入れており、就職率は90%以上になっています。現在、体育教員への道は狭き門なのですが、本学の卒業生の場合、新卒で教員になれなくても非常勤講師をしながら2年目、3年目で採用される例も多い。毎年、330~340人の卒業生が教員採用されています。中学校、高校でダンス、武道が正式に科目として採用されたこともあり、今後、そういった専門教育ができる教員の需要は高まるでしょう。

日本体育大学の大改革、児童スポーツ教育学部さらには保健医療学部を新設

―― 大学改革にも積極的に取り組んでいるようですね。

松浪 100年以上の伝統を土台とした上で、新たなステージにチャレンジするために、現在、11の改革項目を掲げています。その中で「入試広報センターの設置」「キャリア支援センターの設置」「2キャンパス構想」は既に実現しています。ほかにも国際化、スポーツ図書館の設立、地域社会との連携、新学部・学科の創設など、やらなければいけない改革はいくらでもあります。

―― 実際に、昨年度は児童スポーツ教育学部を新設されました。

松浪 児童スポーツ教育学部に加えて、来年度には保健医療学部(仮称)を新設する計画です。児童スポーツ教育学部は、主として小学校、そして幼稚園や保育園でのスポーツ教育を得意とする教員を養成することを目的としています。既に体育学部健康学科などで、高齢者スポーツや障がい者スポーツにも取り組んでおり、幼児から高齢者まで、すべての指導者を本学で養成できるようになったのです。保健医療学部には、大きく2つの柱があります。まずはアスレチックトレーナーや柔道整復師を養成すること。もうひとつが、救急救命士の養成です。どちらも国家資格ですが、本学で学ぶことで受験資格を満たし、社会で活躍できる人材を輩出したいと考えています。

―― 短期間で2つの学部を設立するのは、相当なチャレンジですね。

松浪 まだまだチャレンジし続けます。将来的には本学を、身体にかかわる科学と文化の総合大学にしようと考えています。日本の大学は古くは法律、経済や経営、外国語、理学、工学など、時代の要請に応じて発展してきましたが、これからは「健康」が重要視される時代です。それに対応した学部、学科を創設しながら、社会に貢献していかなければならないのです。