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「患者さんから“ありがとう”と言ってもらえるような免疫細胞医療を目指します」--鈴木邦彦・メディネット社長

メディネット社長 鈴木邦彦氏

免疫細胞治療に関する設備機器の提供を中心に総合的なサービス展開を行うメディネット。昨年、再生医療等の安全性の確保等に関する法律が成立し、社会環境が整いつつあるが、そのはるか以前から、再生医療分野に特化したサービスを展開している。今後の戦略について鈴木邦彦社長に話を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

免疫細胞療法の確立を目指してメディネットを設立

-- 御社が免疫細胞治療にかかわることになった経緯は。

鈴木 がん治療にはかつて、非常に副作用が強い抗がん剤治療が行われていました。がんに苦しむというよりも、治療の副作用に苦しんでいる患者さんが多かったのです。

 そのような時、東京大学名誉教授である故・江川滉二先生と当社の創業者である現会長・木村佳司が出会い、副作用の少ないがん治療、そのひとつとして免疫療法をどうすれば世に出せるかを考えたのです。

 ところが、当時の薬事法では、従来の薬という定義には自家細胞を使った治療はあてはまらず、そのため薬事法にはなじみませんでした。

 では、どうすれば免疫細胞による治療が行えるかを関係省庁に何度も相談し、医療機関の施設内に細胞加工施設を作り、そこに企業が技術者、資材などの細胞加工に必要なものを提供するというビジネスモデルができました。細胞加工はエンジニアリングの世界であり、医師がそれを行うのは専門外。そこで当社が設備の提供と細胞加工を担おうと考えて、会社を設立したのです。

-- その後の成長は順調だったのでしょうか。

鈴木 当社は1999年にこの事業を開始して、少しずつ認知を得ていったのですが、2010年に医政第0330号通知というものが出ました。これは「医療機関同士での細胞加工の委受託を認める」というものです。これによって、設備を持たない医療機関が設備を持つところに細胞加工を委託できるようになりました。これを契機に、競争が激しくなってきています。

 しかし、昨年、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」と「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が成立し、今年中には施行されます。再生・細胞医療の新たな法的枠組みが定義され、これまでルールがほとんど無かった再生医療の分野で、一定の基準に基づいて設備を整えることになります。

 このルールができることは非常に喜ばしい。これまでは細胞加工をする企業の中には格安に行うことを重視し過ぎていると感じられるところもありました。これが法律によって、適正な競争環境になってくることは歓迎しています。

 また、細胞加工業というものが認知され、これまで医療機関から委託されていたものを外注で受けることができるようになりました。ですから、医療機関内で加工する必要は無くなり、企業が自由に加工する場所を選べるようになったので、これまでとは違ったサービスの形になっていくと考えています。

日本の成功体験を元に海外展開も視野に入れるメディネット

-- 細胞加工の市場規模はどの程度ですか。

鈴木 一昨年の秋から経産省主導で再生医療の産業化、事業化の研究会があったのですが、そこで出てきた資料によると、非常に急成長しています。

 一方、薬の分野は、既に有効な成分は研究され尽くしており、今後、画期的な新薬の発見は難しいという意見もあります。そこで、再生医療の分野に注目が集まっているのです。法改正で大量生産も可能になり、コストパフォーマンスも良くなってくる。今後、さらに市場は拡大するでしょう。

-- 需要の拡大傾向を見込んで、製法や販路で工夫されている点はあるのでしょうか。

鈴木 製品開発に関しては、昨年子会社を設立し、細胞医療の製品化を行っています。改正薬事法の中で新たに再生医療等製品というカテゴリーができました。その中で、自家細胞を含めて、条件付き、期限付きの承認が認められています。いわゆる早期承認制度の1つですが、これをうまく活用するために、専門の子会社を設立しました。

-- 競合他社との差別化ポイントは。

鈴木 古くから臨床研究として多くの大学病院との付き合いがあります。加えて、160人の社員に対して30人程度の研究者がおります。このことは当社の強みになっています。

-- 収益の状況は。

鈴木 事業の黒字化をまずは目指したい。現状ではいまだ黒字化への道のりは遠いと言わざるを得ませんが、安定的に利益を出せる企業になることが当面の目標です。この業界はまだ若い業界なので、想定外のことも起こり得ます。技術的に新しいものの発見も十分にあり得ます。

 今後の事業展開については、そういった新発見、新技術の開発などをきちんと見すえて、ある意味柔軟に対応していかなければならないでしょう。また、いま日本で法改正されていますが、実はこれに海外が注目しています。日本でのビジネスモデルを確立して、その経験を海外での展開でも生かしていけるようにします。直接海外に展開しなくても、現地法人と提携するような形もあり得ます。

-- 今後の抱負をお聞かせください。

鈴木 最新で最良で最善の医療を患者さんに提供していきたい。これが当社設立の理念であり、江川先生と木村会長の思いなのです。この志を忘れることなく患者さんに「ありがとう」と言っていただけるような企業になりたいと思っています。

 

メディネット社長 鈴木邦彦

【すずき・くにひこ】

1959年生まれ。82年早稲田大学政治経済学部卒業。同年エッソ石油入社。日興証券入社。2001年ルクセンブルク日興銀行社長。06年メディネット入社。07年執行役員、12年取締役を経て、13年10月に社長に就任。

 

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