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「3つの成長戦略で困難な 分野にチャレンジしていきます」--市川祐一郎・日本海洋掘削社長

日本海洋掘削は、海底下にある石油、天然ガスなどの掘削を行う日本で唯一の専門会社。1968年に石油資源開発や三菱グループ、造船会社、商社等が出資して設立された。世界の海洋を舞台にこれまでの総掘削坑井数は1200以上、延べ掘進長は2700㌔㍍以上に及ぶ。今後の成長戦略を聞いた。
(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

市川祐一郎氏は語る 日本唯一の専門会社として大きな責務を背負う

-- 海洋資源に改めて注目が集まっていますが、御社の事業内容は。

市川 当社は海洋掘削リグという移動式の海洋掘削装置を運用して、海洋資源を掘り出す仕事をしています。取引先は、国内外の石油・天然ガス開発会社で、アジア、オセアニア、メキシコ湾、中東、アフリカ、地中海など、幅広い海域を舞台に、海洋掘削工事を行っています。

 海洋資源の開発には大きく3つの段階があります。まず、資源の有無、有用性を探る探鉱という段階、次に開発・生産そして最後が精製・販売です。当社は最初の探鉱では試掘、探掘を行い、その結果、採算が取れると判断したら、生産井での掘削に進みます。

 現在、当社が運用しているリグは、セミサブマーシブル型リグ2基、ジャッキアップ型リグ4基およびドリルシップ1基の計7基です。それぞれに特徴があり、セミサブマーシブル型リグは、半潜水型リグとも呼ばれ、水深数百㍍〜3千㍍の深海での掘削が可能です。ジャッキアップ型リグは、甲板昇降型リグとも呼ばれ、水深150㍍以下での比較的浅い海で利用されます。船体を波の影響を受けない高さまでジャッキアップするので、波が荒い海域でも掘削が可能です。

 ドリルシップは、船型リグとも呼ばれ、船に掘削装置を取りつけたもので、移動が速い上に、水深3千㍍以上の深海で操業できるものもあります。よく知られているJAMSTECが保有する「ちきゅう」がこのタイプです。

-- 専門会社では日本で唯一の存在ですが現在の経営環境はどうですか。

市川 1960年代後半に政府が、原油の国内消費量の30%を自主開発で賄いたいとの目標を設定、その方針に従って67年に石油開発公団が設立され、翌年に同公団の事業本部であった石油資源開発や三菱グループ等が出資して当社が設立されました。初代の社長は大槻文平氏(当時三菱鉱業社長)で、石油開発公団から技術面で、三菱グループから資金面でご協力をいただく形で事業が始まりました。

 海洋掘削コントラクター市場をみると、現在、世界中には海洋掘削リグが915基あり、その85%が稼動中です。ちなみに当社が保有するリグ6基はすべて稼働しています。さらに、世界中で新たに造られているリグが約240基ありますが、これらが加わっても、さらに300基程度のリグを建造しないと需要に追いつかないと言われています。市場がかつてないほどにぎわっている背景には、新興国を中心とした世界的な化石エネルギー需要の増加と原油価格の高止まりがあります。

 また、最近では新たな油田の規模が小さくなっているという問題があります。つまり、それを補うためにも多くの油田開発が求められているのです。さらに、70年代から80年代にかけて、建造された多数のリグが古くなって市場から退出していくので、さらにそれだけの数の新しいリグが必要になっているのです。

メタンハイドレートの開発研究を推進したい市川祐一郎氏

-- 競合が多い中で、御社の強み、特徴は何ですか。

市川 当社は海洋掘削リグの建造に直接立会い、当社技術陣のきめ細かい指示のもとで、使い勝手の良いリグを建造しています。社内に掘削リグに精通した人材が数多くいることが大きな強みであると思っています。

 リグ操業におきましても、海外勢にはない、丁寧な作業や、各リグで働くクルーの定着率が高いためリグの操業ノウハウが薄れずに蓄積しているのも、当社の強みです。

-- 今後の成長戦略についてお聞かせください。

市川 3つの成長戦略を描いています。まず、リグの数を増やしていくこと。ただし、リグを増やすということはリグを運用する人も増やさなければならないので、人員の増強、人材育成が急務です。新人が一人前になるまでに10年はかかるので、効率的な教育・訓練ができるよう工夫しております。

 2つ目は大水深海域掘削用リグの開発・建造です。「ちきゅう」による大水深掘削の実績はありますが、これからはより困難な大水深・新規マーケット分野に積極的に挑戦していきます。大水深掘削用のリグを自社で保有し、運用することは将来の大きな事業拡大につながります。

 そして3つ目は、メタンハイドレートの開発・応用分野の拡大です。当社は国が主導で進める開発研究に早い段階から携わってきました。昨年春に世界で初めてメタンハイドレートの海洋産出試験に成功しましたが、私自身、その開発研究と、「ちきゅう」の開発に長年携わってきました。現在、経済産業省は次の産出試験の準備に取り掛かっており、2020年代後半に民間主導で商業化することを目指しています。世界には未開発の海域が数多くあります。これまで掘削できなかったところも、技術の進歩で掘削できるようになります。今後もより難しい分野に挑戦しながら、当社を「いつでも夢と希望、誇りが持てる会社」にしたいと思っております。

 

日本海洋掘削社長 市川祐一郎

【いちかわ・ゆういちろう】

1954年生まれ。77年東京大学工学部卒業。同年日本海洋掘削入社。2002年メタンハイドレート開発事業部長。04年取締役、05年常務取締役、06年代表取締役専務。08年日本マントル・クエスト社長兼務。13年6月から現職。

 

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