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「『個の尊重』を理念に都心型大学としてさらなる飛躍を目指します」--日髙憲三・学校法人明治大学理事長

大学の挑戦

大学の人気ランキングや入学志願者数で、トップを走る明治大学。多彩な卒業生を輩出している背景には「個」を強くするという理念が生きている。この10年内に3学部を新設、昨年は4つ目となる中野キャンパスを開設するなど、都心型大学として新たな成長を続けている。その戦略を日髙理事長に聞いた。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

日髙憲三氏は語る「責任ある自由」を育む都心型の総合大学に

-- 各種アンケート調査ではトップクラスの人気ですね。

学校法人明治大学 理事長
日髙憲三(ひだか・けんそう)
1937年生まれ。60年明治大学政治経済学部卒業。日本リック株式会社を創業。同社社長を経て、現在ファウンダー最高顧問。その間、業界団体の電算機利用技術協同組合理事長を歴任。2004年学校法人明治大学評議員。08年常勤理事(経営企画担当)、12年4月より現職。

日髙 大変ありがたいことだと思っておりますが、喜んでばかりもいられません。大学経営も難しい時代に入りましたので、改革の手を緩めることはできません。本学は130年を超える歴史と伝統のある総合大学ですので、さらに社会的評価を高める努力をして参ります。

-- 建学の精神は。

日髙 明治維新を経て近代国家として歩んでいこうとしていた1881年に、30歳足らずの青年法律家だった岸本辰雄先生らによって明治法律学校が創立されました。当時は自由民権運動が華やかな時代であり、裁判官や弁護士をはじめ、法治国家となった日本を支える多くの人材を本学から輩出して参りました。建学の精神である「権利自由、独立自治」も、そのようなことが影響していると思います。そして、今では建学の理念を「『個』を強くする大学」というキャッチフレーズに具現化しています。これは挑戦する心、リーダーシップ、情熱や知恵をもって人のために役立とうとする個性を強くするということです。

-- 都心型大学としてさまざまな改革を行い、近年は学部の新設も積極的ですね。

日髙 多くの大学が郊外へ移転する中、本学は都心に残ると決めました。千代田区に本学の象徴と言える「リバティタワー」を建設し、教育環境、研究環境を徹底的に充実させました。

 その一方で、この10年で3つの学部を新設しました。まず、昨年春に開設した「総合数理学部」ですが、数理科学を基盤にし、社会のあらゆる現象を解明していく能力を培う教育を行っています。この分野では、日本で初めての学部であり、世界的に見ても数少ない先端的な研究を行っています。第1期生の募集では合格辞退者も少なく、非常に高い人気がありました。

 次に総合数理学部とともに中野キャンパスに設置している国際系の学部として「国際日本学部」があります。他大学と異なる大きな特色は、グローバル人材を輩出するためには、まず、日本の魅力を学び、深く理解した上で情報発信できる能力を高める必要があると考えました。そして、外国の方に日本の伝統文化も知ってもらう。そのために、国際日本学部では徹底的に英語力を磨き上げると同時に、日本の社会科学・人文科学なども学びます。この学部では、さらに外国人留学生の受け入れも積極的に行っています。

先進性のある研究で社会に貢献できる人材を育成したい日髙憲三氏

-- 情報系はどうですか。

日髙 ちょうど開設10年目となるのが「情報コミュニケーション学部」です。現代社会は情報メディアの発展に伴い、変化が激しく不確実性が高まっている時代です。高度情報化社会の中で氾濫する多様な情報を、どのように取り入れ、どうコミュニケーションを取っていけるかを探求します。単に情報システムを学ぶのではなく、多岐にわたる複雑な社会において、社会科学と人文科学、自然科学を学際的な視点でアプローチします。このような能力を高め、社会に貢献する人材を育成したいと考えています。

-- 国際化についてはどのように取り組みますか。

日髙 国際化の推進は、日本全体で掲げられている大きなテーマといえるでしょう。明治大学では、留学生比率が高く国際的にもMBAの分野で評価の高い大学院大学である、国際大学(新潟県南魚沼市、小林陽太郎理事長)と学校経営および教育研究活動において提携する系列法人化の協定を昨年、締結しました。総合大学である本学の強みと国際大学の長所を生かして、学生はもちろん、教職員も含めてグローバル社会に対応できる人材教育を進めて参ります。

-- 大学間の競争も厳しくなっていますが、さらなる発展に向けた将来ビジョンは。

日髙 大学を取り巻く環境は、少子化と競争的研究および教育資金の獲得、グローバル化と、以前に比べると急激に変化してきています。大学経営においては、中長期ビジョンを策定し、それを着実に実行していくことが重要です。明治大学では既に「国際人の育成と交流のための拠点となり、世界で活躍する強い個性を育てる教育研究の実現」を目標とする長期ビジョンを策定、これを基に、より時代状況に応じた課題をクリアしていくため、中期計画の策定を手掛けています。その中では、「教育」「研究」「社会連携・社会貢献」「国際連携」「施設設備整備計画」「財務戦略」「組織・運営体制」の7点を重点的に、健全な大学経営のために必要な施策を推進して参ります。

 これまで大学経営は比較的安定していましたが、最近では倒産・合併も報道されるようになりました。企業経営にも通じるのですが、社会の動向を注視し、緊張感を持ちつつ、建学の精神に則った人材育成と永続的な大学経営に取り組んでいかなければなりません。それゆえ常に環境の変化に対応した改革が必要なのです。