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「教育の質を追求して、真の 『全人教育』を実現しています」--小原芳明・玉川学園理事長 玉川大学学長

大学の挑戦

東京都町田市の緑豊かな61万平方メートルの広大なキャンパスに幼稚園から大学院、研究所までが集約されている玉川学園。大学は人文社会系から理工系、芸術系を含む8学部16学科体制の総合大学である。創立者・小原國芳氏が掲げた「全人教育」の理念の下、さらなる発展を目指している。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

観光立国の日本を意識して観光学部を設立した玉川学園・小原芳明氏

-- 創立者の小原國芳氏は成城高等学校の校長を歴任後、建学しておりますが、どのような理想があったのでしょうか。

玉川学園理事長玉川大学 学長
小原芳明(おばら・よしあき)
1946年生まれ。米国マンマス大学卒業。スタンフォード大学大学院修士課程を修了。87年玉川大学文学部教授。国際教育室長、通信教育部長、副学長などを歴任。94年学校法人玉川学園理事長、玉川大学学長、玉川学園学園長に就任。2013年より文部科学省中央教育審議会委員。

小原 祖父の小原國芳が掲げた理念は「全人教育」です。その骨子は「真・善・美・聖・健・富」という6つの価値の創造をベースにしたものです。

 まず「真」とは、真実の探求、学問、知識を得ていくこと。そして「善」は、得た知識を正しく使っていく倫理観です。「美」は、美意識。自然を愛する心だとか、「善」と合わせて欠かせないものだと思います。そして「聖」があります。これは知識を究めていくと、自分が優れた存在、極端に言えば、神のように思えてしまうことがあります。そうではなく、常に神を意識することで、宗教観を育むことだと言っていいでしょう。この4つの価値を支える健康への意識、富を得るための術を教えること。それらが揃って初めて「全人教育」となるのです。

-- 現在もその理念が継承されているのですね。

小原 本学には全人教育を含めて12の教育信条があります。中でも重要なのは「個性の尊重」です。型にはまった人間を育てるのではなく、子どもたちの個性を尊重した教育を心懸けています。個性と言っても「自分勝手」にならないよう支えるのが全人教育でもあります。

-- 1929年に幼稚部、小学部、中学部から玉川学園がスタートし、その後47年に設置した大学の学部はどんどん増えていますね。

小原 最初に設置したのは文学部と農学部でした。文学部は英米文学の研究と教員養成が目的で、農学部は農業こそ国の礎と考えたからです。その後、60年代の高度経済成長期には工学部を設立、さらに経営学部を開設したり、文学部から教育学部を独立させるなどして、拡大してきました。学部、学科の設置は、社会背景の変化や時代の要請に応じたものです。大学も社会の変化と共に変わっていかなくてはなりません。

-- 2013年には、8つ目の学部として観光学部を開設されましたね。

小原 10年以上も前になりますが、私は、日本もいずれはスイスのような観光立国になるべきだと考えていました。それで最初は経営学部の中に観光経営学科を設置し、昨年、学部として独立させたのです。単に観光地の勉強をするのではなく、世界中から来る観光客を国のお客さまと考えた時に、交通、宿泊、食事を中心とした総合的なサービスの向上が求められます。そういったことを学ぶ総合的な学部が必要なのです。

玉川学園・小原芳明氏の思い 履修した単位数より大事なのは教育の「質保証」

-- 最近、多くの大学では、国際、情報と名が付いた学部が増えてきていますが、御校は。

小原 20年以上前に、国際学部の設立を考えたことがありました。その時はさまざまな事情で断念したのですが、今となっては良かったと思います。国際学部設置の方向性は正しいことだと思いますが、特定の学部でやるのではなく、やるとすれば大学全体が国際化しなければなりません。また、医療系、介護系の学部、学科を増やす大学が多いですが、経営的視点からみて、現在は考えておりません。

-- 18歳人口の減少は経営的に大きな問題ですが、どのような改革を行っていますか。

小原 現在、「Tamagawa Vision 2020」という取り組みを行っています。この根幹にあるのは、「教育の質保証」です。大学の教育の質を保証するために、履修単位を重視する履修主義から「確実に智育を高める修得主義」への転換を図りました。半期の履修上限単位を20単位から16単位に設定しています。修得主義では予習・復習したり、グループで討議できる場所が不可欠であり、そのために学術情報図書館の機能を備えた「大学MMRC(仮称)」を建設中です。

 また学生が専門的な知識以外にどのような能力を形成し、どのような付加価値を身につけたかを明確な基準で測定し、評価していきます。その一環として、GPA(Grade Point Average)制度を導入しています。これは、履修した科目を対象として、その成績を平均値で示すものです。こうすることで、どれだけ熱心に授業に取り組んだかを把握することができます。これは卒業要件にもなっています。

-- 就職支援の取り組みはどうですか。

小原 大学入学時からキャリア教育を行って、就職のことを意識させるようにしています。キャリアセンターも充実させていますが、日常の教育でも自分のキャリアを意識させるようにしているのです。大学は就職のための機関ではないという指摘もあります。しかし希望する企業に就職したい学生への支援は惜しみなく徹底的に行います。

 また全人教育の「富」には、生きていく術を教えていくという役割もあります。その意味で、就職支援は大切な業務だと考えています。

 

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