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「真の国際化は日本の文化を知ることから始まる。建学の精神に立ち返りさらなる発展を」--水戸英則・二松學舍理事長

大学の挑戦

明治10(1877)年、学祖・三島中洲翁によって創立された長い歴史を誇る。卒業生には夏目漱石、犬養毅、嘉納治五郎、平塚雷鳥など、そうそうたる名前が並ぶ名門である。その建学の理念「東洋の精神による人格の陶冶」は、今も同大の教育の根本に受け継がれている。「国語力」では定評の高い二松學舍の現状と今後の方針を聞いた。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

 

二松學舍の建学理念とは

 

-- 「国語力」で有名ですが、大学の特徴は何ですか。

二松學舍大学 理事長
水戸英則(みと・ひでのり)
1943年生まれ。69年日本銀行入行。92年青森支店長、95年考査局参事考査役を経て、96年肥後銀行常務取締役。2004年二松學舍事務局次長。常任理事を経て、11年学校法人二松學舍理事長に就任。日本私立大学協会監事、国立大学法人評価委員会委員など、公職多数。

水戸 何よりも長い歴史と伝統に培われてきたということです。創立者の三島中洲は、明治の漢学者、法律家であり大正天皇の東宮時代の侍講でもあった人物です。創立当時は明治維新から時がたっておらず、西洋に追い付け追い越せと富国強兵、脱亜入欧政策が採られた西洋学偏重の時代です。その時代にあえて「漢学塾二松學舍」を創立しました。

 中洲は、東洋の文化を学ぶことによってこそ日本本来の姿を知ることができる。そして、東洋の文化を知ることで、初めて西洋の文化を正しく理解できると考えたのです。また、「道徳観を身に付け、倫理観にあふれ、自ら考え、行動し、判断し、社会に貢献する人を育成する」という理念も今に受けつがれています。

-- 看板は歴史ある文学部ですね。

水戸 文学部には国文学科と中国文学科があり、1学年合計約500人のうち、中国文学科の学生が約170人です。これだけの学生数の中国文学科はほかにはないでしょう。

 また、2004年度には文部科学省の21世紀COEプログラムに「日本漢文学研究の世界的拠点の構築」が採択され、東アジア学術総合研究所は日本の漢文研究の拠点となっており、本学の教員が世界中の大学で、漢文訓読の講義を行っています。あまり知られていませんが、実は日本漢文の研究をしている大学は世界中にたくさんあります。本学が講義を行っているのは、中国の大学や、タイ、ベトナムといった東南アジアの大学だけではなく、英国、ドイツ、イタリア、フランス、ハンガリー、ポーランド、米国といった欧米諸国の大学も多く含まれています。

-- 漢文を軸にして、国際化が進んでいると。

水戸 グローバル化とは英語を学ぶことだけではありません。日本の特色に特化すれば自然とそこには国際交流が生まれます。これを推進していくことも本学の使命として重要だと思います。本学の教員が日本漢文の講義のために世界中の大学を訪れるだけでなく、講義を行っているさまざま大学の研究者が本学を訪れるなど、交流の輪は確実に広がっています。

 国際交流は、日本漢文だけではありません。13年10月には、ミャンマーの商業省と本学の間で交流協定を結びました。私立大学でミャンマー商業省と協定を結ぶのは本学が初めてです。

 

二松學舍の教育ビジョンとこれから

 

-- 国際政治経済学部を設置した背景は。

水戸 国際政治経済学部は1991年の創設ですが、複合的な視点から世界のさまざまな問題、国際事象をとらえるには、政治、経済、法律を総合的に見すえなければならないと考えたのです。本学では特にオセアニア、東アジアを中心とした国際化を意識して、中国、韓国などから積極的に留学生を受け入れています。

社会に貢献できる自律した人材の輩出を

-- 少子化で、大学経営も難しい局面を迎えています。

水戸 少子高齢化に加え、知識基盤社会化が進展し、価値観や制度が大きく変化している今、わが国の大学は教育の質的転換を求められています。学生にどう自主的に勉強する習慣をつけていくか、人間力、社会の牽引力をどう付けていくのか。これらの問題を意識しながら改革を進めていく一方で教職員の意識改革も必要です。

-- 今、具体的に取り組んでいる改革のプランは。

水戸 12年の創立135周年記念式典で発表した長期ビジョン「N2020プラン」の実現です。変化する時代の中で本学の使命を永続的に果たしていくために、その指針として策定しました。

 その骨子は、大きく分けて「基本フレームワークと二松學舍憲章」「2020年における教育の方向性と充実策」「包括的学生生徒支援策」「キャンパス整備」「財政、人事・評価制度、組織、広報体制」の5つの柱です。

 まず、1つ目は、ひと言で言うと温故知新。建学の精神、学祖・三島中洲の教えを再確認し、現代的解釈を行い、育成する人材像を明確にする。そして、これに基づく教育ビジョンを定め、その実現に向けた行動規範「二松學舍憲章」を全教職員が共有していく。次に、この教育ビジョンの具体化です。二松學舍と言えば国語力。ここで言う国語力とは「的確で美しく、人の知性と感性に浸透する力を持った表現の力」を指します。この国語力の養成に加え、私塾であった伝統をふまえて少人数教育を徹底していきます。

-- 今後の方針は。

水戸 これまで以上に社会に貢献できる自律した人材を輩出するには、大学教育の幅を広げ、規模を拡大する必要があります。そのために新たな学部、学科の設置を含め、在籍学生数を現在の約3千人から、将来5千人規模にしたいと思っています。もちろん、ただやみくもに拡大するのではなく、あくまでも二松學舍憲章に則った拡大であるべきだと考えています。