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「豊洲への市場移転に向けて売上高 1千億円を超えるU字回復実現を目指します」--吉田 猛・築地魚市場社長

東京・築地市場を拠点に、水産荷受け大手として高い存在感のある築地魚市場(東証2部)。かつては、首都圏の水産物はほとんどが築地を経て消費者の手元に届けられていたが、輸送技術の発展や商流の変化に伴って市場外流通も増えている。時代の変化と共に変わりゆく同社の現状について吉田猛社長に話を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

 

築地魚市場の豊洲移転で取扱量はU字回復へ

 

-- 築地市場での水産荷受けとはどのような仕事ですか。

吉田 築地市場の歴史は70年になりますが、当社はここで60年以上、商売をしてきました。基本的には卸業なので、魚介類を国内外から集めて、仲買業者に卸すのが業務の中心です。

-- 現在の取扱高は、どのようになっていますか。

吉田 正直なところ、魚の取扱量は減少傾向にあります。平成元(1989)年頃に消費のピークがあり、築地市場の取扱量も80万㌧を超えていました。その後、減少傾向が続き、現在は50万〜55万㌧ほどになっています。鮮魚はほとんど変わっていませんが、特に減少しているのは冷凍魚と加工品です。原因としては商社などが市場を通さず、冷凍設備などを自前で用意して冷凍魚を扱うようになったこと、また加工品も市場を通さずに加工工場が末端の流通業者と直接やり取りする傾向が強まっています。鮮度維持が難しい鮮魚と違い、冷凍物や加工品は保存しやすいことが、市場外流通が増えている理由です。

-- 2016年までをめどに築地市場の豊洲移転が決まりましたが、業務上のメリット、デメリットは。

吉田 実は豊洲に移転することで、取扱量はU字回復すると考えています。そもそも市場の役割で最大のものは、荷物を集荷し、荷を分け、出荷するセンター機能です。しかしながら、現在の築地市場は、残念ながらその機能が疲弊しています。荷物は集まるのですが、そこで終わっています。「ここにモノはあるから、欲しければ取りに来い」ということになってしまっているのです。具体的に言えば場所が手狭になっている影響で「築地から品物を外に出していく機能」、つまり荷捌きの機能が弱まっているのです。

 しかし、豊洲に移転すると、まず場所が広くなり、設備も高度に近代化されます。これによって、出荷時の手間がかなり削減されるので、築地に物を買いに来るお客さまが使いやすくなるでしょう。

 また、ハード面での拡充に加えてソフト面での強化も予定されています。大手商社、水産会社は市場外取引を今後も増やしてくると思いますが、最終的に消費者の手にものを届けるためには流通機能が欠かせません。商社などは市場外の倉庫を活用していますが、豊洲への移転で、豊洲の倉庫の利便性が高まれば、それらの企業も豊洲を使うようになるでしょう。

 

豊洲移転は規模拡大の契機となるか

 

-- 売上高の多くは、セリで生じる手数料ですか。

吉田 市場と言えばセリのイメージが強いと思いますが、この受託取引、いわゆるセリは、当社の売り上げの25%ほどです。残りは仕切取引と言われるもので、依頼を受けて買い付けをします。そういった意味では一般の水産会社や商社と同じで、当社が顧客の需要動向を勘案の上、買付を行うものです。

 また当社が買い付けたものをセリではなく、この仕切取引で買っていただくことも少なくありません。この買い付けには目利きが求められます。さらに、マーケティング能力も必要です。当社のような卸業者は何社もありますが、取扱商品に大きな差があるわけではありません。それでも業績に差が生まれるのは、目利きやマーケティング能力の差だと思います。

-- 今後の御社の戦略、目標などをお聞かせください。

吉田 まず、卸業という商売の性質上、ものを高く売るという発想はしにくい。売り上げを伸ばすには、たくさん売るしかないのです。そういった意味で、機能強化された豊洲新市場への移転には大きな期待をもっています。また、鮮魚は相場商品なので、需要に対して供給が多くなると値が下がります。この日々変動する相場に合わせて、魚価の下落を極力抑えながら商売する仕組みを構築することが重要です。

-- 豊洲への移転を契機に規模拡大などの計画はないのですか。

吉田 卸問屋ですから、規模の拡大は使命と言ってもいいと思います。現在、関連会社を含めた連結決算で、売上高は約800億円ほどですが、近い将来には、1千億円を達成したいと思います。M&Aではなく、あくまでも自助努力で達成すべきだと考えています。この目標を達成した先には、M&Aを含めて、さらなる規模の拡大を考えます。

 卸業は基本的に商流が限られています。ここを考慮してさらに成長するには、多くの商流を持たなければなりません。そのためには、他の販路を持つ企業やメーカーを含めて、いろいろな分野の方と積極的に手を組んで緩やかな連携を進めていきたいと思っています。

 

築地魚市場社長 吉田 猛

【よしだ・たけし】

1950年生まれ。75年北海道大学水産学部卒業。同年丸紅入社。2003年札幌中央水産執行役員。04年常務執行役員。06年築地魚市場常務取締役。09年専務取締役。12年副社長を経て、13年6月より現職。

 

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