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「規模の拡大を目的とせず、お客さまが 求めるモノを愚直に作り続けていきます」--前川 正・前川製作所社長

「冷凍のマエカワ」「技術のマエカワ」として知られる、産業用冷凍機の最大手メーカーである前川製作所。オーダーメードの自然冷媒冷凍装置をはじめ、自動鶏モモ肉脱骨ロボット「トリダス」など、独自性の高い製品を次々と世に送り出している。株式上場やM&Aによる規模拡大を求めず、顧客第一主義を貫いていく方針だ。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

定年なしの企業風土と顧客との〝共創〟を重視する前川製作所

-- 「技術のマエカワ」といわれる産業用冷凍機のトップメーカーですが、その成功の秘訣は何ですか。

前川 当社は1924年に、製氷冷蔵業の会社として設立された町工場です。34年に冷凍機の国産化に成功し、その後は冷却プラントの設計・施工に事業を拡大し、国内においては産業用冷凍機の分野で高い評価を頂いております。また冷凍運搬船用冷凍機では世界で8割のシェアを持つに至っています。顧客層も主力の食品関連分野だけではなくエネルギー関連、自動車関連、レジャー施設などに広がっています。

 当社には「共創」という考えがあります。お客さまのニーズを把握し、当社の技術とすりあわせて一つひとつ、お客さまが求める製品を創り上げていきます。ですからほとんどがオーダーメードの製品です。

-- 定年制度がないのも独特の風土ですね。

前川 そうですね、実際には60歳で定年となるのですが、本人の意志と周囲の同意があれば60歳を超えてそのまま働き続けることができ、8割以上の人が働き続けています。数年前までは、90歳代の社員がいたほどです。当社では、20歳代から40歳代を「動の世代」、50歳代以上を「静の世代」と位置付けています。動の世代は、それぞれが持つ技術や感覚を極めながら、社内で議論し、それをもとにお客さまにぴったり合うモノを提案する。

 一方、静の世代は、培った経験や専門的な見識を生かして動の世代をサポートするだけではなく、トップ営業や新たなマーケットの開発に取り組んでいます。トップ営業ではその幅広い知見が生かされ、新規開拓でも、その柔軟な発想が大きなアドバンテージになっております。

 例えば、静の世代から生み出された製品に、骨つき鶏モモ肉から骨だけを除く脱骨ロボット「トリダス」という商品があります。食肉加工業者のお客さまから悩み事を聞いたことがきっかけで開発されました。製品化まで時間がかかりましたが、お客さまからの評判も良く、競合製品が全くない独占状態です。

前川製作所は「真面目に働く、大きな〝町工場〟」

-- 本業の冷凍機では、フロンを使わない自然冷媒の製品が主流ですね。

前川 もともと冷凍装置はアンモニアを冷媒にしたものが主流だったのです。ところが、物性の安定したフロンの登場でほとんどがフロン使用のものになっていました。地球環境対策でオゾン層保護の観点から混合冷媒が開発されましたが、混合冷媒も温室効果ガスの1種なのです。そこで、自然冷媒でやれないかと技術開発を繰り返し、従来のアンモニアを冷媒にしつつ、安全で冷凍効率の高い冷凍装置を開発しました。それが「NewTonシリーズ」です。

 静の世代の人たちは、ずっと「アンモニア冷媒でやれないか」と考えていたそうです。現在はまだまだフロンを使った冷凍装置が多いのですが、2020年までにはフロンを使わないシステムに変えなければいけません。その点で当社には大きな追い風になると思っています。

-- 食品業界以外でも冷凍技術の用途は広いですね。

前川 エネルギーやケミカル関連でも冷凍技術は活かされています。エネルギー分野では超電導関連、ヒートポンプなどで冷凍機が使われ、ケミカル分野では石油化学やガスの関連で活用されています。

 冷やす技術は本当にさまざまな業界で活用されています。また冷凍関連技術である圧送技術も多くの分野で重宝されています。珍しいところでは鉱山の環境維持のための冷却装置、トンネル工事でも土壌を凍らせてから掘るなど、冷凍技術の用途は幅広いのです。

-- 海外への展開は。

前川 国外ではブラジル、メキシコ、韓国、ベルギー、米国(2カ所)に工場があります。ただ、冷凍機のコアな部分の製造は日本とメキシコだけです。技術的にも品質管理の点でも、他の国では現状では難しい。世界的にも一定のシェアは得ているのですが、最大市場の米国では残念ながら大きなシェアは取れておらず、米国市場の開拓が今後の大きな課題です。

-- 今後の目標は。

前川 60歳以上の雇用継続など、企業文化が特殊なので、M&Aを駆使した規模拡大は考えていません。また現状では資金調達の必要もないので株式上場も考えていません。実は、会社を積極的に大きくしようとは思っていないのです。売上高は現在1200億円ほどですが、将来的には2千億円程度にはしたいと思っています。ただし、やみくもに拡大を目指すつもりはありません。製造業の原点に立って、お客さまが求めるモノを作り続けていけば、自然と規模は拡大すると信じています。堅実に、真面目に働く、大きな〝町工場〟でありたいと思います。

 職人気質かもしれませんが、動の世代と静の世代が共存し、モノづくりをどんどんブラッシュアップしながら、事業や技術力を継承していくことが重要です。先ほど、米国市場攻略の話をしましたが、他にも中東、アフリカなど手付かずの市場があり、ここを強化していけば、自然と成長できると思います。

 

前川製作所社長 前川 正

【まえかわ・ただし】

1967年生まれ。90年早稲田大学理工学部電気工学科卒業。95年前川製作所入社。2002年取締役、05年常務取締役。06年専務取締役を経て、13年3月から現職。

 

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