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「知力、体力、道徳、品位を学び、真の意味で 国際舞台で活躍できる人材育成を目指します」--波多野敬雄・学習院院長・理事長

大学の挑戦

日本でも有数の歴史と格式を誇る学習院大学。教授陣のレベルの高さには定評があり、卒業生もよく学業に励み、「就職力」も群を抜いている。学習院院長の波多野敬雄氏は、外務官僚として豊富な経験を持っているが、今、日本人に最も求められているのは国際化時代に適応できる人材の育成と唱えている。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

波多野敬雄氏は語る 知力、体力に加えて道徳と品位を重視する伝統

-- 学習院大学とはどんな学校ですか。

学習院大学 院長・理事長
波多野敬雄(はたの・よしお)
1932年生まれ。50年学習院高等科卒業(幼稚園から高等科まで在籍)。53年東京大学法学部中退、外務省入省。56年プリンストン大学卒業。在米国特命全権公使、82年中近東アフリカ局長。87年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部特命全権大使。90年国際連合日本政府代表部特命全権大使。94年に退官し、財団法人フォーリン・プレスセンター理事長。2003年学習院女子大学学長。06年学校法人学習院院長・理事長。

波多野 1847年に京都に設立された公家の教育機関が源流となります。京都の学習院は明治維新ののち廃止されますが、77年に華族学校が東京神田に開業し、学習院の校名を受け継ぎました。85年には華族女学校が開設され、学習院女学部・女子学習院と改称されていきました。男女が学ぶ学習院は宮内省立の官立学校でしたが、戦後の1947年に私立学校として生まれ変わります。49年には学習院大学が開学しました。校風としては知力、体力、道徳、気品の4つを大事にしており、特に道徳と気品は本学の特長です。

-- 道徳と気品を重視するのは伝統ですか。

波多野 そうです。大学教育は知力重視ですが、高等科までは道徳、気品を重視しています。それが学習院らしさをつくるのです。それに加えて、今大学では、これからの社会情勢をにらんで、国際競争力を身に付けさせる教育を重視しています。私はその基本は英語力だと考えています。特にビジネスの現場で通用する、議論に勝てるようなレベルの英語力を身に付けるには、留学するのが一番です。それも、できれば高校生の頃までに留学を経験していることが望ましい。たった1年の留学ではそのレベルの英語力は身に付きませんが、「自分は英語で議論できるレベルにない」ことを自覚でき、その後の学業に大きく影響するのです。

 なぜ高校生までにかというと、大学で1年間留学すると、留年してしまうケースが多いのです。学習院の教授陣は優秀で厳しいので簡単に単位をくれません。留学先での単位を認めるような工夫をしないと、なかなか大学時代に留学して4年で卒業することは難しい。これは今後取り組まなければならない課題だと考えています。

-- 幼稚園から大学までの一貫教育にも熱心ですね。

波多野 本学の特長の1つに、おおらかさがあります。礼儀正しく正直で、人に優しく、さらには受験勉強に煩わされることなく部活動などを通じてフェアプレーの精神を学び、長幼の序を身に付け、人に好かれる人格形成を大事にしています。つまり学習院らしさを醸成することこそが学習院における一貫教育の目標とも言えます。

 現在は、幼稚園から初等科への進学率はほぼ100%、初等科から男子中等科は90%、女子中等科へは100%の進学率です。中等科から高等科はほぼ100%で、男子高等科から大学へは約60%、女子高等科からは70%程度が進学。部活動を含めて人格形成のため首尾一貫した教育方針で臨んでいます。

波多野敬雄氏の思い 新学部開設でグローバル化に適応した人材育成を

-- 就職支援についてはどのように取り組んでいますか。

波多野 20年以上も前から取り組んでいる「メンタイ」(面接対策セミナーの略)というセミナーがあります。これは希望者が全員受講でき、参加者は毎年1300人以上にのぼります。セミナーではOB、OG約250人が講師となり、就職が決まった4年生約150人がサポーターとして学生を支援します。丸2日間、朝から夜までみっちりと模擬面接やグループディスカッションの実習を行います。就職活動を終えたばかりの先輩、既に働いているOB、OGからのアドバイス、さらにはそのネットワークを広げることができるセミナーになっています。

 また、キャリアセンターも一人ひとりの学生と向きあい、その学生の資質や志望に合わせた指導を行っています。一概に大手企業を勧めるのではなく、その学生に合った就職先を一緒に探します。最終的に今春の卒業生の内定率は95%になりました。

-- 新たな学部も計画されていますね。

波多野 今年、文学部に教育学科を新設しました。次代を担う小学生を教える教員育成が主な目的です。世界に目を向けて、多様性を理解できる教員を育てていきたいですね。また、現在、国際社会学部を新設する準備を進めています。語学はもちろん国際人として世界で通用し、評価される人材を育てるためのこの新設学部と既存の4学部で、グローバル化の流れに対応できる大学、人材の育成に取り組んでいきます。

-- 国際性に溢れた人材育成については、元外交官としての体験も関係あるのですか。

波多野 外務省を退官する前に、国連安全保障理事会の議長を務めたのですが、その会議に参加する各国のメンバーは、英語が上手なのは当たり前で、いかに議論に勝つか、ディベート力、コミュニケーション能力に長けた人材が集まっています。人間的にも多趣味で、話題に事欠かない好人物が多い。そのときに、本当にできる人材とは何かを思い知りました。いかに日本の官僚が優秀で、英語が堪能でも、なかなか世界に通用しません。これからは、そういった場でも堂々と渡り合える人材を輩出できるような大学にしたいと思っています。