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「エネルギー関連技術を元に海洋分野や水素事業など新たな領域にも進出」--澁谷省吾・千代田化工建設社長に事業戦略を聞く

石油、天然ガスプラントを手掛ける専業エンジニアリング会社として、世界でトップクラスの実力を持つ千代田化工建設。これまでは陸上の施設が中心だったが、今後は海洋施設や新エネルギー分野へも積極的に進出する。7月には英国の海洋資源コンサルタント会社を買収した。新エネルギー分野では、独自の技術を持つ水素プラント事業に大きな期待が集まっている。  (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

 

千代田化工建設の事業戦略①シェールガス革命で 変容する市場に対応

 

―― 米国のシェールガス革命などもあり、天然ガスプラント事業は活況ですね。

澁谷 現在、天然ガスプラントは、北米にマーケットの軸が移っています。これからLNG(液化天然ガス)プラントをどれだけ受注できるかがポイントです。

 当社は、米国でのプラント建設実績が豊富なCBI社と提携し大きなシナジーを見込んでいます。北米マーケットとともに豪州、ロシアにも注視しなければなりません。さらに、モザンビークで新たなガス田が発見されたことも市場に影響してきます。新しいガス田にはインドや中国系企業がオペレータとして参入するなど、米国系メジャーとは違う企業の参入も増えています。LNGのマーケット自体が大きく変容している中で、さらに知恵を絞る必要があります。

―― LNGプラントでは大きな実績がありますね。

澁谷 LNGプラントは革新の歴史なのです。プラントのキャパシティーを大きくするために、これまでさまざまな技術革新が行われてきました。

 1970年頃では年産100万㌧クラスのプラントしかできなかったのに、現在では800万㌧クラスの施設もできます。加えて効率化も進みました。現在、カタールに800万㌧クラスのプラントが6基あるのですが、このクラスのプラントを一括で設計、建設した企業は当社しかありません。

 陸上の大型プラント建設においては、当社が世界でも頭1つ抜けた存在だと自負しております。LNGプラントは現在、世界的に標準化の流れがあります。500万㌧クラスのプラントを標準化してコストダウンを図ろうという傾向があるのです。

 当社はLNGプラントについての技術・建設ノウハウをデータベース化して蓄積、これは大きなアドバンテージであり、他社が参入しようとしてもなかなか追い付けない部分なのです。

―― 今後は陸上施設以外にも積極的に動くそうですね。

澁谷 洋上のLNGプラント建設を含めた海上資源開発です。当社は陸上プラントに関しては、ノウハウの蓄積がありますが、洋上プラント、フローティングLNGでは実績が少ない。これも、できるだけ早期に実績をつくり、新たなノウハウを蓄積していきたいと考えています。

 また、海上・海中・海底のオフショア設備への対応を進めるべく、英国の海洋資源コンサルタント会社の「エクソダス」社を買収しました。

 

千代田化工建設の事業戦略②水素事業や社会インフラ事業など新規分野を攻める

 

―― 次世代エネルギーの中心になるといわれる水素関連事業の将来性は。

澁谷 水素はこれまで運搬する際に冷却して液体水素として運搬しなければならず、専用の運搬船が必要でした。ところが、当社が開発した脱水素触媒を使うと、常温、常圧で効率的に運搬し、需要地で水素を取り出すサプライチェーンが確立できます。専用船も必要ない。この技術で水素の運搬コストを大幅に下げることができます。大量輸送、大量貯蔵が容易になったことで、新しいエネルギーの流通を生みだす可能性があります。

―― 新体制になって、守りから攻めに転じると。

澁谷 当社は2000年以降、LNGに注力して経営再建にまい進してきました。今年度からは、新中期経営計画「時代を捉え、時代を拓く」を策定し、10年後のあるべき姿をとらえ、成長戦略と基盤整備を推進して参ります。

 当社はエンジニアリング会社ですから、LNGなどのプラント建設だけではなく、事業を多様化し、社会に貢献していかなければなりません。社会インフラの事業は、そもそもエンジニアリング会社との親和性が高いのです。当社単独ではなく、ゼネコンさんや電機メーカーさんなどとも手を携えていかなければなりません。

 日本からインフラをパッケージ化して輸出するという動きもありますが、これも単独ではなかなか実現できません。複数の日本企業がスクラムを組んでやっていくときに、当社はその軸となれるように貢献していきたいと考えています。

―― 中期経営計画(13年度~16年度)では800億円の事業投資と人員も7千人から1万人規模に増員するという高い数値目標を掲げておられますね。

澁谷 海外の各地にリージョナルヘッドクォーターを設置して、各地のお客さまの要望を聞きながら事業を展開しなければならず、そのために人員の増強は不可欠です。また、インフラ系の事業としては、空港などの交通システムや発電設備、水処理設備など、当社のノウハウを生かせる分野があります。事業としてもバラエティーに富んだものになり、当社の培った技術を展開していく方針です。

 これら成長戦略と基盤整備のそれぞれの施策の実施により、収益源の多角化を実現し、安定的収益として純利益を300億円に伸ばすことを目指します。昨年度の売上高は4千億円程度でしたが、計画どおりに事業をコンスタントに実行することで、7千億円まで伸ばすことが目標です。

 

千代田化工建設社長 澁谷省吾
【しぶや・しょうご】
1951年生まれ。73年大阪大学工学部卒業、76年大阪大学大学院修士課程修了。同年千代田化工建設に入社。2005年エンジニアリング本部長、11年取締役兼常務執行役員を経て、13年4月より現職。

 

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