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「目先のシェア争いに惑わされず、 自社ブランドを磨き上げることが重要です」--尾賀真城・サッポロビール社長

「ヱビス」「黒ラベル」の2大強力ブランドを持ち、新ジャンルでもプリン体ゼロを実現した「極ZERO」を開発するなど、次々と画期的な商品を生み出しているサッポロビール。ビール類のシェアでは4位に甘んじているが、根強いファン層に支えられている。社長に就任した尾賀真城氏は営業畑出身で、業界最年少の54歳。今後の成長戦略を聞いた。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

スピーディーに行動を変えれば成果は出る

-- 国内のビール市場は漸減傾向ですが、今年4月以降は、上向いているそうですね。

尾賀 当社で言えば特に業務用の樽生の需要が伸びています。今までは景気の影響もあって、やや外食を控えていた分が、回復したのではないでしょうか。ただ、ビール類全体では、瓶・缶まで含めると回復まではもう一歩。その中にあって、ヱビスは6月までで102%と復調しています。

 ビールよりも高額な高級酒は今、好調だと聞いていますが、毎日飲むようなビールへの波及効果はまだまだですね。

-- 社長に就任して、どのような目標をお持ちですか。

尾賀 数値的な目標も大事なのですが、机上の数字をうんぬん言っても仕方がない。他社との競争を経営課題にする気持ちもありません。業界のシェアは結果に過ぎません。数字やシェアの前に、お客さまのことを一番に考えたいと思っています。シェアを上げるということは、数字の話ではなく、お客さまをどれだけ増やすか、ということなのです。ですから、お客さまに嫌われる要因を排除する、好んでいただける商品を提供する、現在のブランドを磨き上げる、このことを徹底すれば、結果、おのずとシェア拡大につながると考えています。

-- 顧客を一番に考えるとは、どういうことですか。

尾賀 私は営業畑の出身ですが、営業時代に一番大事にしたのは、スピードです。求められていることにいかに早く反応するか、それがお客さまの満足につながりました。これからさまざまな問題を解決しなければならない時、商品や会社そのものはなかなか変えられません。でも行動は、すぐに変えることができます。すぐにやる、そういったことでナンバーワンになることはできるのです。その行動の積みかさねが、最終的にいい結果につながるのです。

-- 商品戦略は、どのようにお考えですか。

尾賀 お客さまとの最大の接点は商品です。今、当社の商品がお客さまにどのように見えているのかを突き詰め、磨いていく。お客さまに感動していただく商品を提供することは重要ですが、この商品の力と営業部隊の行動の掛け算が、大きな成果を生むと思っています。

-- 日本のプレミアムビールを代表する「ヱビス」やロングセラーの「黒ラベル」など、強力なブランドがありますね。

尾賀 ヱビスのブランド価値は下がっていないのですが、他社のブランドも頑張っており、相対的に目立たなくなっている点は否めません。しかし、ヱビスは当社の主張そのものであり、そのブランドの良さをもっと主張していかなければなりません。黒ラベルは歴史もあり、これまでさまざまな施策を行ってきました。ただ、ここであらためて黒ラベルの主張は何なのかということを再確認することも必要です。長年ご愛顧いただいているブランドも時代や市場の変化に応じて、磨き上げなければなりません。今、自社のブランドがお客さまにどう見えているかを確認することは今後、戦略を立てるときに重要な要素です。

プリン体ゼロ、糖質ゼロの世界初に挑戦

-- 「ヱビス」にもさまざまな種類があるそうですね。

尾賀 金のヱビス、赤のヱビス、黒のヱビスの3本柱で展開しています。さらに昨年、数量は少なかったのですが、1年熟成のヱビスをリリースしました。通常、ビールは1年も熟成させると味が濁ってしまうのですが、そこを改善して、熟成させてコクが出るけれど味は悪くならないビールを出したのです。それ以外にも高級客船の「飛鳥」でしか飲めない特製ビール、ロブションと共同開発した限定ビールなどもあります。

-- 近年の若者のビール離れについて、どう考えますか。

尾賀 ビールをおいしく飲む方法もアピールしなければいけません。もちろん、おいしいビールとは何かという点には、こだわっていきます。

 例えば業務用専用の「エーデルピルス」というファインアロマホップを通常の3倍使用したビール、酵母が生きていて、濁りがある「白穂乃香(しろほのか)」というビールもあります。ビールの楽しみ方はいろいろある、また、ビールそのものもいろいろある。ビールとは何かを追求していきたいですね。

-- 新ジャンルの「極ZERO」が好調のようですね。

尾賀 プリン体ゼロをうたった商品です。プリン体は痛風の原因の1つとされますが、ビールばかりが悪者になっている傾向があります。ならば、プリン体が少ないのではなく、ゼロだと言い切れる商品を作ろうと考えたのです。加えて糖質もゼロです。こういった機能系の商品に対する需要は大きい。見たことも聞いたこともない、世界初という特徴的な商品は今後も出し続けていきたいですね。

-- 昨年、大手流通グループと共同開発したPBビールは自社製品を浸食しませんか。

尾賀 PBとはいえ、従来から小売りさんとはコラボレーションしてきましたので、基本的な姿勢は変わりません。共同開発したPBも売れるでしょうが、当社のメーンが自社ブランドであることは変わりません。ブランド力を磨く努力を続けていい結果を出したいと思います。

 

サッポロビール社長 尾賀真城

【おが・まさき】

1958年生まれ。82年慶応義塾大学法学部卒業後、同年サッポロビール(現サッポロホールディングス)入社。2006年サッポロビール首都圏本部東京統括支社長。09年執行役員北海道本部長。10年取締役兼常務執行役員営業本部長。13年3月に社長、純粋持ち株会社のサッポロホールディングス取締役兼グループ執行役員に就任。

 

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