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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「経営面と教育面の改革で教育リーディング・ユニバーシティを目指します」--渡辺 孝・文教大学学園理事長

大学の挑戦

1927(昭和2)年に設立された幼稚園および女子学校をルーツとして誕生した文教大学学園。その後、教育学部を看板に成長し、今日では6学部を擁する総合大学に発展した。時代の変化とともに大学も多くの経営課題に直面しているが、日銀出身の渡辺理事長はどのような戦略で臨むのか。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

「教育の文教」を支えるきめ細かい指導

-- まず、貴校の沿革をお聞かせください。

文教大学学園 理事長
渡辺 孝(わたなべ・たかし)
1950年生まれ。74年東京大学教養学部卒業、同年日本銀行入行。通産省(現経産省)出向、同行パリ事務所勤務を経て97年考査役。98年山口大学経済学部教授、2001年文教大学国際学部教授。05年文教大学学園理事。08年副理事長を経て、09年から現職。

渡辺 1927年、日蓮宗の僧侶であった馬田行啓氏と小野光洋氏が開学したもので当初は幼稚園と女子裁縫学校でした。最初は園児と女子学生を合わせても100人いるかどうかという規模だったと聞いています。その後順調に学生数を増やして、戦前には女子学生だけで2千~3千人にまで増えていましたが、戦災で校舎がすべて焼失。戦後、立正女子短期大学として再出発し、1969年に現在の教育学部の基礎となる教育学部初等教育課程・中等教育課程設置、76年に文教大学と改称、翌77年には男女共学となりました。

 その後は教育学部を看板学部として「教育の文教」とも呼ばれるようになりました。創立当初は品川区旗の台の校舎だけだったのですが、その後、越谷、湘南と規模の拡大にともなってキャンパスを増やしています。

 2010年には健康栄養学部を増設し、現在では6学部体制で、学園全体の児童・生徒・学生などの合計は1万人強になりました。ある意味、戦後の18歳人口の増加、大学進学率の向上を背景に成長してきたとも言えるかもしれません。

-- 現在は逆に18歳人口の減少が問題になっています。

渡辺 今後大学進学者の数が減ってくるという現状を見すえて、今のうちにきちんと改革に取り組んでおかないと大変なことになります。そのためには、経営面と教育面、双方での改革が必要です。

 昨年、改革の第1期である第1次中期経営計画が終了しました。そこでは、建学の精神である人間愛を軸に「教育リーディング・ユニバーシティ文教~教育力トップを目指す」という、今後目指す姿を明確に設定しています。そのうえで、経営面でなすべきこと、教育面でなすべきことを整理し、取り組んできました。これをもって、改革の半分以上は目鼻が付きました。現在は、第2次中期経営計画でその改革を完成させるべく、議論を行っています。

-- 来年、経営学部を設置するそうですね。

渡辺 経営学部や経済学部は就職の面で人気がなく、難しいという意見もあります。しかし非正規雇用が増加したり、就労条件が悪化するなど、今、企業においては、人を大切にし、従業員を幸せにしながら社会に貢献するという企業本来の役割が果たされていません。そういった面から、経営学は今、非常に軽視されていると感じています。本学の理念は「人間愛」にあります。その理念を軸に、新しい切り口で経営学に取り組んでいこうと思っています。

経営面、教育面の双方で改革を目指す文教大学学園

-- 他の学部での改革はどうですか。

渡辺 例えば情報学部は30年前に設立したのですが、当時は情報に特化した学部はほかになく、非常に人気がありました。ところが今日では、他大学でも情報関連の学部が相次いで誕生し、あまり差別化されていない学部になってしまいました。そこでコミュニケーションを重視し、人間愛を切り口とした新しい情報学部としてカリキュラムの大改革を行っています。

 また3年前に設立した健康栄養学部は、女子短期大学を改組したものです。短期大学は50年の歴史があったのですが、時代の変化もあり、女子大の存在意義、社会的な要請も変わってきました。そこで思い切って改組したのですが、今では人気の高い学部になっています。

-- 教育上の特長や工夫されていることは何ですか。

渡辺 理念である人間愛から派生しているのですが、少人数の密度の濃い専門教育、教職員による手厚い学生支援、活発な課外活動、学部ごとに工夫を凝らした国内・国外で実施する体験研修などが特長です。教育学部がその典型で、教育に熱心な教員が多数います。新入生も4年後には、教育の現場に立つのですから、それだけの教育が必要だと考えています。

 一方、大学での教育は本来、自主性を重んじるべきで、手取り足取り教育するのは本質からはずれるのではないかという意見もあります。しかし、教育の質を維持するには、このきめ細かさは欠かすことができません。自主性を促すにも、ある程度のケアが必要だと思っています。

 また留学・海外研修の場は、アジア・オセアニア、米国、欧州などに広く開かれています。これからは、学生が自主的に行う国内のボランティア活動やNPO体験活動などの支援にも力を入れていきます。

 日本の教育にはこれまで、いかに欧米の教育水準にキャッチアップするかという課題がありました。しかし、今では、日本が教育のフロントランナーとなっています。自分たちで、これからどういった教育を行うべきかを考え、実践していかなければなりません。

 また質が高い教育を適正な価格で提供するという視点も重要です。そのためには、現在取り組んでいる改革を成功させないといけません。