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近畿大学、ユニークな 研究活動とネット出願で脚光--塩﨑均・近畿大学学長

大学の挑戦

13学部48学科を擁する西日本最大級の総合大学として知られる近畿大学。規模の大きさだけでなく、関西の私大として唯一、医学部を持ち、また水産研究所では世界初のクロマグロ完全養殖に成功するなど、ユニークな研究も多い。入試改革にも積極的で、平成25年度入試の志願者は13万人に上り、初めて日本一になった。大学の現状について塩﨑均学長に話を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

近畿大学、受け継がれる「実学教育」と「人格の陶冶」という理念

-- 西日本最大級のマンモス大学として有名ですね。

近畿大学 学長
塩﨑均(しおざき・ひとし)
1944年生まれ。70年大阪大学医学部卒業。78年大阪大学医学博士。2001年近畿大学教授。04年近畿大学医学部附属病院長。08年医学部長。09年学校法人近畿大学理事。12年近畿大学学長。

塩﨑 学生数は大学だけで3万人、附属高校等を含めると5万2千人を超えています。ただ大きいだけではなく中身もユニークで、関西私大で医学部、農学部、文芸学部を持っているのは本学だけという特徴的な学部構成、研究体制になっています。

 もともと関西では他に有力な私大も多いですが、近年、本学は、その中でも存在感を増してきています。創立時から続く、「実学教育」と「人格の陶冶」という理念も脈々と受け継がれています。

-- マグロの完全養殖の研究が広く知られていますね。

塩﨑 水産研究所でのマグロの完全養殖の研究は、2002年に実を結ぶまで、実に32年かかっています。完全養殖のマグロはいつ孵化し、どんなエサを食べてきたかなどすべて把握できているので、安全なマグロであると言えます。また、マグロの漁獲規制が注目される中、完全養殖はクロマグロの資源保護にも役立っています。

 マグロの完全養殖はビジネスとして成立しており、本学に利益をもたらしています。その利益を原資に新たな研究に取り組むことができます。

-- 建学の精神である実学教育がまさに形になっている例ですが、その他には。

塩﨑 他には、バイオコークスの研究も行っています。間伐材や落葉、さらにはお茶やコーヒーのカスなどを材料にして、コークスを産み出し、エネルギー源とします。これも実用化されているのですが、CO2を排出しない上に、そもそも廃棄物でできているので資源の有効活用になります。既にスウェーデンやタイ、ベトナム、インドネシア、インドなどで導入が予定されています。国内でも大阪府の森林組合と提携して事業を行っています。

西日本最大級の近畿大学、ネット出願の入試改革で志願者数日本一に

-- 少子化が進み、今後は学生数の減少も予想されます。志願者数の現状は。

塩﨑 今年度の志願者は、日本の大学で1番数が多かったのではないでしょうか。推薦入試を含めて延べ13万人の志願者が集まりました。具体的な取り組みとしては、今年度から「近大エコ出願」の受け付けを開始しました。これは、従来の紙の願書ではなく、ネットだけで完結できる仕組みです。来年度からは紙を使った郵送での出願をすべて廃止して、ネット出願だけにします。従来は入試要項・出願用紙の冊子を大量に印刷し、それを積み上げると東京スカイツリー3本分の高さになっていたのですが、これを無くします。この制度が話題になって、出願が増える一因にもなりました。

就職活動へのサポートと東日本大震災の際など社会貢献活動にも積極的な近畿大学

-- 一方の就職面ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

塩﨑 近畿大学では1年生の時から少人数の基礎ゼミを実施して、マンモス大学ながら少人数教育を実現しています。就職のアドバイスも、基本はゼミ単位で担当教員がきめ細かく面倒を見ていくことが理想です。

 ただ、現状では担当教員ごとに個人差が出てしまっている。そこで、キャリアセンターを中心に就職活動全般をフォローするようにしています。また、私自身も多くの企業とお話しをさせていただき、インターンシップの積極的な活用なども行っています。お陰さまで、就職率は90%以上を推移しています。いわゆる有名企業への就職者数も上昇傾向にあります。

-- 今後の新たな取り組みは何かあるのでしょうか。

塩﨑 10年に総合社会学部、11年に建築学部を設置しました。これで全13学部48学科となり、このほかに大学院には11の研究科があり、法科大学院も設置しています。名実共に関西最大級の規模の大学となりました。これまで医学部、農学部、文芸学部が特徴的な存在でしたが、今後は建築学部も存在感あるものになってほしいと思います。実は、建築学部という独立した学部は、日本では初です。単に建築工学をやるのではなく、インテリアデザイン、不動産の分野まで含めて、建物を総合的にプロデュースしていくことを視野に入れています。

-- 社会貢献などユニークな取り組みも多いそうですね。

塩﨑 今後は、規模のメリットを生かした全学を横断したプロジェクトにも取り組んでいきたいですね。社会貢献では、東日本大震災の際には、福島県川俣町の復興支援アドバイザーを受託。実際に教員が現地に赴き、それぞれの専門分野を生かして復興支援にとり組んでいます。また、キャンパスが日本中にあり、広島にある工学部を中心にマツダとも提携しています。

 グランフロント大阪に出店した養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所」も話題です。研究成果の発表の場として、また文芸学部の学生が食器を制作するなど実学教育の場としても大いに活用しています。これらをもっと発展させて、実学教育の理念をさらに充実させていきたいと考えています。