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「独自の印刷技術と徹底した品質へのこだわりを軸に、新たな分野へも挑戦し続けます」--二瓶春樹・光村印刷社長

長い歴史と伝統を持つ光村印刷。本業の印刷技術にこだわる姿勢は今も変わってはいない。美術印刷で、他の追随を許さない技術力は今も健在だ。デジタル化の進展で経営環境は必ずしも楽観できないが、その中で昨年社長に就任した二瓶氏に同社の現状と今後の成長戦略を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

〝美術印刷なら光村〟と言われる印刷技術力

-- 御社は創業から100年を超えるそうですね。

二瓶 1901(明治34)年に神戸で、関西写真製版印刷合資会社として産声を上げました。写真製版技術や美術印刷が得意分野です。創業当時には、世界最大、最多色の木版画「孔雀明王像」を米・セントルイスで開催された万国博覧会に出品、名誉金牌を受賞。昭和になって光村原色版印刷所と改称、〝美術印刷なら光村〟と言われていました。

 そういった歴史もあり、今でも色彩へのこだわりは当社の特徴です。特に美術印刷の分野、画集や図録、美術館のカタログの印刷では競合他社には負けない品質と自負しています。時には、美術館の方が「こういったふうに印刷してほしい」と言うのに対して、当社のスタッフが「いや、これはこうすべきだ」と反論することもあるほど、こだわりが強い会社なのです。

-- その他に、得意とする分野はありますか。

二瓶 例えば新聞印刷があります。当社のカラー印刷技術に注目したある新聞社さんから、日曜版の印刷を打診されたのが始まりです。昭和40年代中頃のことですが、印刷会社が日刊紙を印刷するのはそれが初めてだったそうです。現在では国内でも数少ない左右最大160㌢まで印刷可能な大型パノラマ広告の印刷も承っています。

-- 印刷以外の分野で注力している事業は。

二瓶 印刷以外で今、力を入れているのは意匠一体型の静電容量方式によるスマートフォン向けタッチパネルセンサー、車載向けタッチパネルセンサーなどの小型デバイス向け部品の製造です。優秀な技術陣が揃っていますので、今後の伸びに期待しています。現在、モバイル機器メーカーの集約が進んでおり、今後、国内メーカーの復権が期待されていますので、当社もその分野にはさらに力を入れていきます。

 他にもウェブを活用したオンデマンド印刷にも力を入れていきます。しかし、多角化をするにしても、今まで培ってきた印刷技術を生かす形が基本になります。

-- 印刷分野はデジタル化の進展で需要が減るのでは。

二瓶 印刷業界全体として、厳しい状況にあることは事実です。商業印刷の分野はもとより、出版の分野も難しい。しかし、その一方で、高級印刷物の需要は少なからずあります。現在、景気回復の流れもあり、高級品の売り上げが回復しています。そうなると、高級カタログの需要拡大が期待できます。

 デジタル化が進んで、印刷技術の差別化が難しくなっている側面もあります。かつては職人の手で印刷の元となる版を作り、その出来が印刷物の仕上がりに大きく影響したのですが、いまはデジタル処理で版を作っています。ただし同じ機械を使っていても、当社の印刷は一味も二味も違うのだという自負はあります。世代が変わっても、このこだわりは、ずっと受け継いでいきます。

デジタル媒体と印刷技術の共存は可能

-- 受注拡大に向けた工夫はありますか。

二瓶 当社の売り上げの多くは、宣伝印刷物、商業印刷の分野になります。ですから、お客さまのニーズをよく聞き、それを生かすのはもちろんですが、企画段階から参画し、そして制作から印刷まで、すべてをコントロールする仕組みが重要です。

 企画を考え、それを印刷物に反映する過程の中で、問われるのは営業担当の力量です。お客さまのニーズをただ聞いてくるのではなく、ニーズを先取りしてこちらから逆に積極的に提案していくようにしたいですね。

 媒体も、従来からの印刷物だけにこだわらず、オンデマンド印刷、ウェブなども柔軟に活用することが必要です。例えば、多品種を扱うような企業であれば、全商品の総合カタログをデータベース化しておき、クライアントの意向やニーズに応じて必要な部分を抜き出して印刷するような商品もあります。そのデータベースがあれば、簡単にチラシやカタログをカスタマイズして作ることができます。

-- デジタル化が進展すれば、現在の印刷技術は衰退していくのでしょうか。

二瓶 世の中のニーズはデジタル媒体に移行していますが、共存は可能です。ネットで宣伝していても、より詳しく知りたい、手元に資料が欲しいというニーズは絶対に消えません。

 商業印刷分野の需要は確かに減少していますが、当社が得意とする高級印刷、美術印刷の分野は、品質要求が非常に高く、高級感のあるカタログを求めるニーズは大きく減少してはおりません。そのためには高い技術レベルを維持することが大事です。

-- 独自の印刷技術にこだわって、事業の幅をさらに広げていくということですね。

二瓶 古くは複写技術を開発した経緯があって、宅配便の伝票も大きな売り上げになっています。この分野では、冷蔵・冷凍物の宅配でおなじみの耐水タイプの伝票は、お客さまとの共同研究を通して開発された成果の一つです。また、偽造防止技術でも、自治体の印鑑登録用紙や住民票、学校の成績証明書などで当社の技術が広く利用されております。いまある伝統の印刷技術をベースに、これからもどんどん新しい技術にチャレンジしていきたいと思っています。

 

光村印刷社長 二瓶春樹

【にへい・はるき】

1967年早稲田大学第一法学部卒業。同年光村印刷入社。2000年取締役、04年常務、11年取締役専務執行役員。12年7月から現職。

 

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