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経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「ソリューションの強化と提案型ビジネスで着物の潜在需要を掘り起こします」--平松達夫・さが美社長

着物専門店チェーン「さが美」、着物リサイクルの「蔵三昧」、和雑貨の「我楽屋おかめ」など、全7ブランド、224店舗を全国に展開する、さが美。着物需要が好事家に限定され、市場の縮小傾向が続く中、新たなチャレンジに取り組む平松達夫氏に今後の戦略を聞いた。(聞き手/本誌編集委員・清水克久)

着物を着ない〝5つの問題〟を解決へ

-- 着物市場が縮小傾向にあり、御社もこの数年厳しい経営が続いています。

平松 私自身は5年前に常務として当社にやって参りましたが、以来、社内改革に取り組んできました。現在は、営業収益を回復させることが急務だと考えています。

 ただし、赤字店舗の撤退といったリストラは考えていません。確かに赤字店舗を削減していけば、表面上は収益性が改善したように見えます。でも着物市場そのものが縮小傾向にある中でそれをすれば、じり貧になることは目に見えています。

-- では、具体的にどのような施策を考えておられるのでしょうか。

平松 現在、着物市場が縮小している最大の原因は、着物を着る機会が極めて少なくなっていることにあります。

 ある調査では成人女性の1割が着物を所有し、着る機会を持っています。残りの9割のうちおよそ半分が「機会があれば着たい」という潜在的な需要を持っている。特に40代、50代の女性になると、着物への憧れが強くなるようです。日本人女性で着物に全く興味がないという人はむしろ少数派なのです。ところが、その潜在的なニーズが顕在化しない。この点を無視していては、成長戦略は見えてきません。着物を着る機会を創造することが大事です。

-- 潜在的なニーズを顕在化させるには、どのような方法があるのでしょうか。

平松 着物を着ない理由は、調査によると5つあります。まず自分で着ることができない、着付けの問題。次に手入れ、保存が大変だという問題。3つ目がTPO、コーディネートの問題。4つ目が価格、最後に着物店舗の敷居が高いという問題があります。

 これらの問題に対して、2つのアプローチで対応していきたいと考えています。まず着付け、手入れのサービス、コーディネートの提案、接客レベルの向上などのソリューション型のビジネスの推進。もうひとつは、着る機会そのものを提供する提案型のビジネスです。

-- ソリューションとして、具体的にはどのように取り組んでおられるのでしょうか。

平松 店頭での接客レベルの向上と、着付け・お手入れアドバイザーの育成、着物に対する広く専門的な知識を持つ店舗スタッフの教育に力を入れています。また、自分で着付けができるように、さらには着物を着る機会の提供という意味では当社が運営している「さが美きもの文化学苑」を活用しています。そこでは「和を遊び、和から学ぶ」をテーマに「かるいこころ倶楽部」という活動を行っています。また、西日本の店舗を中心にお客さま向けの「お出かけ会」を開催しているのですが、これも今後は、全国に展開していきたいと思っています。

「大京都展」を復活し、社内にも刺激を

-- 着物の需要が縮小傾向にある中で、販売店の総数も減っているのでしょうか。

平松 最も厳しいのは、全国にある地方の着物販売店でしょうね。数店舗で展開されているような中堅どころの会社は、特に後継者問題などもあり、事業の縮小や廃業に至るケースもあります。中にはネット販売を展開している会社もありますが、着物は買えばそれで済む商材ではありません。当社はあくまでも、1人のお客さまに1人の担当者を付ける仕組みをとっており、その姿勢は貫いていきます。そうでなければ、提案型のビジネスは展開できません。

 また最近、「ママ振り」という言葉が流行っております。これは成人式の日に着る振り袖を買うのではなく、またレンタルするのでもなく、母親が着た振袖をリメイクして着るというものです。この「ママ振り」マーケットに、今後、当社は力を入れていきます。リメイクのノウハウを含めて、当社で関連するサービスを強化していきます。

-- 社長に就任されて半年にも満たないですが、独自のアイデアなどはありますか。

平松 京都の一寧坂で、町屋風建物を借りて展示販売会を開催しました。通常、着物の展示販売会というと大きな会場で行うのですが、あえて狭い町屋を使い、作家の個展形式で行いました。これは非常に好評で、これまでにない新たな販売機会の創出になったと思います。

 また今年10月には「大京都展」という展示販売会を開催します。大京都展は、かつては毎年行っていたのですが、6年前から休止していました。それを復活させ、全国のお客さまを招待して、大々的に開催します。これはお客さまにも社内にも、大きな刺激になると思います。

-- 厳しい中での船出ですが、手ごたえは。

平松 顧客のクラスター分類とそのセグメントに応じたサービスを提供し、特典を付けながら販売機会の拡大に取り組んでいきます。「さが美カード」も今まで以上に積極的に勧誘し、そこから得られるデータを元に、ダイレクトメールなど、顧客とのコミュニケーションを深めていきたいと思います。

 

さが美社長 平松達夫

【ひらまつ・たつお】

1974年早稲田大学第二文学部卒業。同年ユニー入社。2008年1月さが美顧問を経て同年5月常務取締役。11年同営業本部長。13年2月から現職。

 

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