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友野紀夫・AIG富士生命社長 〜社名を「AIG富士生命」に変更し生保業界を生き抜く今後の戦略に迫る〜

ネット生保の成長や保険ショップの登場などで、大きく経営環境が変化した生保業界。富士火災の子会社として、損保代理店網を通じて堅実経営をしてきた同社だが、一昨年、親会社がAIGの100%子会社になったことを受けて、2013年4月から社名を「AIG富士生命」に変更した。群雄割拠の中で次なる成長戦略は。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

友野紀夫・AIG富士生命社長ーー世界的な保険ブランドの「AIG」復活に寄与する

-- このたび、社名変更をした理由は。

友野 当社は1996年に富士火災の100%子会社として誕生しました。富士火災は、当時の損保業界大再編の中で、その波とは無縁でしたが、後に世界的な保険ブランドであるAIGの傘下に入りました。しかし、リーマンショックでAIGが受けた打撃は大きく、米国政府から巨額の公的資金を注入された一方で、大胆な事業再編を断行。その一環として、世界中で展開していたほとんどの生保会社を手放しました。損保事業に集中しようとしたAIGですが、当社は損保会社である富士火災の子会社であったため売却の対象になりませんでした。その後、紆余曲折はありましたが、AIGも公的資金を完済して復活したので、あらためて世界的なブランド力があり、知名度も高いAIGと日本を象徴する富士の双方を生かした名前に変えたのです。

-- AIGグループは、日本での生保事業をどのようにとらえているのでしょうか。

友野 一般的に日本の損保事業は、近年主力の自動車保険分野の成長が鈍化。また、先の東日本大震災をはじめとした自然災害の多数発生により、経営にインパクトを及ぼす不確定要素が多様化しています。そこで比較的不確定要素が少ない生保事業にビジネスを分散させることで安定的な拡大を目指しています。

-- 生保もネット生保の台頭など変化が激しいですね。

友野 そうですね、ただ当社は現在独自の直販社員による対面販売を一切行わず、代理店販売を主体としています。これは富士火災の子会社として発足した経緯もあり、最初から富士火災の損保代理店網および直販社員のチャネルを最大限に活用する狙いがありました。しかし、それだけでは成長に限界があるので、今は自前の生保主体のプロ代理店網の開拓に注力しています。販売面の変化では最も大きいのは保険ショップの増加です。かつて生命保険は、対面販売で販売員が勧める保険に入るという形が多かった。しかし、今ではネットを使って自分で調べて保険を選ぶ、あるいは保険ショップで複数の保険を比較、検討して入るという流れに変わりつつあります。

 この変化は当社にとって非常に有利です。なぜなら保険ショップは特定の会社の商品ではなく、お客さまのニーズに合致する保険を勧めるからです。つまり、知名度が低くても商品次第では選ばれます。そこで当社は早くから、保険ショップにおける消費者ニーズに沿った商品開発に力を入れてきました。

友野紀夫・AIG富士生命社長ーー高齢化でも医療、介護保険は成長する

-- 最近のヒット商品はどんなものがありますか。

友野 2010年に販売を開始した「がんベスト・ゴールド」があります。これは非常にシンプルな商品で、契約者の方ががんと診断されたら、最大で300万円保険金をお支払いするというものです。またその段階で、以後の保険料の支払いは免除されます。これまでの医療保険やがん保険は、いわゆる日額保障、入院日数に応じていくら支払うというものが主でしたが、「がんベスト・ゴールド」は極めてシンプルな設計で分かりやすい。一昨年は約8万2千件、昨年は約14万件の契約をいただきました。

 この商品をはじめとした当社の新契約件数全体も、11年4月の段階では月間約6500件だったものが、今年3月には月間約3万件まで増加しました。

-- 2年あまりで約5倍の急成長ですが、体制整備は。

友野 急激に販売件数が増えたので、それに見合った社内体制の整備を急いでいます。契約が増えるとそれだけ事務手続きも増えますし、お客さまからの問い合わせも急増します。それにきちんと対応できる体制作りが必要であり、ここがしっかりしないと持続的な成長は難しいと思っています。でもコールセンター部門のアウトソーシングなどは考えていません。あくまで自前で整備し、高いクオリティーのお客さまサービスを責任を持って提供したいのです。

-- 競争の激しい業界ですが、今後の戦略は。

友野 日本の生保会社は古くから、直販の社員による対面販売で終身保険を売ることに熱心でした。ところが、近年では終身保険離れの動きが顕著です。実際、保険ショップを訪れる若いファミリー層は、終身保険に入っていない場合も多いのです。しかし、やはり一定の保障と満期になればある程度のお金が戻ってくる終身保険の必要性は、高いと思っています。当社は保険ショップを含む多くの代理店の皆さまに、その必要性を分かりやすくご理解いただけるような商品の開発を日々目指しています。また、介護保険の分野にも力を入れていきます。

 生保業界は、少子高齢化で市場が縮小するので厳しいといわれていますが、私はそう単純に考えていません。医療保険や介護保険など、今後大きく成長する保険はあるのです。これはすべてお客さまのニーズに沿ったものです。お客さまが自分で保険を選ぶ時代になりつつありますから、そこに対して当社は商品力で勝負したい。お客さまに選ばれる保険づくりを心掛けたいと思っています。

 

AIG富士生命社長 友野紀夫

【ともの・のりお】

1954年生まれ。77年岡山大卒業、同年千代田生命保険(現ジブラルタ生命保険)入社。2007年エイアイジー・スター生命保険(現ジブラルタ生命保険)社長。12年ジブラルタ生命保険副会長。13年2月より現職。

 

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