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「高品質の紙をベースに木材製品や 粘着ラベル原反などに業容を拡大へ」--富永達之助・UPMキュンメネ・ジャパン社長

北欧フィンランドに本社を持ち、世界の製紙業界でも高いプレゼンスを持つUPMキュンメネの日本法人。同社は日本における輸入印刷用紙の草分け的存在である。永らくトップを務めたティモ・ヴァルハマ氏に代わって社長になった富永達之助氏は丸紅に入社以来、28年間一貫して紙部門を歩んできたプロフェッショナルである。今後の方針を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

富永達之助氏は語る 日本に根差した輸入紙メーカーの草分け

―― 御社の日本におけるポジションは。

富永 UPMキュンメネは世界17カ国に生産拠点を持つグローバル企業です。当社はその100%子会社である日本法人です。紙の消費という点では、日本は成熟してきているとはいえまだまだ大きな市場です。当社の紙全体における日本でのシェアはまだ小さいのですが、チラシなどに使われる微塗工紙やコピー用紙ではそれなりのシェアがあります。日本メーカーは厚い紙は得意ですが、薄い紙になると当社にアドバンテージがあります。当社は木をそのまま磨り潰して、木質成分が残った紙を作っています。すると、薄くても強い紙ができます。ところがこの製作工程では大変、電力を消費するので、日本の高い電力料金ではコストに合いません。

―― 日本では生産せず、基本的には輸入ですね。

富永 今、日本に持ってきている紙は、おおむね半分がフィンランド、ドイツ、スコットランドの工場で生産しています。日本のメーカーは、木材チップから中間材料のパルプ、紙を同じ工場内でいわゆる「一貫」で製造していますが、UPMはパルプについては原料である森林の近く、紙は消費地の近くで生産しています。どちらが有利かは議論の分かれるところですが、ロジスティックコスト、融通性という点でUPMに優位性があるのではないかと思っています。欧州以外、残りの半分は中国工場で生産しています。

―― 他の輸入紙メーカーとの違いは何ですか。

富永 日本の製紙産業の規模はおよそ2兆円です。その中で当社が強いのは先に述べたチラシ用紙、上質紙などの薄い紙です。他の海外企業も参入していますが、日本にきちんとオフィスを置き、現地法人をつくっている会社は少ない。それゆえに日本に根差したビジネスを展開できていると思います。私個人は当社に入社する前、永年、丸紅で紙を担当してきました。外から製紙業界の動向を見てきた中で、昔からUPMは他の外資系製紙メーカーとは仕事の姿勢が違うと思っていました。品質管理のスタッフも常駐していますし、クレームやアフターサービスの点でも日本メーカー並みに認められています。

―― 今後の日本市場における成長戦略は。

富永 まず、コストに見合った価格で販売していくということに尽きます。そして、日本のメーカーでは難しい、品質が高い薄い紙で差別化を図り、販売していきます。ただ、難しい点は、チラシを見たエンドユーザーの方が、紙の質の違いをそれほど認識していないということです。気にしているのは制作担当者であり、そこにアピールしていかなければなりません。そのためには、高品質のイメージ、欧州企業であるといういいイメージの良さを打ちだしていく必要があります。当社は大手出版社に紙を供給している実績もありますし、製紙業界においては世界的なリーディングカンパニーと自負しております。これらのポイントを明確にアピールしていきます。

木材、建築用資材など紙以外分野にも注力したい富永達之助氏

―― 日本においてチラシ向け用紙などの市場性は。

富永 大きく増加するとは考えていません。社会全体にペーパーレス化の動きもあり、紙の需要は減少しつつあります。その中でシェアを落とさず、コストに見合った価格で販売することが重要です。

―― 紙以外の事業は。

富永 日本ではやはり売り上げの大部分が紙です。他に木材やラベル用紙も取り扱っています。現時点で利益率が高いのは木材です。具体的には住宅などに使用される建築用資材です。復興需要や消費増税前の駆け込み需要もありハウスメーカーは今は元気がいい。ただ木材ビジネスはいい時と悪い時の波が大きいので、今のうちに安定的な収益が確保できる体制を整えておく必要があります。

―― 紙以外が有望だと。

富永 紙だけにこだわるつもりはありません。UPMキュンメネ全体では、紙の売り上げは65%程度です。一昨年が70%だったので、紙の売り上げ比率は徐々に減少しています。何が好調かというと、バイオフューエル、セルロースナノファイバーなどといった、新エネルギー、新素材の分野です。フィンランドの本社で先日、組織変更がありました。欧州、北米、アジアパシフィックの3つのセクションに分かれていたものが、北米が欧州セクションに統合され、それぞれダイレクトに運営するように変更されました。また、部門としても、ペーパーグループ、パルプ、木材、バイオフューエル、ラベルのグループに分割されました。このうち、最も力を入れていこうと考えているのが、バイオフューエルと新素材なのです。世界的に印刷用紙の需要が減少しつつある中で、他社は産業紙、衛生紙、家庭用紙に力を入れています。この分野は人口が減らない限り減少しない。ゆえに参入企業も多いのですが、今は過当競争に陥っています。当社として従来の紙事業は維持したまま、体力をつけながら紙以外の新分野にリソースを集中させていく方針です。

 

社長 富永達之助

【とみなが・たつのすけ】

1960年生まれ。85年上智大学法学部卒業後、同年丸紅入社。2009年印刷用紙部長、11年紙・板紙製品部長を経て、13年4月UPMジャパンに入社。同年6月より現職。

 

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