自民党の西川公也元農林水産相の脇の甘さが際立っている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の国会審議が本格化する最中、TPP特別委員会の委員長という立場にもかかわらず、交渉の内幕を暴露した著書を発売しようとしたこともさることながら、野党から著書の存在を追及され「委員長は答弁する立場にない」と答えた直後、マイクに気付かず著書を書いたことを認める発言をしてしまうなど、とにかく迂闊だ。
4月8日のTPP特別委では、民進党が西川氏の著作『TPPの真実 壮大な協定をまとめあげた男たち』(中央公論新社)の下刷り(ゲラ)とされる印刷物の束を示しながら説明を求めたが、石原伸晃TPP担当相や西川氏は「真偽は不明」と取り合わず。これに反発した民進党は、西川氏の議事運営も公平性に欠けるとして退席、審議は中断した。
その直後だ。国会放送用のマイクに気づかなかった西川委員長は、「(ゲラは)きれいに整理したやつじゃなくて一番古いのが出ているんですよ」と、自らが書いたことを認めるような発言をしてしまった。このことを早速、民進党が察知。同党の玉木雄一郎衆院議員は「これで、これまでの国会での答弁が虚偽答弁ということになります」とツイッターで攻撃したのである。
ちなみに著書には、西川氏と米通商代表部代表のフロマン氏との面談内容や、ニュージーランドとの乳製品輸入をめぐるやり取りなど具体的な交渉経過が書かれている。中には「交渉の成否は農林水産関係の譲歩にかかっていた」と、国内農家が読んだら激怒するような一節もある。
さらには、献金問題で農相を辞任したわずか3カ月後に自民党農林水産戦略調査会長に就任したことを祝う会を開いたことや、農相時代には赤坂議員宿舎から記者たちと歩いて官邸に向かい、その途中の喫茶店に十数席を確保させ朝食をとり、警護上の問題で官邸から大目玉を食らったことなど西川氏の倫理観を疑う内容も盛り込まれている。
TPP特別委の委員長という中立の立場ながら「早期の衆院通過を図りたい」などと発言し、野党からの指摘に陳謝するなど審議前から不安定さを露呈した西川氏。著書の発売は取りやめになりそうで、そのことにも不満を漏らしているそうだが、そろそろ功名心を投げ捨て自粛することを覚えたほうがよさそうだ。
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