経営の極意① 出世も給料もチームが勝ってこそ
私が若いころ、取引先でアドバイスされたことで強い印象に残っているのは、
「江上君、上司を勝たせたら得するからな」という言葉である。
後輩にこれを教えると、「でも、勝たせてあげたい上司なんて少ないですよ」と反駁する場合が多いが、このアドバイスは真実をついている。
というのは、サラリーマン社会で、実績というものは基本として上司がまず勝ち取り、それから貢献度として部下に振り分けられるものであるからだ。一種のトリクルダウンと言っていい。ということは、ここ一番で逆転する準備をしておくには、上司を勝たせてしまったほうが手っ取り早いのである。上司が功績をあげれば、必然的に所属している部署が注目を浴び、自分だって注目される。出世も、給料も結局はチーム全体での上昇に連動するのである。
ただし、もしその上司と対立するのであれば、生き残るにはそれより強い人間を味方につけなければならない。
例えば、保険会社にいた時「代理店に失礼な態度をとった」ということでクレーム騒ぎになったことがある。別に失礼なことはしていなかったのだが、自分たちの会社の保険をほとんど売ってくれないのに、都合のいい時だけ呼ばれて、あれこれと注文をつけられたのだ。
経営の極意② 私を助けてくれた代理店会の会長
その代理店の社長に、「私どももビジネスでやっているのだから、結果を出していただけない代理店に、過剰なサービスを提供することはできないのですよ」と言ってしまったことが問題となったのである。つまり「本社の権威を振りかざし取引先を邪険にしている」という話になってしまったのだ。
私にも確かに非はあったのかもしれない。加えて、当時の私は直属の上司とも関係が良くなく「お前はもういい」と、ろくに話も聞いてもらえず、欠席裁判をされるような形になってしまった。
ただ、そんな時でも私の味方になってくれた方がいたのである。それはすべての代理店のトップに立つ代理店会会長だった。
「江上さんの言うことはもっともであるし、ほかの代理店に聞いても、彼が権威を振りかざしているとは聞いたことがない」とフォローをしてくださったのである。
私は特にこの会長と親密にしていたわけではなかったのだが、ただ、あらゆる代理店と同様に、商品がよく売れるように気を配ってきただけである。
経営の極意③ 助けてもらうことを「よし」とせよ
その当たり前の行動を、会長はビジネスマンとして評価してくれたのだと思う。代理店会会長は私などよりもずっと影響力の強い立場にある。その人が味方に付いてくれたのだから、私の立場もぐんと強くなる。この人の一言で、私は救われたのだ。
「自分より強い人を味方につける」というのは、ビジネスの常道だ。孫正義社長も大手電機会社の有力者を味方につけ、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰する時もライバルであるビル・ゲイツを味方につけている。職場で自分よりも強い人、というのは、すなわち上司である。まずは、その上司を助けるのだ。人と協力して成果を出していくビジネス社会で、一人だけで結果を出そうとしてもうまくいかないのは当然。稼げない人はそれを勘違いしている。
ともあれ、「上司に助けてもらうこと」をよしとし、助けてもらえる人になるために「自分が勝つ」ことよりも、まずは「上司を勝たせること」を重視することが重要なのである。 上司を勝たせて、貢献し、窮地に立った時には今度は助けられ、チームで勝っていくことを旨とすべきなのだ。
[今号の流儀]
上司を勝たせれば、自分も注目される。
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