業界シェア2位のみそメーカーであるハナマルキ。2018年に創業100周年を迎えるにあたり、「液体塩こうじ」をはじめとする新商品の開発や海外展開を通じて事業基盤を拡充している。3代目社長である花岡俊夫氏に、今後の戦略について話を聞いた。 文=本誌/鈴木健広
ハナマルキが誇る液体塩こうじで国内外での躍進を図る
―― 創業100周年を迎えるにあたっての感想は。
花岡 当社は私の祖父が1918年(大正7年)に設立しました。長野県にある製糸工場の女工さん向けにみそやしょう油を製造、販売し始めたのがきっかけです。戦前、戦中、戦後を経て続いてきたわけですから、非常に重みを感じますね。
現在、100周年記念として長野県伊那市にある本社工場内に「みそづくり体験専用施設」の建設を計画しています。一般のお客さまに開放して、みそづくりを体験していただく予定です。自分でつくったみそのおいしさはひとしおです。一人でも多くの消費者が当社のみそに触れる機会を増やすことで、事業環境の変化に対応していきたいと考えています。
―― 事業環境の変化とは。
花岡 2011年の東日本大震災以後、東京電力の計画停電などをきっかけに消費者の料理にかける時間がますます短くなっていると感じています。当社では袋入りやカップタイプの即席みそ汁の品揃えを拡充することで、お客さまの利便性に高めています。即席みそ汁は全体的に好調で、昨年における当社の売り上げを牽引しました。
そのほか、消費者の健康志向や本格志向に対応して、減塩みそや高級みそも取り扱っており、当社では合わせて500程度の商品をラインアップしています。他社にかなりの割合を生産委託している競合メーカーがいる中、私たちは本社工場と群馬県にある大利根工場で全体の9割程度を自社生産しています。品質を維持しながら多品目を生産できるという強みを生かして、事業を伸ばしていきます。
―― 塩こうじの生産・販売にも力を入れていますね。
花岡 塩こうじは、肉や魚、野菜などいろいろな食材の旨味を引き出すことのできるオールマイティーな調味料です。数年前にブームの第一陣が到来した時、マーケットに商品を投入しましたが、競合する数十社も同じように塩こうじを発売していました。
塩こうじは伝統的な調味料でシェアを広げるのに労力と時間がかかる上、他社と同じような商品だと価格競争に巻き込まれてしまいます。そこで、業界に先駆けて開発したのが「液体塩こうじ」です。私がある酒屋の工場を訪れた時に、もろみを圧搾してお酒をつくる過程を見て思い付きました。ペースト状のものに比べて使い勝手が良く、大変人気の高い商品です。家庭用は発売1カ月で40万本のヒットを記録したほか、業務用についても全国350以上の事業所に納品しています。
非常にポテンシャルの高い商品ですから、将来的には、納品先を現在の10倍程度に拡大したいと考えています。近いうちに減塩タイプの液体塩こうじの発売を控えており、今後についても大いに楽しみです。
―― 塩こうじについては海外展開も進めていますが。
花岡 昨年8月、タイ・バンコクに「ハナマルキタイランド」という現地法人を設立しました。
液体塩こうじの拡販を主な目的にしていますが、現在、現地企業の仕入れ担当者からの引き合いが少しずつ増え、手応えを感じているところです。タイは鶏肉などの加工工場が多い上、日本以上にビジネスでの決裁が早いため、順調に行けば液体塩こうじの拡販が一気に進むでしょう。
また、アジア以外では北米、欧州でも事業に手応えを感じています。
塩こうじ以外の商品もハナマルキの大きな収益源に
―― その他の販売戦略として、通販チャネルの現況はいかがですか。
花岡 通信販売についてはこれからですね。最近は楽天市場にも出店しており、じっくり事業を大きくしていきます。通販では「にっぽんのお味噌汁」や「三角パック」といった即席みそ汁がヒットしています。
今後は顧客リピート率を高める施策を実行するほか、通販専用の新商品の開発を進めていきます。現在は試作品をつくっていて、今秋ごろに新商品をリリースする予定です。
今までわれわれが培ったノウハウを生かした面白い商品が出来上がると思います。将来的には通販でまず発売し、そこでヒットした商品を一般流通で扱うなど、それぞれのチャネルを有効活用していきたいですね。
―― 今後の展望について。
花岡 昨年1年間の売上高は前年比1.5%増の172億円となりました。今年の売り上げも7%増を見込んでいます。皆さんには意外に思われるのですが、当社では、実はみそ、塩こうじ以外にお菓子の原料も製造していて、安定した収益源の1つに育ちつつあります。
今後も当社の技術を生かせる領域で、商品を展開する可能性は十分あると思います。
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