日本郵政グループの日本郵便は8月、MVNO(仮想移動体通信事業者)のインターネットイニシアティブ(IIJ)と組んで、格安スマートフォンの販売を始めることになった。郵便局に置かれているカタログから申し込めば、宅配便「ゆうパック」で利用者宅に届く仕組みだ。スマホ普及率が低い主婦や高齢者などのニーズに対応する。郵便局は全国に約2万4千カ所もあり、日本郵便の参入で格安スマホの普及に弾みがつきそうだ。
日本郵便が格安スマホの販売を本格的に検討したのは2年前。事業構想を幾度となく上げたが、高橋亨社長(当時)がことごとく却下。しかし現場は昨年春にIIJを事業パートナーに選定して、ひそかに格安スマホ販売の実現に向けて動いていた。当初は日本郵便自らMVNOとしてサービスを提供する構想もあったが、最終的にIIJの代理店として紹介販売にとどまることになった。ともあれ実現したのは西室泰三・日本郵政社長の退任に端を発したグループ社長の玉突き社長交代人事のたまもの。高橋社長が退任したことで、消えかけた「格安スマホ事業」が急浮上した格好だ。
郵便局で申し込める格安スマホは、月額料金が大手通信各社の料金の約半額の2980円で、毎月3ギガ(30億)バイトのデータ通信を利用できる。スマホ端末は3万2800円。日本郵便は電話番号など顧客情報の情報を記録した「SIMカード」を差し込み済みのスマホを自宅へ直接配送するため、利用者は店頭に出向かなくても郵便局の用事のついでに申し込めて、手間がかからない。情報弱者の多い高齢者などのために、郵便局には約10ページの専用カタログを置くほか、初心者向けガイドブックを無料で配布したり、郵便局専用の電話ダイヤルでIIJのスタッフが対応する態勢を整える方針だ。
しかし、日本郵便は携帯電話が売れまくっていた10年ほど前にも携帯電話端末の紹介販売をしたが「あれはほとんど売れなかった」(日本郵政幹部)のが実情。情報弱者向けサポート態勢を整えても他人任せでは、日本郵政グループの社是とも言える「総合生活支援サービス」にはほど遠い。かといって日本郵便の窓口スタッフにスマホの説明は困難で、どこまで高齢者などに受け入れられるかは未知数。日本郵便の販売目標は2020年までにわずか100万契約だが、決して楽勝な数字ではない。
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