政府は農業分野の規制改革をさらに加速させるつもりだ。今後の協議次第では、コンクリートの土地に屋内で農産物を生産する植物工場を設置した場合、その土地を農地として認める農地法の改正も検討されているという。9月13日の規制改革推進会議の農業作業部会では、生乳の流通改革や農業資材の価格引き下げが検討の最優先課題としており、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を見据えた「攻めの農業」の実現に向け、矢継ぎ早な改革が実施されそうだ。
現在の農地法では、農地は「耕作の目的に供される土地」と定義され、コンクリート舗装した状態の土地は耕作できない土地とみなされる。一方、ITや室内栽培などの技術で季節や天候に左右されず、土を使わなくても屋内で農産物生産が可能になり、そうした土地も農地として認める特例措置の必要性が政府内外で指摘されていた。
というのも、固定資産税の算出基準となる評価額(2015年度の全国平均)は、一般の農地が1平方メートル当たり30~100円なのに対し、工業地は約1万5千~4万円と格差が大きい。植物工場での栽培は空調や電気代がかさんで露地栽培の2倍以上のコストが掛かり、工場の約6割が赤字と試算され、企業の農業参入の高い障壁となっている。
こうした状況に歯止めをかけようと、既に大阪府岸和田市が、車いすの障害者らが農作業をしやすいよう、コンクリートを敷いた土地も農地として認める特区の設立を政府側に提案。6月から協議を進めており、検討会の委員からは「農作業が行われている限り、コンクリートであっても農地」「時代に合わせて農地の解釈を変えればいい」など、改革を後押しする意見が相次いでいる。
全国農業協同組合中央会(JA全中)の特別民間法人から一般社団法人に移行する農協改革をはじめ、兵庫県養父市で企業の実質的な農地保有を認める国家戦略特区の実施など農業の「聖域」に次々とメスを入れてきた安倍晋三政権。参院選が終わり、改革ムードが高まる今、さらに深いメスが入れられることは間違いない。
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