専業主婦世帯などの所得税額を軽減する「配偶者控除」の廃止が先送りされる方向になっている。財務省は配偶者の収入にかかわらず、共働き世帯にも適用する「夫婦控除」への移行を検討していた。しかし、安倍晋三首相が年内にも衆院解散・総選挙に踏み切る可能性が高まり、世論の反発を受けかねない改革には踏み込まない見通しだ。
佐藤慎一事務次官にとって、配偶者控除の廃止をはじめとする所得税改革は悲願だった。少子高齢化や格差の拡大が進む中、現行の所得税体系は時代遅れになっている。さらに、佐藤次官には、35年ぶりに主税局長から直接昇格した「税のエキスパート」としての自負もあった。
配偶者控除は、専業主婦やパートで働く妻の収入が年間103万円以下の場合に税を軽減する仕組み。しかし、いまや共働き世帯の数が専業主婦世帯を逆転。税負担を軽くするため、年収が103万円以下になるよう就業調整をする人もいて、働き手不足を助長するとの批判もあった。
見直しは毎年浮上していたが、今年は安倍政権が「働き方改革」を掲げていることもあって、財務省は「いよいよ所得税改革に手をつけられる」(幹部)と鼻息が荒かった。
8月下旬には、自民党税制調査会の宮沢洋一会長が呼応するように、配偶者控除の見直しを2017年度税制改正で検討する考えを表明。見直しの機運が高まっていた。
しかし、その後、首相が年内にも解散・総選挙に踏み切るとの観測が浮上。官邸や公明党税調が消極的な姿勢を見せると、自民党税調もトーンダウンし始めた。財務省と自民党税調には軽減税率の導入をめぐって官邸と公明党に押し込まれた苦い記憶がある。
むしろ逆に、選挙をにらんで、配偶者控除の拡大など「減税」を求める意見が浮上。当初の目論見とは全く異なる方向で決着しそうな展開で、次官以下、主税局は頭を悩ませている。
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