足並みがそろわず惨敗した野党
10月23日、注目の東京10区と福岡6区の衆院補選の投開票が行われた。東京10区は、自民党前衆院議員の若狭勝氏が民進党新人の鈴木庸介氏らを破り、2度目の当選。福岡6区は、無所属新人の鳩山二郎氏が民進党新人の新井富美子氏らを破り、初当選を果たした。
若狭氏は、今夏の都知事選で無所属で出馬した小池百合子氏の応援をした自民党議員として知られている。党内で孤立無援。選挙戦さなか、除名覚悟を公然と口にしていた。ところが、小池氏が圧倒的な支持を得て当選すると風向きは一気に変わり、口頭での注意で今回も公認候補となり、公明党の推薦も得ていた。
告示日には、応援に駆け付けた小池都知事が「圧勝」を口にし、都知事選時と同じ“勝負服”のグリーンのスーツを身に纏い、選挙戦を引っ張った。その甲斐あって、鈴木氏に2万8614票差をつけ、7万5755票を得ての“圧勝”だった。
また、福岡6区は、鳩山邦夫元総務相の死去に伴うもので、次男の二郎氏と、自民党福岡県連が推す蔵内謙氏の公認争いがまとまらず、ともに無所属での出馬となった。保守分裂選挙である。“弔い合戦”と位置付けた二郎氏が10万6531票を獲得しての勝利。民進候補の新井氏には約6万6千票、蔵内氏には8万5千票近く引き離しての圧勝。鳩山氏は当選後、自民の追加公認を得た。
一方の野党側は、意気消沈だ。共産、社民、自由(前・生活の党)は候補者擁立を避け、民進党候補だけが出馬し、形だけは野党統一候補となったものの、政策協定も結ばず、応援活動もちぐはぐだった。
「民進の野田佳彦幹事長が連合に気を遣ってばかりで、現場はシラケていた」(民進党関係者)
補選の一週間前、新潟県知事選が実施され、自公推薦の前長岡市長、森民生氏が、共産、社民、自由推薦の米山隆一氏に破れる“波乱”があった。この選挙では民進が自主投票で、連合新潟は森氏支持を表明していた。だが、結果は米山氏が約6万3千票もの差をつけて勝利した。ずっと足並みが揃わない野党。しかし、肝心の野党第1党の民進が足かせになっているという。
「解散総選挙になった場合、野党統一候補を立てて戦わなければ自民党に勝てない。もう分かり切った事実です。なのに、いまだに連合の顔色ばかりうかがっている。これでは足並みが揃うわけがありません」(同)
解散風あおるメディアと戦々恐々の自民党関係者
野党がこのような調子だから、早期解散説が浮上するのだ。
「今、メディアでは1月解散、2月総選挙が有力と見ています。大手各社は既に『選挙班』を編成し、いつ解散になっても対応できるよう備えています」(大手新聞社政治部記者)
補選を取りこぼさず勝利したことで弾みがついたと思いきや、自民党内も浮かれた状況ではないという。
「東京10区は、都連が傍観して、小池都知事を応援した自民党都議と区議の“造反7人衆”が仕切っていました。つまり、若狭氏の圧勝に自民党は関与していない。小池人気を改めて突きつけられただけです。このまま解散になったら、小池都知事の応援なくして勝ちは見えてきません」(自民党衆院議員)
福岡からも似たような嘆き節が聞こえてくる。
「県連支援の蔵内氏は、犬猿の仲といわれていた麻生太郎財務相、引退した古賀誠元幹事長が“共闘”して盛り立てていた候補です。ところが、あっけなく負けた。弔い合戦の意味合いとともに、告示前、小池都知事が応援に駆け付けた。今の小池さんに勝てる人なんて、いません」(福岡県連関係者)
まさに東西で吹き荒れた小池フィーバー。この旋風に「自民党」の文字はないという。だからこそ、こんな状態で解散なんて議席を減らす危険性を孕んでいると多くの自民党関係者は指摘し、戦々恐々としているのだ。
それでも解散へひた走るかの如く、メディアはこぞって解散時期はいつかを探っている。なぜか。政治ジャーナリストはこう指摘する。
「解散となれば、多額の広報宣伝費がメディアにバラ撒かれます。メディアは単に解散ムードを醸成しているだけなのです」
10月26日、自民党は総裁任期を2期6年としていた党則を、3期9年と変える方針を固めた。これによって、焦って解散する必要はなくなったのである。
「もちろん、解散権は首相の専権事項なのでいつになるか分かりませんが、年明けはないと見ていいのでは」(前出・政治ジャーナリスト)
一寸先は闇の永田町だが、前のめりになり過ぎると何も見えなくなるということか。
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