東京電力の福島第1原発の事故処理費用が21兆5千億円に拡大することとなった。「廃炉作業の全容が見えない中、費用の算定は困難」(世耕弘成経済産業相)で、上ぶれはある程度織り込まれていた。ただ、これまでの想定の約2倍という衝撃が国民に与える影響は大きく、経産省の方針への反発が強まっている。特に賠償費用の増加分を国民負担とするロジックには異論が出ている。
東電の経営再建を検討する経産省の「東電改革.1F(福島第1原発)問題委員会」は12月14日、提言案を示した。事故処理の総額は廃炉、除染、賠償がそれぞれ増大し、想定より倍増すると明記した。
賠償費用は3兆円多い8兆円に増える。増大する賠償費用のうち送電網の利用料(託送料金)に2.4兆円を上限として上乗せする。この費用は、原発を保有する電力会社が事故に備え積み立てるはずだったお金だから、これまで原発を保有する電力会社を利用した人、すなわち、新電力を含む全国民(沖縄電力域内を除く)が負担すべきというのが経産省の理論だ。伊藤邦雄委員長(一橋大学大学院特任教授)は「理屈上は納得できないかもしれないが、国難を国民全体の理解をもって解決していくことが大切だ」と述べた。
商品を販売した後で原価に入れ忘れた費用を客に請求するような無理筋の手法に見えるが、経産省の狙いは別にある。
新電力に切り替えた顧客の電力使用量は切り替えていない人より約3割多い。つまり、新電力の顧客は“富裕層”が多いことを示している。経産省幹部は「原発のコスト負担を大手電力のユーザーにだけ押しつけるのは結果として金持ち優遇になる」と主張する。40年かけて支払う場合、一般標準家庭で月平均18円の負担増となる。
一方、上乗せ額が膨張するとの懸念に配慮し、上限を超えないよう、経産省の電力・ガス取引監視等委員会や消費者庁が確認する仕組みも導入する。
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