NHKの上田良一会長は2月2日の定例会見で、外部の有識者による受信料制度の検討委員会を同日付で設置したと発表した。会長の常設諮問機関の位置付けで、有識者に経営の根幹に関わる判断を委ねることになる。
検討委の狙いはとりもなおさず、テレビ放送のインターネット常時同時配信サービスの許可を手繰り寄せるための制度改革の方向性を示すことだが、総務省幹部は既に「NHKに同時配信を認めるのはまず無理。民放との格差拡大につながることを簡単にはウンと言えない」というように、既に議論の決着はついているようだ。
テレビ放送のインターネット常時同時配信をめぐっては、NHK、民放各社、総務省、さらに自民党議員まで参加して議論してきたが、民放連は格差拡大を声だかに訴えてきた。その効果か、高市早苗総務相は災害情報など現状のサービス範囲にとどめるべきとの姿勢に傾いている。総務省の事務方も「放送法改正の手間がなくなった」(情報流通行政局)と喜んでいる。
検討委は大学教授5人で構成され、憲法や経済学、会計学、行政法などの専門家がネット受信時の受信料負担の在り方などを議論する予定。しかし、放送法改正という最大の目的が棚上げになり存在意義が薄まれば上田新体制の船出に傷がつきかねない。上田会長は会見で「放送と通信の融合という変化に合わせて、受信料の体系など大きな枠組みを検討してもらいたい」と説明。中長期的視野での議論に期待を寄せる姿勢だが、放送法改正のめどが立たなくなったことで、現場は諦めムードが漂っている。同時配信で仕事量が増えると懸念する記者からは「仕事がきつくなっても速報性からは必要なサービス。いろいろ物議を醸した(籾井勝人)前会長の影響は小さくないと思う」(経済部)と恨み節も聞こえてくる。
検討委は年内をめどに答申を出す見通し。上田会長は「行政や立法の場で放送法が議論されていくので、NHKの立場をしっかり準備したい」と劣勢挽回の気概をみせるが、早くも試練に直面した格好だ。
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