「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。本シリーズでは、20年間で2万人以上のファッションをコーディネートしてきた、ファッションスタイリストジャパン(FSJ)の西岡慎也氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。
ファストファッションの使い方
本連載の第3回目で、ファッションを学ぶために、それなりにグレードの高いセレクトショップで、店員さんにコーディネートしてもらう方法をお勧めしました。ファストファッションでは、本物のセルフイメージ向上につながらないからです。
ただ、入門編としてファストファッションを上手く使う、という考え方はアリです。まずは色の組み合わせや自分のサイズ感を学ぶために、いろいろな服のバリエーションを試してみるのは良いことでしょう。楽器を覚えるときに、いきなり高級なものを買う人は少ないと思いますが、それと同じことです。
試すのはジャケットでもシャツでもパンツでも構いません。ただ、スーツだけはやめておいてください。ファストファッションの店で試すのは、あくまでもドレスカジュアルの範囲に留めておくべきです。
ファストファッションのお店で全身コーディネートしても2万円を超えることはないと思いますから、失敗してもやり直せるレベルです。できれば1人で来店するのではなく、お洒落な先輩や友人などに付いてきてもらってはいかがでしょうか。女性目線からの評価を知るために、奥様や知り合いの女性から助言をもらうのも良いかもしれません。
そこで色遣いやサイズ感を覚えたら、次は素材感やブランドの重要性を知る段階に入っていきます。くれぐれもファストファッションで止まってはいけません。
特に、周りから「お洒落だね」などと褒められるようになったら要注意。そこで満足してしまっては非常にもったいない。むしろ、褒められたら次のステップに行く時期だと思ってください。
フォーマルもカジュアルも知ってこそ幅が生まれる
私自身も古着屋の店員だった時代、クラシックに関して知らなかったため、スーツの着方を尋ねられて非常に困った経験があります。当時は古着を着ていても周りから「お洒落だね」と言われていたので、そこで満足していたのです。
でも、自分のレベルを上げて、世界を広げたければ、それではいけません。私のように、ファッションを職業としていない方でも、誰かに聞かれたときに自信を持って答えられると気持ち的にも非常に楽になります。
人間は、普段仕事が忙しすぎるとカジュアルがおろそかになって外出するのが億劫になるし、逆にいくらカジュアルがすごくお洒落な人でも、そればかりだと冠婚葬祭やビジネスの場では不安になったりします。フォーマルもカジュアルも、両方学んで知っていれば幅が生まれ、活動範囲も広がるのです。
幅が生まれると、今度はファッションに関して他人にアドバイスができるようになります。ファッションに無頓着な人に服を褒められても嬉しい人はあまりいないでしょう。信憑性がなく、ただのおべっかにしか感じられないからです。
特に、女性はそのように感じる傾向が強いようです。次回は、女性に好感を持たれるためのファッションのポイントについてお話ししたいと思います。
西岡慎也のワンポイントアドバイス
成功とは、「ビジネスとプライベートのバランスが取れている状態」だと私は考えています。仕事が忙しく、プライベートがおろそかになっている人は、手始めにたった1本のデニムジーンズを買うだけでも構いません。誰からも褒められ、他の服とも合わせやすいデニムがあるだけで、自然と外出したくなるものです。プライベートでも、外出してさまざまな経験を積むことがあなたの価値の拡大につながり、セルフイメージの向上にもつながるのです。
(にしおか・しんや)1979年生まれ。茨城県土浦市出身。21歳で米輸入会社ワイルドウエストジャパンに就職し、約4千人のファンを獲得。2001年、セレクトショップ「WITH PREASURE」を独立開業。従来のアパレルの販売方法ではなく、コンサルティングを中心としたコーディネートの手法を確立する。10年にファッションスタイリストジャパンを設立し、多くの著名人、エグゼクティブの顧客を獲得し、現在に至る。
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