財務省にとって思惑通りの人事 佐川宣寿氏が国税庁トップに就任
7月の幹部人事は佐藤慎一事務次官が勇退し、後任に福田淳一主計局長が昇格。迫田英典国税庁長官の後任には、森友学園の国有地払い下げ疑惑で注目を集めた佐川宣寿理財局長が就任した。国会で「文書は処分した」と繰り返し、疑惑隠しと追及された佐川氏が国民から税金を徴収する国税庁トップに就任することに野党やメディアの批判が噴出したが、財務省としては順当な人事となった。
安倍晋三首相の信頼が厚い田中一穂氏ら「54年組」3人の就任や、佐藤氏の35年ぶりの主税局長からの直接昇格など、安倍一強の下で次官人事は官邸の意向に大きく左右されてきた。
今回、森友疑惑で官邸を守りきり、貸しを作った財務省としては、世論の反発が予想された佐川氏の長官就任も押し通し、省内秩序を維持する思惑通りの人事となったといえる。
57年組の福田氏は早くから次官候補と目されていたが、一時は佐藤氏との不仲が囁かれることもあった。理想主義者の佐藤氏と異なり、「数手先を読み、無駄なことをしない現実主義者」と評される。自ら手掛けてきた社会保障改革をはじめ、財政健全化や来年判断する消費税率10%への引き上げで、現実的な着地点を見出せるか手腕が試される。
58年組では、岡本薫明官房長が主計局長に、太田充総括審議官が理財局長に就任した。福田氏の後任次官の座は、官房長として森友疑惑を取り仕切った岡本氏がリードしたといえる。
岡本氏の後任の官房長には60年組の矢野康治主税局審議官が就任した。矢野氏は首相の地元の山口県出身で、秘書官を務めた菅義偉官房長官に近い。一橋大経済学部卒と、東大法学部卒が居並ぶ財務省では異例だが、官邸との関係を重視したとみられる。
同期の可部哲生主計局次長は総括審議官に昇格しており、これから次の次を見据えた次官レースも熱を帯びそうだ。
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