経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

イタリア製電気自動車のショールームをオフィス街につくったカツラダモータース(兵庫県)

神田昌典氏

大阪・梅田の街中に、イタリア製電気自動車のショールームが出現!

 今年4月、大阪・梅田に、これまでの自動車業界の常識を覆すショールームが誕生した。その名は、「BIRO STORE Osaka」(ビロ ストア 大阪)。イタリア、エストリマ社製の電気自動車「BIRO」の、日本初のショールームだ。

 自動車のディーラ―は、郊外に大きなショールームを構えるのが定石だ。ところが「BIRO STORE Osaka」の立地は、オフィス街のど真ん中。広さは、わずか5坪。日曜日と月曜日は営業していない。

 「BIRO」は、全長174センチ✕車幅103センチ✕車高156センチ。通常の自動車1台分の駐車スペースに4台収まるコンパクトサイズだ。そのフォルムはコロンとして実に愛らしく、イタリアならではの遊び心あふれるデザインセンス。これが車道を走っていたら、注目の的になること間違いなしだ。

 フレームとボンネットの色は、99色もの鮮やかなイタリアンカラーから選べるという。さらに画期的なのは、リチウムバッテリーを取り外して、家庭用のコンセントで充電できること。そもそもこの商品が、従来の“自動車”の枠にハマり切れない代物なのだ。

 そんなファッショナブルな家電感覚の商品だから、販売する店舗もファッショナブルに――。これが、常識破りの発想の原点だった。

 BIRO STORE Osakaでは、イタリアのファッションブランド、FEDONのバッグも展示販売している。自動車を販売するにとどまらず、軽やかでカジュアルな、イタリアの文化をいっしょに発信するという試みだ。

 当然、接客のスタイルも従来型の自動車ディーラーとは異なる。スーツ姿の男性スタッフが分厚い資料を手に商品説明をするのではなく、「BIRO」のロゴが入ったTシャツを身にまとった女性スタッフが応対する。

 「BIRO」は約150万円と、決して安くはない商品だが、見積りや注文はショールームで対面で受け付けるよりも、WEBサイトからエントリーしてもらうことをイメージしている。

 WEBサイトは明快な設計になっており、誰でもサクサク快適に操作できる。オシャレな「BIRO」を、オシャレに注文してもらおうというわけだ。

写真①

大阪・梅田の「BIRO」のショールーム

 

写真②

「BIRO」のWEB広告の一例

カツラダモータースの販売ターゲットとは

 さぁ、この「BIRO」を、誰に向けて販売するのか?

 日本の総輸入代理店であるカツラダモータースの代表取締役社長、桂田宗慶氏は、まずはターゲットを「兵庫県・大阪府の18~60歳の企業経営者」に定めた。そしてショームールのオープンから遡ること5カ月前、Facebook広告を活用して、彼らへのアプローチを始めていた。

 この大きな目的は、価格アンケート。日本での販売価格を決定するために、ズバリ、見込客に、意見を聞いてみようというわけだ。

 具体的には、ターゲット層に対してアンケート募集のFacebook広告を出し、応じてくれた人に、「BIRO」の情報を見てもらった上で、高いと思う値段、安いと思う値段、購入意向などについて聞いた。

 40件のアンケート回収を目標に、約14万円のコストをかけて実施したが、実際には79件を回収することができた。あらかじめターゲット層に絞ってアンケートを取っているので、これらの声は、すなわち、有力な見込客情報だ。

 アンケート結果をもとに、価格を150万円とし、これに伴ってターゲットを富裕層に絞り込むことにした。この価格でも「買いたい」と回答した6名には、対面でヒアリングを行うことで、さらにターゲットイメージを明確化した。

 プロモーション手法として、Facebook広告は、引き続き活用している。雑誌や新聞、テレビなどの取材も多い。ほかには、ショールームの女性スタッフが街頭でフライヤーを配布し、ショールームとWEBサイトへの集客を図っている。

老舗のカツラダモータースが、自動車業界の変革をリード

 カツラダモータースは、宗慶氏の祖父が大正時代に創業した、二輪・自動車ディーラーの老舗中の老舗だ。特にBMWのバイクの取扱いは長く、BMWジャパンができたときからの正規ディーラー。現在も、約10億円の年商の約6割を、BMWのバイクが占めている。宗慶氏がBMWの専門誌に連載をもっていることもあって、カツラダモータースは広く全国に名を知られた存在だ。

 店舗は、「BIRO STORE Osaka」のほかに、BMWを販売する「モトラッド阪神」「モトラッド神戸」、スズキの4輪を販売する「スズキアリーナ阪神」、カナダ製の3輪車を取り扱う「カンナム・スパイダーカツラダ」を展開中だ。

 三代目社長の宗慶氏は、大学在学中は学生起業家で、広告代理店を志望していた。しかし思い通りにならず、23歳のときに方向転換して自動車整備の専門学校に入学。卒業後、外車のディーラーに就職し、いきなりトップセールスマンになる。26歳のとき、結婚を機に家業のカツラダモータースに入社し、10年前から社長を務めている。

 そんな経歴をもつ宗慶氏は、老舗の家業を、決して守りではなく、攻めの姿勢で経営してきた。先代から引き継いだBMWとスズキを大きな柱としつつも、ベスパやドゥカティといったイタリアのブランドにも挑戦。結果として撤退することになったものの、その後もカンナム・スパイダー、そして今回のBIROと、自身が惚れ込んだブランドを日本に紹介。現在進行形で新規取り扱いを検討中のものも、いくつかあるという。

写真③

昭和初期の「カツラダ商会」の広告

写真④

ミラノにて、「BIRO」の開発者であるエストリマ社創始者のマッテオ・マエストリ氏と桂田宗慶氏

カツラダモータースの新しい価値の創出ポイント

 現状に安住することなく、果敢にトライ&エラーを続けるカツラダモータース。宗慶氏は、「若い頃よりチャレンジ精神は旺盛かもしれない。BIROという全く新しいタイプの自動車を取り扱うことにしたのも、少し大げさに言えば、自動車業界の変革に挑んでいるのです」と言う。そのチャレンジ精神が、企業の活力を生んでいる。

 「BIRO」の2017年中の販売目標は50台。まずは認知度向上に努め、来年度から一気に販売に弾みをつけていく。

 カツラダモータースは、2022年に創業100年を迎える。これに向けて、新しいCIを作成したところだ。5年後までに年商5倍という高い目標を掲げて、同社の常識破りのチャレンジは、まだまだ続く。

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