財務省が発表した法人企業統計調査によると、企業が利益を蓄積した「内部留保」が2016年度末時点で406兆2348億円に達し、初めて400兆円を超えた。財務省は内部留保課税の検討を水面下で続けてきたが、導入が現実味を帯び始めている。
内部留保は企業が経済活動で上げた利益から法人税や配当、役員給与などを差し引いたもの。第2次安倍政権発足後の12年度から年々増加しており、景気回復によって利益が増えてもお金を使わずに貯め込む日本企業の姿が浮き彫りになっている。
かねてから麻生太郎財務相は「法人税を下げているのに、まだ企業はお金を貯め込むのか」と強く非難してきた。一方で、企業がもうけをどれだけ賃金に回しているかを示す「労働分配率」は70%を下回っており、政権発足時より悪化。企業の設備投資も低空飛行を続けている。
内部留保課税について、財務省は表向きは検討している事実を明らかにしておらず、麻生財務相も「二重課税になるため、安易にやるべきではない」との立場をとってきた。
だが、GDP(国内総生産)の7割に相当する規模まで内部留保が膨らむにおよんで、省内から「内部留保課税の実施もあり得る」との見方が飛び出してきている。
考えられるのは、利益のうち一定程度を賃上げや設備投資にまわしていない企業に対し、法人税を追加で課税する案だ。また、追加課税という強硬手段はとらないものの、対象の企業を特定し、公表することで自主的な改善を促す案なども検討事項になっている。
とはいえ、内部留保の増加は、企業の業績を上向かせ、賃上げや設備投資を増やすと喧伝してきた「アベノミクス」のデフレ脱却が行き詰まっていることを意味している。
省内には「これ以上、官邸のご機嫌取りのための政策をやる必要はない」と冷めた意見も少なくない。
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