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従来マニュアル廃止し「金融育成庁」へ転換する理由――金融庁

 金融庁は、金融機関に対する今後の検査と監督の考え方をまとめた検査・監督基本方針案をまとめた。

 経営状況を点検する際の手引書である「金融検査マニュアル」を、2018年度終了後をめどに廃止。バブル崩壊後の不良債権問題に対応するため厳格で画一的な検査で財務健全化を迫ってきた従来の手法を改め、金融機関ごとに異なる経営課題について対話を通じて改善を促す“金融育成庁”への転換を図る。

 新たな検査は、金融検査マニュアルに基づいて確認項目を細かく点検するやり方を変え、金融機関の創意工夫を促す「対話」を重視。金融機関ごとのビジネスモデルや経営環境を把握し、個別に課題を改善する考えだ。また、金融機関の取り組みが利用者に分かるよう「見える化」も進め、金融サービスの向上を促す。企業統治や資産査定など具体的な検査・監督の進め方については、今後個別に公表していく。

 金融庁がこのような見直しを行うのは、これまでの金融検査マニュアルを重視した検査が時代遅れのものとなったためだ。金融検査マニュアルは、1999年に運用が始まった。バブル崩壊後、多額の不良債権で金融機関の経営が悪化したことから、融資状況を細かく点検し、財務の健全性のチェックに活用された。

 ただ、厳格な資産査定に力点を置く金融庁は“金融処分庁”と恐れられ、金融機関の融資姿勢は萎縮。不良債権問題が収束し金融危機への対応が一段落した後も、地銀などは融資に慎重なままで、地域経済の活性化を阻んでいるという批判がある。

 少子高齢化に伴う人口減少で資金需要が落ちつつある上、日銀の金融緩和を背景に貸し出し利ざやも縮小する中、ある政府関係者は「これまでのビジネスモデルに固執していては、地銀にも未来はない」と指摘。金融検査マニュアルによる画一的な検査を止め、対話を通じて地銀の経営をてこ入れすることが、地方創生を掲げる政府にとって喫緊の課題となっている。

 金融庁の有識者会議は17年3月に公表した報告書で「わが国の金融行政はいったん確立した検査・監督の在り方を見直し、進化させる過程にある」と指摘していた。金融庁は今回の見直しで、「金融行政の質を高め、わが国の金融力を高め、経済の潜在力が十全に発揮されるよう、当局と金融機関が日々自己革新を行い、共に前に進めるようにする」覚悟だ。

 

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