税理士や社労士などの士業集団アップパートナーズグループ。近年はITコンサルやM&A仲介などの専門家も加えて多様な顧客ニーズにワンストップで対応し成長を続けている。顧客は約3千社で西日本最大級を誇る。
迅速な情報提供でコロナ禍の顧客倒産ゼロ
── コロナ禍で顧客(企業)にどのような対応を取られましたか?
菅 影響が出始めた3月にはいち早く公的融資や助成金などの情報を提供し、1件の倒産も発生しませんでした。リーマンショックの経験が生きたと思います。最も相談が多かったのは「雇用調整助成金」で、国の制度の改正の度に内容や利用方法をお伝えして、乗り切っていただきました。売り上げの減少は深刻でアベノミクス以前に戻ったイメージですが、回復スピードは予想以上に速いと感じています。
── 現在のグループの内容を教えてください。
菅 税理士法人と社労士法人を中心に司法書士やM&A仲介、ITコンサルティングなど9社を擁するグループです。対象エリアは福岡、佐賀、長崎を中心とする九州、山口、沖縄、中四国の一部と東京です。
総スタッフ数は330人、グループ全体の売り上げは約25億円で顧客は3千社を超えており税理士・社労士業務のグループとしては西日本最大級の規模となっています。
── 当初は佐賀と長崎の税理士事務所の合併からスタートしたそうですね。
菅 私の父が佐賀で50人規模の税理士事務所を営んでいました。ところが、私が28歳のときに他界し、代表業務を引き継ぎました。その後、父の時代から懇意だった長崎の税理士事務所と合併し、拡大を続けて現在のグループに至っています。
顧客のニーズは多様 規模・専門性の拡大は必然
── 拡大に伴う不安はありませんでしたか
菅 全くありませんでした。佐賀と長崎の合併を喜んだのは従業員で、報告すると拍手が上がったほどです(笑)。経営者となり現場で企業の方々の相談を受けると、個々の知識や能力だけでは限界があることはすぐに分かりました。
企業の相談というのは税金(財務)だけで完結することはほとんどなく、労務や相続など経営全般に及びます。相続では土地や建物も絡むケースもありますが、税理士1人では限界があります。企業によりよいサービスをワンストップで提供しようと思えば、規模や専門性の充実、拡大は必然でした。
── クリニックなどの医療関係の顧客が多いとか。
菅 グループに加わった長崎の事務所が医療関係の顧客が多かったということもありますが、私の祖母が九州歯科大の下宿屋を営んでいたのが大きかったと思います。現在、医療関係は約900件に上ります。
「医は仁術なり。お金のことに関わりたくない」「治療に専念したい」と考える医者は少なくありません。しかし、経営あっての医療ですから、資金繰りだけでなく、各種法律を駆使した節税方法、売り上げに関する数値のデータベース化なども提案して安定経営をサポートします。
一例ですが全国の1件当たりの歯科クリニックの売り上げは平均約5千万円、私どもの顧客は約8千万円です。医療技術や意識が高い先生方が多く、私どもは「患者さまと十分に時間を取って会話や説明をしてください」といった経営につながるアドバイスをさせていただきます。
顧客の異なるアイデアをつなげるBtoBにも関心
── 女性スタッフが多く、離職率は3%未満だそうですね。
菅 女性が約6割を占めており、優秀な方が多いので契約関係などミスが許されない作業に向いています。出産や育児後の復帰は大歓迎で、元の仕事でも、短時間勤務でもよいなど柔軟性を持たせています。給与体系は基本給に業績連動による上乗せがあります。この部分が相当あり30歳の主任クラスで年間300万円ほどの差が出ます。スタッフはある程度納得して効率よく働いてくれています。
── 人口減少や社会構造の変化に伴う事業継続が課題となっています。
菅 M&Aを提案させていただいています。グループのスケールメリットを生かして一から相手を探すのではなく、まず約3千の顧客のデータを精査して、適切なマッチングがないか検討します。
ある建設会社と電設会社のM&Aを成功させたことがあります。業態も経営の安定からも理想的でしたし、社名も似ていました。これは偶然ですが(笑)。
異なるアイデアをつなげることで新たなビジネスチャンスが生まれる時代だと認識しています。企業同士のM&Aでだけでなく、これからはアイデアをつなげるBtoBも取り組んでみたいですね。
会社概要 設立 2008年9月 資本金 1億5,600万円(グループ) 売上高 25億円(グループ) 所在地 福岡県福岡市博多区 従業員数 330人 事業内容 会計・税務、人事・労務、経営コンサルティング、IT化支援、M&A、リスクマネジメント、証券業務など https://www.upp.or.jp/ |
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