ネットを駆使した住宅販売　コスト削減と耐震で注目―Lib Work

インターネットを駆使して集客コストを下げ高付加価値住宅を実現する、住宅メーカーのリブワーク。耐震で高い評価を受けると同時に、新たに「水害対応住宅」の研究も始めている。

目指したのは米国型ＩＴ住宅ビジネス

──　ネットを使った住宅ビジネスが全国的に注目を集めています。

瀬口　一般的な住宅メーカーはチラシやテレビＣＭなどを使ってモデルハウスに集客し営業活動を行いますが、当社ではまずネットで集客してモデルハウスに来てもらい説明します。集客コストは約10分の１のため低価格で高付加価値の提案が可能となりました。お客さまもネットで検討して来場されますから契約の可能性も高い。コロナ禍で前期は契約が滞り売り上げは８％減の約60億円でしたが、今期は95億円を見込んでおり成長軌道は変わりません。

──　このスタイルはネットが普及していない20年前に発案されたとか。

瀬口　熊本大学の大学院で弁護士を目指して勉強していた１９９９年、熊本県山鹿市で工務店を営む父が他界し家業を継ぐことになりました。
大学院ではＩＴブームの中で誕生・成長する米国企業について学ぶ機会がありました。米国では本社が田舎でも大企業に成長している例もあり、熊本県の郡部で家業を継ぐのであれば、ＩＴを駆使した米国型の企業を目指そうと決断したわけです。

　当時、工務店の社員は５人。営業はゼロで社長がツテで仕事をもらい年間10件の受注であれば十分という状態でした。逆にこれが功を奏しゼロからスタートできました。ネット利用が増えて大幅なコスト削減となり、良いものを作ることで仕事は確実に増えます。今期の着工件数は３５０棟を見込んでいます。

ユーチューバーも採用する業界常識外の柔軟発想

──　６月に福岡市に近いイオンモール福岡（糟屋郡粕屋町）に展示場をオープンしました。

瀬口　熊本、大分、佐賀に次いで８店舗目の常設展示場ですが、初めてファッションブランド「ｎｉｋｏ ａｎｄ・・・（ニコアンド）」とコラボし、センスのよい本物の家具や調度品を揃えています。「服を選ぶ感覚で家づくりもファッショナブルに」がコンセプトで予想以上に好評です。

　このような異業種との協業は積極的に行っていきたい。当社の土地紹介のサイトが人気ですが手数料は無料です。常識外と言われますが、無料だと条件のよい土地を不動産業者が優先に出しますし、成立した場合の契約は当社の住宅展示場でお願いしています。土地を購入した方は家を建てる可能性が高いので、お互いにメリットがあります。

──　トップとして柔軟な発想と決断が必要ですね。

瀬口　業界の常識にとらわれず、さまざまな分野を学び続けることを心掛けています。例えば若い女性と話すとほとんどテレビは見ずにＹｏｕＴｕｂｅに強い関心がある。そこで建築した各種住宅の紹介をＹｏｕＴｕｂｅで行っています。予想をはるかに超えて視聴されており、しかも年代や性別まで分析できますからマーケティングとしても最適です。

──　住宅着工件数の減少が予想されますが、採用に積極的ですね。

瀬口　今年48人、来年は58人の採用予定で、従業員数は約３００人になります。近年、会社の知名度が上がり、新卒でも中途でも優秀な人材が集まっています。中長期的に住宅着工件数がどれほど減少するかシミュレーションしていますが、実はそれ以上に工務店数、現場の職人（大工）が減る割合が大きい。営業やデザインだけでなく、職人をどう確保して育てるかは避けて通れない課題です。

強防水塗料に注目し水害対応を共同研究

──　２０１６年の熊本地震では県内各地の建物被害が甚大でした。

瀬口　それまで熊本は地震が少ない県だと行政も住民も思い込んでいました。当社の住宅はお客さまが希望しなくても素材に耐震ボードを使うなどして地震対策を行ってきました。当時、熊本県内に当社の住宅は２千棟ほどありましたが倒壊物件はゼロ。お客さまから「命が助かった家」と感謝され、この仕事をやってよかったと心から思いました。

──　水害も多発しています。住宅メーカーとして対応策は？

瀬口　今年の水害で大きな被害が出た熊本県人吉市などを訪れるとわかりますが、危険と思われる場所に住宅を建てざるを得ない事情があり、こうした例は全国に無数にあります。

　現在、注目しているのは特殊な塗料です。生卵に満遍なく塗ると２年間、中身がほとんど変化せず、割ったらそのままの生卵なんです。これを建設資材に応用できないか。水害に遭っても再建が（容易に）可能な住宅ができないかと、共同研究を開始したところです。これはぜひ実用化したいですね。

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