経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

北海道銀行の人材とネットワークを生かし地域の課題解決を図る―北海道銀行

北海道銀行では2020年1月、融資取扱店全店に相談窓口を設置し、融資の決裁権限を拡充するなど、企業への資金繰り支援策に注力してきた。「地銀として地場企業の課題解決に、人材とネットワークを駆使して応える」と語る笹原晶博頭取に話を聞いた。

笹原晶博・北海道銀行頭取プロフィール


(ささはら・まさひろ)1957年生まれ。79年北海道大学教育学部を卒業し北海道銀行入行。2003年取締役執行役員、06年取締役常務執行役員、10年副頭取を経て、15年頭取に就任。持株会社ほくほくフィナンシャルグループの副社長も務める。

企業の資金繰り支援を拡充

―― 新型コロナウイルス感染拡大による北海道経済の現況は?

笹原 北海道経済は全国的な緊急事態宣言が出された2020年4~6月に大きく落ち込みましたが、7月以降は緩やかに持ち直し基調で推移しています。個人消費は政府による特別定額給付金や緊急事態宣言解除に伴うペントアップ(先送り)需要の顕在化などが押し上げ材料となり、6月以降は底離れしました。

 観光ではインバウンドが依然厳しい状況ですが、「どうみん割」や「GoTOトラベル」などの政府・自治体による各種対策を受けて、道内客や道外客の回復が見られます。

 設備投資については、大型投資案件が一巡したことに加え、景気の先行き不透明感の強まりなどから、新たな投資意欲が減退するなど弱い動きとなっています。一方、巣ごもり消費を受けて、流通業の一部の企業などが堅調に推移しているほか、非接触を確保するためのデジタル・IT投資も活発化しています。

 これからの状況については、コロナ感染拡大と収縮を繰り返す場合は、人の往来や接触などの制約により景気の回復テンポは遅れるでしょう。企業業績の悪化が表面化、深刻化し、従業員などの所得にも下押し圧力が加わり、個人消費も本格的な回復は難しくなります。

 一方、コロナ終息の兆しが見えてくれば、観光業を筆頭に北海道経済は回復スピードを取り戻すでしょう。特に21年は東京オリンピック・パラリンピックの一部種目が札幌市で開催されるほか、体験型観光の世界会議「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」など国内外に北海道の魅力をPRするイベントが予定されています。

―― コロナの影響を受ける企業への資金繰り支援の取り組みは?

笹原 当行では20年1月から融資取扱店全店に相談窓口を設置するとともに、すべての取引先に面談し、1万3千件以上の状況をヒアリングしました。早くから資金繰りに影響が出ていた企業へは速やかに融資を実行するため、支店長の決裁権限を拡大。また、返済条件の見直し相談にも柔軟な対応を徹底しました。日本政策投資銀行や地域経済活性化支援機構などと連携したファンドの活用スキームも用意しています。

 民間金融機関での実質無利息・無担保融資の取り扱いが可能となったのはゴールデンウイーク以降ですが、連休期間中も相談窓口を設置するなど企業の資金繰り対応に全営業店で取り組みました。コロナ関連の資金繰り支援としては10月末までで6800件以上実行しています。

―― 資金繰り支援以外の取り組みを教えてください。

笹原 1つ目はデジタル化への対応です。ステイホームやソーシャルディスタンスの取り組みにより、来店不要のサービスが拡大しています。当行もスマホアプリの充実やインターネットバンキングの即日利用を可能としました。個人のお客さまについては定額給付金の支給が開始された5月以降、申し込みが急増しています。

 21年1月からは札幌市中央卸売市場における水産取引の一部資金決済について、現金決済から銀行口座振替に変更されます。卸売市場の資金決済がキャッシュレス化されるのは全国初で、コロナ禍で市場取引における決済の常識が変わりました。今後も企業の生産性向上につながる取り組みをサポートしていきます。

 2つ目は医療従事者を応援するための募金口座を20年5月に開設し、北海道庁を通じて寄付を募っています。9月末までに1千件以上の個人・企業から3千万円以上の募金があり、2回ほど寄付を行いました。また、職員からも寄付を募り、札幌市内で感染患者対応している病院に弁当の差し入れも行いました。

 3つ目は、ビジネスマッチングの強化です。北陸銀行が導入済みのビジネスマッチングシステムを当行でも7月より稼働しています。両行の取引先が抱えるさまざまなビジネスマッチングニーズに対して、解決に向けた提案をスピーディーに行うことが可能となりました。

 9月末時点で3カ月で蓄積された閲覧可能な情報は約150件に及び、両行がZoomや行内テレビ会議システムを活用してビジネスマッチング会議などを行っています。

地場の課題を解決する地銀としての存在意義

―― 菅総理大臣は地方銀行の数が多すぎると話すなど政府主導の地銀再編が動いています。北海道銀行ではほくほくFGを軸にさらなる再編・提携に動くのでしょうか?

笹原 低金利環境の継続で資金利益の増加は期待できず、地方は人口減少が進むことから地域経済は縮小し、地方銀行の収益環境は厳しい状況が続きます。もっとも、北海道の総生産額は19兆円程度と全国8位です。地方銀行も現在は2行に減っています。それぞれが切磋琢磨することでお客さまによりよい選択肢を提供しなければなりません。

 また、ほくほくフィナンシャルグループは飛び地の経営統合ですが、それぞれの特徴を出しながら地域に貢献しつつ、同時に効率的で効果的なシナジーの発揮を目指しています。さらなる再編や提携については、将来志を共にする銀行が現れれば、十分検討できるはずです。しかしそれ以前に、既に拡大しているシステムの共同運行や外為業務の共同運営など他銀行との連携による効率化、経費削減に取り組むことも重要です。

―― 超低金利時代に果たすべき銀行の役割、また生き残り戦略は?

笹原 いつの時代も地域や地場企業の課題は尽きることはありません。資金のみならず、事業承継・M&A、販路開拓・新規事業展開などの成長支援、財務戦略構築、人材育成・採用、経営合理化・効率化、経費削減・生産性向上などの課題解決に銀行の人材とネットワークを駆使して応え、適正な利息とフィーを頂戴します。他行との差別化こそが生き残り戦略だと思います。

 さらに地域での暮らしを豊かにするサポートも重要な役割です。資産運用・形成は低金利時代であるからこそ、中長期の視点で取り組まなくてはなりません。当行はフェイス・トゥ・フェイスでの強みを発揮することで、よりよい提案に努めていきます。