経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

次世代医療の要となる遺伝子導入の基盤技術を開発―再生医療iPS Gateway Center



断裂した靱帯組織の再生医療に関する研究で着々と成果を上げている再生医療iPS Gateway Center。もう1つの開発のパイプラインとして進めてきた次世代型ウイルスベクターの研究開発も佳境に入り、その完成が最先端医療に取り組む研究者からも待たれている。

再生医療iPS Gateway Center社長 西野高秀(にしの・たかひで)

再生医療と遺伝子治療2つのパイプラインに注力

 交通事故やアスリートのけがなどで生じる靱帯の断裂は、自然治癒力が機能しないため治療に際しては外科手術と長期にわたるリハビリが必要となり、患者への負担も大きい。

 こうした課題を解決する新たな治療法の開発を目指す西野高秀社長は、野村證券を経て30歳で起業し、VC顧問を経て2007年に日本初のクラウドサービスとICTに特化した動物病院「アニクリ24」を設立。さらに、同年日本から報告されたヒトiPS細胞を用いた再生医療の実用化を志向し15年に現在の会社を創業した。

 「当初はiPS細胞を活用した治療での社会実装を検討していましたが、慶應義塾大学医学部の中村雅也教授との共同研究の過程で実効性を優先し、今回の開発に至りました」

 現在、同社が開発を進めているのが脂肪組織由来間葉系幹細胞のシートを用いたACL(膝前十字靭帯)再建術だ。

 「これまで慶應義塾大学との共同研究で、ウサギの腱の靱帯で合計88例のACL再建術を実施した結果、再建した靱帯組織の強度の維持、骨との接合の促進や手術時に骨に空けた穴の拡大の抑制、さらに再建した靱帯組織の強度の増加といった顕著な効果が確認されました。既に特許出願も済ませており、今後は人を対象にした治験を行い、有効性を確認したいと思っています。中日ドラゴンズの投手として活躍された山本昌さんもわれわれの研究に関心を持って当社までお越しになり、その開発に大いに期待を寄せていただきました。将来的には、投手が肘の靱帯損傷手術を受ける際に行われるトミー・ジョン手術にも適用できればと考えています」

 プロアスリートも関心を寄せるこの靱帯治療に関する研究開発が着々と進む一方、同社はもう1つのパイプラインとして再生医療や遺伝子治療の基盤技術である遺伝子の運び屋(ウイルスベクター)の開発に取り組んでいる。その鍵を握るのが、日本発の画期的な発見であるセンダイウイルス(SeV)だ。

 1953年に東北大学の石田教授によって発見されたSeVを、同社独自の技術によって改変した次世代型SeVベクターは、今後の再生医療や遺伝子治療の研究開発を促進する上で大きな可能性を秘めているという。

 「わが国の遺伝子治療分野は世界から見てかなりの後れを取っていますが、その要因の1つがウイルスベクターの基盤技術を提供する企業が非常に少ないことです。遺伝子治療薬を開発する際には、どのウイルスベクターを選択するかが非常に重要になりますが、その分野に関する知見が不足しているので開発に最適化したベクターを提供したいですね」

 もともと、遺伝子導入効率が高く原理的に遺伝毒性が少ない等の理由から、SeVベクターはiPS細胞作製時に活用されているが、同社が開発する次世代型は既存のSeVベクターが抱える問題を一気に解決し、ベクター自体の遺伝子発現量・製造方法の改変等、多くの優位性を有する。この次世代型SeVベクターについても年内には特許を出願する予定だ。  

日本のバイオ業界全体の底上げを目指す

 2020年10月には、慶應義塾大学大学院医学研究科委員長を務め、同社の取締役にも名を連ねる岡野栄之教授と新型コロナウイルスに対するワクチン開発にも着手した。歴史の中で何度となく繰り返される感染症に対する国産ワクチンプラットフォームの構築を図るという。

 「強い抗原性と高い導入能力を活用して、さまざまな病原体に対するワクチンプラットフォームを確立すれば、ウイルスの変異にも次のパンデミックにもスピーディーに対応できるようになります」

 遺伝子治療薬の国内市場は03年には8500億円、40年には1・1兆円に達する見込みで、日本政府も集中的かつ計画的に講ずべき医療分野と位置付け、世界水準の研究開発推進計画を進めることを昨年閣議決定している。その取り組みの1つとして打ち出されているのが、遺伝子治療に関する安全で高生産かつ安価な国産ホスト細胞樹立および標準的なウイルスベクターの構築である。政府も政策として後押しするこれらの分野について、西野社長は長期的な視野で将来を見据えている。

 「低分子化合物である薬の開発が主流であった時代から、治療不可能と言われてきた疾患に対する再生医療や遺伝子治療へと世界の医薬品開発はパラダイムシフトしています。次世代医療の分野で日本が後れを取れば、今後提供される先端医療費の大半を海外への知的財産使用料として支払うことを余儀なくされます。まさに今、日本が早急に挑戦しなければならない課題だと思います」

本社内に設けられたラボでは研究者が日夜開発に取り組む

会社概要
設立 2015年5月
資本金 1億円
利益剰余金 9億1,549万円
所在地 東京都渋谷区
事業内容 次世代型遺伝子発現ベクターの開発、靭帯の細胞療法の開発
https://www.rmic.co.jp

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