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「みんなの得意を売り買いしついに果たしたマザーズ上場」―鈴木 歩(ココナラ社長)


インタビュー

デザインや動画制作から語学レッスン、ファッション、占いまで、個人の経験・知識・スキルを気軽に売り買いできるオンラインのスキルマーケットを展開するココナラ。コロナ禍で利用者を増やし、3月19日には東証マザーズに上場も果たした。鈴木歩社長が描く未来像とは――。聞き手=ジャーナリスト/松崎隆司(『経済界』2021年6月号より加筆・転載)

鈴木 歩・ココナラ社長CEOプロフィール

鈴木 歩(ココナラ社長)
(すずき・あゆむ)1982年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、リクルートに入社。事業部門にて商品企画、営業、事業開発を経験したのち、リクルートホールディングスにて海外経営企画を担当。2016年5月よりココナラに入社、17年に取締役となり昨年9月社長に就任した。

個人のスキル、経験・知識を提供するココナラ

―― コロナ禍の中で多くの企業が苦境に立ち、個人の生活が脅かされていますが、ココナラにとってはどのような年だったのでしょうか。

鈴木 コロナ禍の中で多くのユーザーに注目していただきました。非対面非接触が求められる中で、オンラインでのプラットフォームを嗜好される人が少なくありませんし、出品者側の中には今後の所得の先行き不安で、稼ぐためのチャネルを見つけたいという人が増えています。緊急事態宣言が昨年発令されてから、4月に出品者が登録を加速し、それから1カ月後に購入者の登録が増え、利用率も上がっています。

 2020年8月期通期と21年8月期第一四半期は、いずれも前期に比べてココナラのサービスの流通高(各期間中に納品が完了したサービス購入金額総額から、販促費を除いた金額)や営業収益は60%近く伸びていますし、3月19日に東証マザーズに上場しました。

―― ココナラのビジネスモデルはどこから生まれたのですか。

鈴木 ココナラの創業者たちは当初、ヘルスケア事業をやろうとして、管理栄養士にヒアリングをしていたら、「普段から病院や学校にはいろいろ助言しているが、私の持っている知識や経験をもっといろいろな人に提供していきたい」と言う話をされたそうです。

 これをきっかけに「ヘルスケアに限定する必要はあるのか」「世の中に何らかの貢献をしたいと思っていても行き場がない人がたくさんいるのではないか」という疑問に行きあたり、個人のスキルや経験、知識を必要とする人や企業などに提供するマーケットプレイスをやることになったのです。

―― ココナラの大事にしている価値観とは。

鈴木 私たちは今後、個人が社会と直接つながっていくようになると思っており、その中でさまざまな選択肢を提供していく会社でありたいと考えています。自分のことを信じて、今がんばりたい、世の中とつながりたいと思っていたときに、バッターボックスに立てる状態を作っていきたいのです。

―― 鈴木さんは昨年9月1日付で社長に就任し、創業者で会長に就任した南章行氏と二人三脚で経営を担っていくことになりましたが。

鈴木 私は5年前に入社してその1年後には取締役COOに就任しています。4年前からプロダクトマーケティングや経営企画という事業全般の意思決定を私が、コーポレートガバナンスを南が担当するというすみ分けが既に出来上がっていました。いずれは社長にといわれていましたが、IPOを前に実態に沿った体制に変えた方がよりスピーディーに経営判断をすることができ、投資家の皆さんにも分かりやすいのではないか、ということで私が社長、南が会長になり、2人で代表取締役を務めることになりました。

 南はよく「攻めは鈴木、守りは南がやる」といっていますが、代表取締役2人のすみ分けがしっかりできているとコーポレートガバナンス上もいいのではないかと思っています。

ココナラが目指しているのはサービス版アマゾン

―― 中長期戦略はどう考えていますか。

鈴木 われわれは「サービス版のアマゾン」になりたいと標榜しています。これはビジネスモデルをまねるということではなく、困ったときにそこに行きさえすれば、すべてがかなう会社にしたいということです。日用品だったらアマゾンに行けばなんでもあります。だれかの力を借りたいと思っている人にはココナラにいけばすべてのサービスが整っている状態にしたいわけです。

 こうした大きなテーマに対する事業戦略としては3つのことを掲げています。まず第1にこれまでココナラでやってこなかったサービスの提供です。ココナラでは非対面のマッチングというサービスを提供していますが、納品が行われるまでにいろいろなものが必要となります。そこで電話、ビデオチャット、テキストチャット、さらに対面型のサービスなども提供していこうと、ココナラミーツを立ち上げました。

 第2にカテゴリーの拡張です。ココナラでは生活系から相談系、プライベート系からビジネス系までいろいろなカテゴリーを広く手掛けてきました。しかし逆に専門的に特化した方がいいものは専門的なカテゴリーとして独自のプラットフォームを立ち上げる。例えばココナラ法律相談がそうです。さらに上場もしたので、さまざまな種類のファイナンスも活用して、提携なども視野に入れながら事業を拡大していきたいと思います。

 3つ目としてはマッチングの手法です。これまでは1対1のオーダーメード型でした。出品者さんが依頼者の要望を聞いてカスタマイズして提供するという形でしたが、スキル、経験、知識は常にカスタマイズする必要があるわけではありません。そこで昨年からコンテンツのマーケットプレイスを立ち上げ、自分のスキル、経験、知識をあらかじめ記事や動画、楽曲にパッケージ化して、それを不特定多数に販売できる機能を提供しています。

 またココナラはこれまで個人の利用が多かったのですが、中小企業の方々の利用が増えてきているので、そのような方々のココナラ利用を促進するサービスを提供していきたいと思っています。