経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「ゲームで課題解決力が身につく。eスポーツが当たり前の社会へ」―影澤潤一(NTTe‐Sports副社長)


インタビュー

複数のプレーヤーがコンピューターゲームで対戦する「eスポーツ」を新たな事業領域としてとらえ、NTT東日本は2020年1月、子会社NTTe‐Sportsを設立した。同社の副社長に抜擢されたのは、ゲーム業界で有名だったNTT東日本の社員・影澤潤一氏だ。趣味から転じて経営者へ。eスポーツ事業の課題と展望を聞いた。聞き手=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2021年6月号より加筆・転載)

影澤潤一・NTTe‐Sports副社長プロフィール

影澤潤一・NTTe‐Sports副社長
(かげさわ・じゅんいち)1979年、東京都生まれ。2004年に筑波大学大学院理工学研究科を修了し、NTT東日本に入社。20年以上前から、仕事の傍ら格闘ゲームを中心としたコミュニティーイベントの企画などを手掛けてきた。

ゲーム業界で有名人だった影澤潤一氏

―― 影澤さんは趣味でゲームをしていて、以前からその界隈では有名な存在だったそうですね。ゲームにのめり込んだきっかけは何ですか。

影澤 中学生の頃、塾の帰りにゲームセンターで遊んだりしていたら、気が付いたら意外と強くなっていて。勝てるし、楽しいし、強い対戦相手がいるとワクワクする。そしてゲームを通じて学校外の友達ができました。年齢も住むエリアも違って、普通に学生をしているだけでは出会えないつながりがとても楽しかったです。

 その後、大学に進学してからは、ゲーム大会を開催するようになりました。するとそこでコミュニティができ、みんなで切磋琢磨しながら強くなる。その経験を通じて、自分が勝っても自分一人分の楽しさしかないけど、100人いたら100人が強くなった分の楽しみを感じられるというように、自分の中で価値観が大きく変わりました。それから本格的にゲームのイベントを企画するようになり、大手メーカーの公式大会を手掛けたこともあります。

―― ゲーム業界で有名になり、そのことがNTT東日本社内でも知られて、今回の副社長就任へつながりました。設立当時の澁谷直樹社長からはどんな声を掛けられましたか。

影澤 「NTT東として、いかに新しい分野を事業としてやっていけるのかがチャレンジだ。恐れずに好きにやってみたらいいじゃないか」というようなことを言われました。あとはNTT東の事業と親和性があるか。NTT東のミッションには、「地域を活性化する」というのがありますので、そこにどうeスポーツ事業を絡めていくことができるかですね。

設立から1年を経たNTTe‐Sportsの現状

―― 事業では収益性が求められます。eスポーツはまだ新しい市場でので、すぐに利益を出すのは難しくないですか。

影澤 20年1月に設立してから、5つの事業を立ち上げました。地方自治体の活性化にeスポーツを活用する「地域の活性化コンサル事業」、学校などでのゲーム活用を推進する「サポート・教育事業」、プレーヤーなどがコミュニティで交流したりプロ選手の動画配信などを行う「プラットフォーム事業」、eスポーツイベントの開催を支援する「イベントソリューション事業」、そして「eスポーツ施設事業」では2020年8月に秋葉原にコアとなる施設「eXeField Akiba(エグゼフィールド アキバ)」をオープンしました。会社設立から1年たちましたので、21年度ではある程度の成果を出さなければなりません。

 ただ現在のeスポーツ業界の状況を見ると、一足飛びにビジネスに直結するわけではありません。市場のポテンシャルは大きいけど、まだ発展途上で、マネタイズするまでには大きなハードルというか、越えなければならない山があります。そのためにも、まずはゲームに対するネガティブなイメージを払しょくして、音楽、映画、演劇などのエンターテインメントと同じくらいの位置にもっていかなければならないなと考えています。

―― ネガティブなイメージの払しょくに向けて何か計画はありますか。

影澤 実はゲームを通じて学ぶことは結構多いんです。私自身も経験しましたが、ゲームセンターでのコミュニティは社会勉強になります、またゲームそのものにもクリアするという目的があって、その目的を達成するために試行錯誤したり、計画を立てたり、課題解決の力が実は身についています。そういうところを学術的に、スポーツや演劇で得られることがゲームでも得られることを実証していこうとしています。

 ただ、これが直接収益に結び付くのかというジレンマはありますが、今はそういう社会的な基盤を作ることが、事業を進めやすくするための投資だと考えています。

楽しみながら学べるのがeスポーツの醍醐味

―― トッププレーヤーは指先などが鍛えられていそうです。

影澤 手先の他にも視覚、聴覚。あと一番使うのは脳ですね。脳波を取ると、「このシーンをプレーすると脳のこの辺りが活性化する。そこは状況判断をつかさどっているところだ」みたいなのが分かります。「このゲームをすると脳のこの部分が鍛えられる」というのをもとに、認知症の予防や発達障害の方のトレーニングにも使えるのではないかと考えています。

―― 例えば社員研修で、「管理職には耐ストレス性が必要だから、このゲームをクリアしてください」という使い方もできそうですね。

影澤 結局ゲームはシミュレーターのようなもので、クルマのゲームはクルマのシミュレーターですけど、ゲームによってはもしかしたら何かストレス耐性を鍛えるものになる。しかも楽しさを提供しながら何かができるということが、ゲームやeスポーツに期待されているはずです。

 eスポーツというと興行が注目され、それももちろん大事ですが、eスポーツやゲームが後ろ指をさされない、当たり前にする活動を会社としてやることが、NTTe-Sportsのミッションだと考えています。