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「消費税減税をやらなければ日本は衰退国家への道を歩む」―山本太郎(れいわ新選組代表)

インタビュー

「消費税を5%に」。5月末、国会議員有志による消費税減税研究会が議論をまとめ提言した。共同で会長を務めたのがれいわ新選組の山本太郎代表と立憲民主党の馬淵澄夫衆議院議員。25年間におよぶデフレからの脱却と、新型コロナも加わった日本経済の危機を跳ね返す処方箋として、これしかないとの主張だ。2019年参院選で自ら議席を返上して比例代表に回り、れいわ候補2人を当選させた山本代表の減税政策は筋金入りだ。Photo=幸田 森(『経済界』2021年8月号より加筆・転載)

山本太郎・れいわ新選組代表プロフィール

山本太郎
(やまもと・たろう)1974年生まれ。兵庫県出身。高校1年生の時に芸能界入りし、俳優、タレントとして人気を博す。2011年3月11日の東日本大震災の後、反原発活動を開始。13年7月参議院議員選挙に東京選挙区より出馬し当選。14年12月生活の党と山本太郎となかまたちに合流、15年1月共同代表就任。16年10月自由党に改称。国民民主党と自由党の合流には加わらず、19年れいわ新選組を旗揚げ。参議院議員選挙に比例区より出馬し落選するも、れいわ新選組の得票率が2%を超えたことから、政党要件を満たした党代表となる。

消費税は社会保障に寄与していない

―― 消費税減税研究会で1年7カ月かけた議論の末消費税5%が提言された。この会の責任者として今どんな思いか。

山本 消費税減税を考える場合、本当は0にするとか廃止するしかないと思っています。でも、一方で、永田町の中で消費税廃止をリアリティを持って考えることができる人は少ない。そうなると、どこかで減税については足並みを揃えないと前に進まない。

そこが一番歯がゆいところなんですが、まずは5%から始めようということです。私のような突飛な奴は尖った政策を考えがちだとは思うんですけど、研究会を一緒に立ち上げて、消費税減税を勉強してこられた馬淵澄夫さんがしっかり手綱を握ってくださったと思います。できるだけ多くの人から賛同が得られて、これならできるというところから形にしていくということです。

―― 消費税は社会保障の財源と位置付けられてきたが、減税しても社会保障に影響はないか?

山本 それは消費税を正当化するためのプロパガンダだと私は思っています。例えば、消費税収のうち社会保障に使われていると明確に示せるものは、恐らく基礎年金の半分くらいで、それ以外は何に使っているか明確にできていない。2019年、安倍政権のときに総理は国会の施政方針演説で、増税した税収の8割くらいを借金返済に使ったと白状していますからね。

社会保障に使うというのはあくまでも建前なんですよ。直間比率を見れば、もっと分かりやすい。消費税は最初3%からスタートしましたが、それ以降は消費税が上がるたびに、法人税も所得税も下げられています。その数字だけ見ると、消費税は所得税、法人税の穴埋めという考え方でしかないことが分かります。つまり、社会保障の財源のための消費税というのは成立していないんです。

―― 社会保障には寄与していないということか。

山本 逆に、消費税を上げてきたことによって、さらに日本の経済が弱ってきたのがこの25年のデフレなのかなと思います。デフレのときに消費税を上げる国なんてないですよ。そのインセンティブを得ているのは、一部の大企業だったり、金持ちだったりで、法人税や所得税の税率を下げた分の穴埋めに使われているということですね。

企業経営者が自分たちの懐をより温めるにはどうしたらいいかを考え、主張するのは当然ですから、経団連がけしからんとは思わないです。でも、国全体を考えた時に、何を政治が選択するかは別の問題です。一部から言われるがままの形にしていったら、当然、国は壊れていくわけですよね。25年間のデフレは、政治の責任だと思います。

―― そもそも法人税を下げることは経済政策としてどれだけの効果があるのか。

山本 法人税を下げることで日本の企業が競争力をつけていくというイメージはあると思いますけど、果たしてそうなのか。実は、経産省が企業に海外進出についてアンケートをとったのですが、「現地で需要が旺盛、さらなる需要が見込まれる」が圧倒的に多い理由でした。そして、「税制や融資など現地で優遇制度があるから」と答えたのはわずか8%ぐらいで、ずっと下位の8番目の理由だったんです。企業は税制優遇よりも需要が第一で、それを求めての海外進出だと答えているんです。

―― 企業は税制優遇よりももっと直接的な需要に主眼を置いていると。

山本 日本の内需がどんどん失われていることを考えると、当然ですが需要のエンジンをいかに動かすかを考えるべきです。にもかかわらず、消費税率を上げるという内需が弱って行く政策をとった。一部の人に還元される利益はあるが、全体的な利益はなくなっていく。だから25年間成長が止まっています。

消費税減税はコロナ前にやっておかなければいけなかったけど、今やコロナも重なって悲劇的な状況です。消費税減税をしないともはやどうしようもない状態に追い込まれると思います。日本の生産能力や供給能力はまだ高いので、今ならまだやれます。このまま、需要の喪失が続くと、今ある供給も失われ、本物の衰退国家になってしまうということです。

山本太郎
「消費減税をやらないと日本は衰退国家になる」と主張する山本氏

政治テーマとして消費税減税は分かりやすい

―― そのためには消費税減税だけでなく、やはり財政出動も必要では?

山本 デフレの原因は消費税だけではなく、政府が財政出動をやってこなかったことも大きいです。25年間のデフレという、先進国では日本にしかないような状況が起きているのは、処方箋が間違い続けているということ。当然、消費税減税以外に積極財政をやっていく必要があると思います。もちろん、インフレへと振れ過ぎないように、例えば法人税を累進税にするとか、所得税も累進性を強めるとか、総合課税にしていくといった、税制改革も必要です。

―― 消費税減税は次の総選挙の争点にできるのではないか。野党各党の共通公約にすべきだと思うが。

山本 野党の中には消費税が必要だと考える人もいらっしゃる。しかも、その方々が野党の中でもキーマンだったりします(笑)。私が消費税減税にこだわる理由の1つが、政治テーマとして訴えるときの分かりやすさなんです。他の政策よりも、有権者に対しての説明が非常に端的に済む。私は、街頭などで有権者のみなさんに、野党側が政権交代したら何が起こると思いますかとよく問い掛けます。消費税廃止なら毎日が10%オフ、1カ月20万円支出している家庭は、年間20万円を手元に置けることになる。あなたを支えるお金を増やせるんだと。

過去の選挙の世論調査を見れば分かりますが、投票先を決める大きな要因は、目の前の生活です。明日の自分がどうなるのかということに対して、何をしてくれるのかということ。それを考えると消費税減税は説明しやすいし、何が起きるかが分かりやすい。朝起きて仕事に行って家に帰るまでに、多くの人が1回は払っているのが消費税ですから。

私は、原発への問題意識から政治の道に入ったんですが、時間がたつごとに原発に対する世間の問題意識が薄れていくような感覚を持っています。誰しもが共通して問題意識を常に持っているのは、まさに生活であり、それに関わるお金の問題ということになります。そこを政治の入り口にするというのは重要ではないかと思います。

―― 生活に直結していて、それを日本の経済政策につなげて論じることはとても分かりやすい。

山本 個人だけでなく、中小企業に対しても消費税は大きな負担です。赤字でも払わなければいけないし、税滞納の6割が消費税となっています。こうしたことも、消費税が選挙を戦う旗として非常に理解されやすい部分だと思います。

中小企業で言えば、消費税には働き方を壊すという側面もあります。消費税納税額を下げるために、例えば仕入税額控除というのがあって、企業は正規で人を雇うよりも非正規で穴埋めするほうが納税額が低くなるんです。こうした点でも、多くの人々に消費税の問題点は理解されやすい。5%で野党が折り合いをつけて、一人一人の生活を立て直し、日本経済を建て直すしかないと思います。

野党は今やらずしていつやるか。コロナが明けた後に抜け殻みたいになって、もう一回やり直そうと言っても立ち上がれない個人や事業者が多数残されることになります。とにかく、消費税減税によって、これまで引き上げのたびに消費が減少してきたその逆が間違いなく始まります。消費に対するブレーキを解除するわけですから。社会にお金が回って行き、結果的に税収も上がります。

全国を回って感じる人々の政治不信

―― 新型コロナ対策についてはどんなことが必要か。

山本 とにかく、徹底検査しかないと言ってきました。無症状で感染させる人たちを先に把握していくしかない。その一握りの感染者をしっかり保護して、隔離の代わりに所得のカバーやボーナスをあげるくらいの勢いでやらないといけなかった。日本と同じような島国は天然バリアがあると言っても良く、オーストラリア、ニュージーランド、台湾など、どこも抑え込みに成功していますよね。市中感染ゼロが普通で、そこにたった4人程度の感染者が出てもロックダウンを徹底してやっています。

感染症に対してやることは明らかなのに、日本ではそれができていない。ワクチンがあれば何とかなると、それを目標にしてしまったことが誤りかもしれません。ワクチンは治験が進まないとどれだけ効くか分からないし、欧米人に効いても日本人には効かないかもしれない。ワクチン戦略を出口に置くことは失敗の可能性もあるんです。だから、徹底した検査と保護という部分で、収めないといけませんでした。

―― 最後に、選挙に向けてれいわとしてどう挑むか。

山本 秋までに行われる総選挙と来年の参議院選挙で、日本の行く先が決まってしまうと思います。かなり緊張感をもって挑まないといけません。

―― 山本代表は全国を行脚しているが、手ごたえはどうか。

山本 日本は広いですね。回りきれないです。緊急事態宣言やまん延防止があるので、それを見ながらスタッフ全員がPCR検査を受けながら回っています。コロナになってからの街宣はほぼゲリラ。本当に、たまたま通りかかった人たちが意見をくださるし、動員ではないからよりリアルな声が聞こえます。

やっぱり政治には頼れないという空気になっていますね。新型コロナにしても、みなさん自分たちで何とかするしかないんだと。あなたたち政治家がどうにかできるわけじゃないでしょと。本当なら政治は生活と直結しているにもかかわらず、政治をすごく遠くに感じて、関わりたくもないという人たちが非常に多い。そういう政治不信を生み出したのは当然政治家の責任です。

れいわへの支持が与党と野党へのプレッシャーになる

―― 野党の結集については?

山本 永田町で、ここまでの積極財政や消費税減税を掲げているのは私たちくらいです。ここにどれくらいの支持が集まるかは、与党へも一枚岩になれない野党へもプレッシャーになります。このチャンスを生かして、衆議院で野党に多数派を獲ってもらいたいのが正直な気持ちです。

野党は統一名簿でもいいと思っていました。この激動の時期に、統一名簿で自分たちが議席を取れなかったとしてもいいと思っていた。もし、そこがうまくいかないのなら、自分たちの議席を増やすことに専念しなければならないと思っています。

野党が結集しやすいようにと消費税5%での提言を呑んだ山本代表。「自分は尖っているがこんな形にまとめられたのは馬淵さんのおかげ」と話した。馬淵氏は山本代表と野党各党との接着剤の役に徹してきた。一方で、既存野党にとって、前回の参院選でれいわ旋風を巻き起こした山本代表について「その発信力は来る総選挙で野党共闘の柱としてどうしても欲しい」(立憲民主党幹部)ところだ。消費税減税で野党は一つになれるか。経済政策にとどまらず政党再編などにもつながる局面を迎えている。(鈴木哲夫)