地元資本の住宅メーカーとしては九州で建築棟数トップクラスのシアーズホームグループHD。1989年の創業以来、社員の人間力アップで顧客のニーズをつかみ、近年もコロナ禍を乗り越えて業績拡大を続けている。
現状維持は衰退と同じ 成長こそが社員の幸せ
人口減少・少子高齢化、景気低迷、加えてコロナ禍……経営者にとって業績不振の「言い訳」はいくらでもあるが「現状維持は衰退と同じ。経営者として『がまだし』(頑張って)成長を常に目指したい」とシアーズホームグループHDの丸本文紀代表取締役は声を上げる。
「Smart Growth(賢明なる成長)」を掲げる同社の2021年4月期の売上高は前期比約37億円増の230億円。今期は260億円を見込む。「2年後には300億円を超え、10年後は1千億円企業を目指す。社員の満足度を高め、地域のスポーツ・文化などの支援を続けるためには成長は不可欠」と手綱を緩めることはない。
今期の完工棟数は前期を193棟上回る1030棟の予定。この数字を支えるのが同社の「松竹梅戦略」だ。顧客が自らの資金計画に合わせて、自由設計で高気密・高断熱の高級住宅(2300万円以上)から低価格の建売住宅(1500万円程度)まで200万円単位で選択できる。
今期、新たなブランド「育hug:(ハグ)」も立ち上げた。コンセプトに「家族が一つになって楽しめる空間と、パパやママがそれぞれ仕事や家事、趣味に使える隠れ部屋空間」を盛り込み、高価格住宅として天然素材をふんだんに使っている。一方、家族が自由な発想で活用できるガレージを備えた家もあり、コロナ禍を経て変化する日常生活やビジネススタイルにも柔軟に対応している。
DXを活用しながらリアルとフィジカルを重視
「DXは大きな武器で積極的に導入しているが、それだけでは限界があり業績拡大とはならない。『リアルとフィジカル』の充実こそ大切だ」と丸本氏は説明する。
まずYouTubeやインスタグラムなどDXを駆使したバーチャルな世界で集客し、熊本、福岡、佐賀3県にある展示場に誘導する。ここからは営業の「リアル」な作業となる。「顧客に直接対応するわけだが、展示場で接客してからが勝負。お礼やその後の様子伺いなど最低でも3回は自筆の手紙を書いて、つながりを保つ」よう指示する。完成後も担当した住宅が水害に遭ったと聞けば自主的に訪問して、家財道具の運び出しや清掃する営業マンもいる。
フィジカル(作業)はまさに、施工・建設の分野だ。熊本県の大工の平均年齢は60歳前後で職人の確保は大きな課題となっている。「自社で職人教育も行うシアーズアカデミーを設けているが、施工のマニュアル化などの効率化にも取り組んでいる。現場では女性も増えてきており、真面目で好評だ」と目を細める。
親孝行手当で感動を知りキャリアプランでやる気に
「これまで育てていただいてありがとうございました」と両親の前で正座して頭を下げ、贈り物を差し出す新入社員。母親の多くは涙を流し父親は照れる。事情があり祖父母に育てられた社員もいるが、孫の成長した姿に喜びもひとしおだという。
同社では新卒新入社員が初めて受け取る給与に「親孝行手当」の2万円を加算。「正座し、お礼を述べ、贈り物を渡す」行為は丸本氏の案だ。「感謝されることで、それを上回る感動がある。お客さまも同じ。『愛』が通い合う関係を築くことができる人間力こそ企業の源だ」。
成長を支える社員数もこの1年で約70人増えて530人となった。「公平な人事評価を基本にしているが、社員教育は難しい」と語る。声も大きく強力なリーダーシップが印象的な丸本氏だが、毎年実施している社員満足度アンケートを分析するなど、細やかな目配りも欠かさない。
地元の大学で講演を依頼された際、学生に「自分の生活は今後、今よりよくなると思うか?」と質問すると、9割の学生は手を挙げないという。「今の若者は夢を持てないのか。希望を持つ教育を受けてないのか」と危機感を示し、「企業が若い社員に対して何年頑張ってこの地位になればこんな暮らしが実現できる、といったキャリアプランを示すことが必要になっている」と話す。社員のやる気は業績に直結する。
19年に新築した本社最上階には社員食堂があり、雄大な阿蘇山を望むことができる。日替わり定食は400円。サラダは食べ放題で、無料で青汁も飲める。「社員の健康が第一。座右の銘は『人生すなわち努力、努力すなわち幸福』。仕事への甘えは許さないが、社員育成に労は惜しまない」と言い切る。
会社概要 設立 1989年1月 資本金 1億円 売上高 230億円 所在地 熊本県熊本市南区 従業員数 グループ総数530人(2021年10月1日現在) 事業内容 住宅建築事業、住宅リフォーム事業、公共工事事業、不動産事業、環境事業 https://searshomegroup.co.jp |
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