スマホアプリと連動する「スマートランドリー」、洗剤を使わず99.9%水のアルカリイオン電解水「wash+Water」で洗うなどコインランドリー業界に革命を起こしてきたwash-plus。その革命はいまだとどまるところを知らない。
異業種との実証実験が技術的な進化を加速
「昨年9月、洗濯機や乾燥機とスマホアプリとの連携に関わる『スマートランドリー』の要となる特許を取得しました。この特許はコインランドリー業界にとって衝撃だと思います」と説明するのは、「コインランドリーwash+」を展開するwash‒plusの高梨健太郎代表。
同社は社員13人のベンチャー企業だが商標や特許など知的財産戦略に注力し、申請中を含めるとその数は20を超える。その知的財産を生み出すのが、「スマートランドリー」と「wash+ Water」など新しい技術を開発する過程で行ってきた実証実験である。そこから得た技術や結果が知的財産となり、特許申請へとつながっていく。
「今年3月から浦安の実店舗で実証実験を始めたのが、洗濯排水をろ過、殺菌し洗濯に再利用する循環型の『排水レス』コインランドリー。ろ過が難しい洗剤を使わない当社だからできる仕組みで、開発のきっかけは東日本大震災の時に浦安市で起きた液状化現象により上下水道が約1カ月間使えなくなった経験にあります。災害時には生活に必要な洗濯を担い、普段は環境に優しい社会貢献型タイプで、実証実験では地域の方々にモニターとして利用してもらいながら衛生レベルやコスト、再生水への消費者心理を確認、ビジネスとしての精度を上げていきます」
同社はこれまで開発から実証実験まで、専門的な技術を持つ異業種の企業と協業を行ってきた。「スマートランドリー」ではクラウド、スマホアプリの開発会社、「wash+ Water」では工業用イオン水メーカー、「排水レス」では濾過機器と殺菌機器メーカーなど、協業の度に新しい技術やサービスが追加され、同社のコインランドリーは進化している。
「協業企業の持つ専門技術をコインランドリー向けにブラッシュアップし、それにコインランドリーメーカーを加えた協業全体のプロデュースが当社の得意とするところ。最近では大手企業との協業も増え、シャープのロボット型スマートフォン『ロボホン』もその一つ。『ロボホン』のAIやコミュニケーション機能を活用したコインランドリーも開発中です」と高梨社長は次の実証実験も視野に入れている。
ホテルや企業のニーズを製品開発に生かす
同社はコインランドリー事業で培ったノウハウを応用し、ホテル向けランドリーへの展開を検討中だ。
昨年放映されたテレビの情報番組での紹介をきっかけに、環境や人体に優しい洗剤レスのランドリーシステムの価値観はホテルや施設からも共感を得られるとのヒントをもらい、ホテル特有のニーズの研究を進めた。しかし、実際の導入となると通常のコインランドリー店舗とは違い、設備の制約やホテルのコンセプトに合ったタイプを開発する必要が出てきた。
「設備上ガス管やダクトの増設が難しいためガス衣類乾燥機が使えず、館内の電気設備も100V仕様でした。今回はホテルのニーズに合わせて世界有数の洗濯機、衣類乾燥機のメーカー、エレクトロラックス・プロフェッショナル・ジャパンと協業し、設備の仕様だけでなく、ホテルのコンセプトにも合ったデザイン性の高いコインランドリーを開発しました」
実際、100V仕様のタイプはビジネスホテルなどで使われているが、家庭用洗濯機と衣類乾燥機がベースで、デザインも白が基調で操作も分かりづらい。また、コイン式のため両替機の設置が必要となる。
「非日常を楽しむホテル内で家庭用の洗濯機を両替して使うことはあまりにも日常を感じさせます。非日常空間を醸し出すデザイン、外国人宿泊客でも簡単に使えるキャッシュレス、100V仕様というニーズに合わせることで、当社のコインランドリーはまた進化したのです」
今回の新タイプが注目されるのは、ガス配管やダクトが必要なガス乾燥機が使えない室内でも後付けで設置できることにある。「コインランドリーwash+」は商店街やロードサイドといった屋外からホテルのような室内へと市場が広がった。
「洗剤を使わない『wash+ Water』ですから、医療・福祉施設などに設置すれば敏感肌の⽅やアレルギー体質の⽅の⾐類も安⼼して洗えます」
自社規格に加え、企業のニーズに合わせたコインランドリーを企画し、専門分野を持つ企業と協業して製品開発を行うwash‐plus。次はどんな協業を見せてくれるのか、同社の動きに注目したい。
会社概要 設立 2013年5月 資本金 7,100万円 売上高 5億円(2022年4月見込) 本社 千葉県浦安市 従業員 13人 事業内容 ランドリー事業、システム開発事業 https://www.wash-plus.jp/ |