家業の解体工事会社を事業承継した2代目。「壊して終わり」ではなく、その先にある売却、相続などのニーズにも対応する。業界の常識を打ち破るサービス品質で評判を呼び業績は好調、人材教育に力を入れさらなる躍進を目指す。
不動産会社の営業職から転身承継2年で売り上げ3倍に
現在の主な事業は大手ゼネコンなどから受託する「鍛冶工事」と、空き家などを解体する「解体工事」の2本柱だ。
田宮代表は前職が不動産会社の営業マンで、若くして幹部に登用された期待の星だったが、2年前に実父から事業承継した。当初は移動用の車もパンフレットも提携会社もなく、取引先もゼロからのスタートだったという。
「スマートフォンを片手に文字通り靴底を減らして、飛び込み営業から始めました。電車やレンタルの軽トラックで移動し、時にはヘルメットを被って現場に顔を出したりもしました」
不動産会社で培った営業力を武器に取引先を少しずつ開拓。現在は「タミヤホームに任せれば安心」との評判から次から次へと紹介が来るようになり、売上高は承継前の3億円から10億円に伸びた。商圏も1都3県をまたぐようになり、現場数は月間約50カ所、協力してくれる職人も100人規模にまで増えた。
解体業には珍しい専任営業がホスピタリティを追求
職人しかいなかった会社に、営業職を配置したのが最初の改革だ。
「これまでの解体工事業界では、現場の職人が直接、電話で受注の応対などを行っていました。作業中は電話に出られないこともありますし、見積書やメールの返信にすぐに応えられないこともあります。営業担当を置くことで即時対応が可能となり、施主やお客さまとのコミュニケーションも良くなりました」
現場では騒音などのクレームがあると直接、施主に向かうことが多いが、営業担当者が間に入ることでスムーズに問題を解決でき、施主も安心できる。例えば、ダンプカーの通り道や工事現場の近隣住民には、工事中の騒音で迷惑をかける可能性がある。そこで工事開始前のケアとして、一般的に10軒程度の挨拶回りを、同社の営業担当は最大50軒回るのだという。
また営業担当者が熱心に顧客とコミュニケーションを取ることで、解体工事後に顧客が悩む土地の処分や相続などの困り事やニーズを聞き出し、そこからビジネスが生まれることも増えている。営業職の導入はホスピタリティだけでなく、商売を生む源泉にもなっているのだ。
旧態依然の解体工事業界をより良くしたいと願う田宮代表の熱意とホスピタリティの精神は顧客満足度を高めている。
「お客さまの喜びにフォーカスした結果、この仕事は社会を良くして世の中のためになると確信しています。また会社が成長するために今は人材育成に投資をしています。当社のようなホスピタリティの考えを持つ会社が少しでも増えてくれればいい。10年先を見据えて、解体工事業界を変えていきたいですね」
田宮代表が前職の不動産会社を退社して解体工事業界に飛び込んだ理由は、突き詰めれば「課題が多く、逆にチャンスだと感じた」からだ。そのためにはまず自社が変革を成し遂げ、業界に新風を吹き込みたいという思いがある。最初は親から預かった会社と社員を守ることが最低限の義務だろうが、次のステージへ成長するためには仕事への高い使命感とホスピタリティの精神を社員と共有することが重要だ。経営哲学は「できないは恥、できるは誇り」。顧客の要望に応え続け、現状に満足せず、できることを増やしていく。
前職の頃とは変わって、現在は社員としか会食せず、年始にお酒のプレゼントや誕生日メッセージを贈る。仕事で遅くなった社員を自宅まで送ったり、現場に弁当を差し入れもする。事務所や現場で常に社員を気にかけ、リーダーとして会社をどの方向に導こうとしているのかを熱く訴え続けている。会社を通して社会に貢献したいと思う背景には原体験がある。
「5年ほど前、仕事のし過ぎで重い肺炎にかかって2カ月間入院し、さまざまな本を読みました。帝王学の『貞観政要』、パナソニックの創業者・松下幸之助さんの本などです。どうやったら衰退しない組織をつくれるか、人が辞めない会社にできるか、皆の長所を生かすことがいかに重要かなどです。それまでは自分のことばかりでしたが、入院を機に心を入れ替え、世の中に貢献していきたいと思うようになりました」
目指すは土地・建物のトータルソリューション会社
中期的には年間売上高100億円が目標だが、あくまでも通過点に過ぎず、500億円達成を目指している。解体工事だけでなく土地売却や建て替え、資産運用、相続など、土地や建造物に関わるトータルソリューション会社への発展だ。
「将来は不動産鑑定士や公認会計士などニーズの高い士業を迎え入れる会社にしたい。こんな解体工事業者は今までなかったのではないでしょうか。また、自治体レベルで見れば全国で『空き家問題』が深刻な課題です。老朽化して異臭が発生したり、犯罪に使われることもあり危険です。早期解決は地域の活性化や地方創生になるので、少しでも貢献できるよう努力していきます」
会社概要 設立 1997年6月 資本金 300万円 売上高 10億円(2021年12月) 本社 埼玉県所沢市 従業員数 35人 事業内容 解体工事業、鋼構造物工事業、建築工事業、大工工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、内装仕上工事業 https://www.tamiya-home-kaitai.com/ |