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「攻めの提案型DX」にシフトCAEではEV分野に挑戦ーJSOL

JSOL 社長兼最高執行役員 前川雅俊(まえかわ・まさとし)

システムインテグレーターのJSOLは、2025年までに500億円の売り上げを目指し、「攻めの提案型DX」とCAE事業でのEV分野で成長を加速させる。また、データ駆動型の事業拡大により、さらなる価値共創を図っていく。

JSOL 社長兼最高執行役員 前川雅俊(まえかわ・まさとし)
JSOL 社長兼最高執行役員 前川雅俊(まえかわ・まさとし)

CAEでEV分野などに挑戦海外企業へも積極的に進出

JSOLの2021年度の売上高は約400億円、営業利益率は10%超えと過去最高益を達成する見込みだ。好調の理由はDX投資の増加機運だ。特にコロナ禍以降は顧客側の意識変化も顕著で、DXへのニーズは急増しているという。JSOLは、25年までの4年間の中期経営計画で、営業利益率10%はキープしつつ、500億円の売上高を目指す。

事業の柱は、顧客のシステムづくりを支援し、サービス提供を行うシステムインテグレーションだ。対象顧客は、製薬業や製造業をはじめとした法人分野のみならず、公共分野から金融業など幅広い。現業ではERPなど顧客の基幹システムの提供がメーンだが、業務を効率化するIT化から、より新しい価値を生むDXへの転換を推進中だ。「攻めの提案型DX」を標榜し、顧客の要望に応えるだけではなく、ICTサービスコーディネーターとして、新たな提案を推進していきます」と前川雅俊社長は胸を張る。

JSOLのブランドメッセージは、「今はない、答えを創る。」。JSOLがもう一つの事業の柱として力を入れているのがCAE(Computer Aided Engineering:コンピューター支援エンジニアリング)だ。クルマを例に挙げると、クルマの素材や構造などのデータから、衝撃時のクルマの衝突度合いをコンピューターでシミュレーションする技術だ。実機を壊すことなくリアルに近い値を計算できるため、廃棄物を減らせてエコロジーに貢献できる。

また、EVのモーターを動かす際には電磁波が出るが、その影響範囲や出方を計算できるCAEのシミュレーション・パッケージ「JMAG」をグローバルで展開している。メルセデス・ベンツやゼネラルモーターズ、ボルボなど多くの海外自動車メーカーに採用され、EV需要の増加により売り上げも好調だ。この部門では海外人材を積極採用している。

カーボンニュートラルやサステナビリティの観点でCAEは今後ますます求められていく。祖業とも言えるシステムインテグレーションとCAEの両事業が、同社の企業成長を担う柱として躍進し続けている。

理化学研究所との合弁会社がデータ分析・提案の頭脳に

DXやCAEでの成長を支えるのが、グループ企業の「理研数理」だ。国立研究開発法人・理化学研究所(以下、理研)と理研鼎業、JSOLとの合弁会社で、多くの研究者を擁する理研の頭脳をビジネスに活用するために設立された。理研には、21年から運用開始された世界最高峰のスーパーコンピューター「富岳」がある。「顧客が持つ大量のデータに新しい意味を持たせて、価値を創造していく」のが狙いだという。顧客のデータ分析を元に価値を提案し、成長事業を生み出す「攻めの提案型DX」の要でもある。データ駆動型のビジネスを推進していくという高らかな宣言だ。

「働きがいのある会社」の認知度を上げて採用に生かす

NTTデータ50%、日本総合研究所50%の出資を受けた、双方のグループ企業であるJSOL。コンサルティングからシステム設計や構築が得意な日本総合研究所と、サービスやシステム開発が得意なNTTデータの手法を取り入れ、上流工程から下流工程まで一気通貫で受託することで、開発から保守・運用まで関わる長い付き合いができる。「これができる日本企業は、実は少ない」そうだ。また、システムの導入の段階から顧客と伴走することで手戻りを少なくし、システム品質や生産性の向上にも成功しているという。顧客の全工程に携わり支援できる体制もJSOLの強さの一端と言える。

しかし、業績好調の一方でエンジニアの採用難はICT業界全体の課題であり、JSOLも例外ではない。オフショアで中国やベトナム、バングラデシュなどに発注しつつ、一気通貫によるビジネス展開を強化するには、キャリア採用も不可欠だ。

「顧客によるシステム内製化の傾向もあり、ICT業界のエンジニアの争奪戦は熾烈です。調査をした結果、当社はBtoB企業であるが故に認知度が低く、応募につながっていない傾向があることから、認知度向上の一策として、品川駅のコンコースなどにデジタルサイネージ広告を展開しています」

社員の働きがいを調査する調査機関「Great Place to Work」では、21年までの国内企業の大規模部門における「働きがいのある会社ランキング」で、3年連続でベストカンパニーの1社にランクインするなど、
「働きがい」には特に力を入れている。

「ICT企業の要は人。当社の離職率は3%程度と業界内では少ない方ですが、『JSOLは良い会社だ』とさらに思ってもらうためには、働きやすさはもとより、働きがいが求められます。もっと社員が誇りに思えるような、生き生きと働ける会社づくりを進めたい。そして、顧客に新しい価値を提供できる人に来てほしい。生き生きと働いた結果、自分と仲間が成長し、結果的に会社が成長すればと考えています」 

会社概要
設立 2006年7月
資本金 50億円
売上高 375億円(2021年3月期)
本社 東京都中央区
従業員数 1,200人(2021年4月現在)
事業内容 ICTコンサルティングやシステム企画、構築・運用などトータル・ソリューションの提供
https://www.jsol.co.jp/