経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

事業を通じて日中友好の一助を担うシステム会社ー日発

日発 社長 大田明寛(おおた・あきひろ)

日発は金融・医療業界や地方自治体を中心にウェブシステムや情報系システムの開発を手掛けている。同社は中国にルーツを持つ大田明寛社長が10年前に設立。大田社長は日本に不慣れな中国人社員のケアを含む従業員フォローや、社内イベントを通じた日本人と中国人の社員融和に注力。事業を推進しながら、民間レベルにおいて日中友好の一翼を担う。

日発 社長 大田明寛(おおた・あきひろ)
日発 社長 大田明寛(おおた・あきひろ)

日中の社員が互いの強みを生かしながら貢献

「ささやかですが、事業を通じて日中友好に貢献できればと思っております。日本人と中国人の社員が国籍を超えて協力できる体制を強化していきたいですね」

日発の大田明寛社長はこう語る。中国・福建省出身の大田社長は現地の中学校で数学教師として教鞭を執っていた。海外で自分の力を試してみたいという思いから、アニメやバラエティ番組を通じてかねてから親近感を抱いていた日本へ22年前に留学。首都大学東京(現・東京都立大学)でITを学び、システム会社でプログラマーとして勤務した後、2012年に独立した。従業員たちの協力を得ながら、順調に業容を拡大。現在の主な顧客は金融・医療業界や地方自治体で、メガバンクや大手保険会社における基幹システムの構築をはじめ、大型案件を手掛けている。

強固な顧客網を築いた要因は人材力にある。同社では日本人と中国人の優秀な社員を採用している。日本人は大手システム会社出身の30~60代、中国人は成長意欲の高い20代が中心で、日本人が全体の3割、中国人が7割という構成だ。日本人社員はキャリアに応じた人脈をフル活用することで新規案件を開拓、中国人社員は社内外の研修で知識を吸収しながら開発現場で活躍するという好サイクルが生まれている。

「研修ではシステム開発の基礎からAI(人工知能)やクラウド、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった今後の成長領域まで幅広い知識や技術を教えています。その結果、保険会社向けクラウドシステムを受注するなど、事業面でプラス効果が表れつつあります」

大田社長はこう自信を見せるが、異なる価値観を持つ社員同士の融和は順調なのか。大田氏は「当社の社員は国籍に関係なく大人しくて穏やかな人が多いため、職場はアットホームな雰囲気ですね」と明かす。その上で、同社は社員が上司に生活や業務の悩みを相談しやすいホットラインを構築。全社員のさまざまな相談に対応し、特に来日したばかりの中国人社員には税金や住居といった生活面の相談に応じている。昨年は東京都小金井市で社宅用にアパートを借り上げ、社員が仕事に専念しやすい環境を整える。

SES中心の事業から脱却し自社サービスの開発へ

また、現在はコロナ禍で縮小傾向にあるものの、社内イベントの開催にも積極的だ。毎年、新年会やお花見、社員旅行、バーベキュー大会、運動会、忘年会と社員同士が季節ごとにコミュニケーションを深める場を設けている。今年も中国の春節前である1月29日に新年会を開催。大田社長は好業績に貢献した社員たちをねぎらいつつ、一人称での現場対応が求められる現状を踏まえて一層のレベルアップを求めた。また、新年会では役員が次々に挨拶。大田社長の留学生時代のアルバイト仲間だった何文婷執行役員は同社へ入社した後に日本の永住権とマイホームを得た喜びを語り、「会社の力になれるように一層の顧客開拓に取り組みます」と意気込みを示している。

「当社は特に技術者が多く、客先への常駐やリモート勤務で他の社員と顔を合わせる機会が多くありません。そのため、社員同士が打ち解けるための場を提供してきました。私自身も月に1度は全ての社員とコミュニケーションを取るように心掛けています」

人材をテコに業績を伸ばす同社。今まで右肩上がりで業績を伸ばしており、昨年12月期の売上高は10・5億円と前期比13・8%増を果たした。昨年1年間で日本人6人、中国人21人が入社して116人体制に。今年は毎月10人ペースでの社員採用を通じて、さらなる業容拡大を目指す。

「人員を増やすことで、将来的にはSES(システムエンジニアリングサービス)中心の事業構造から脱却し、営業管理システムや事務業務自動化システムなど自社サービスの開発を強化していきます。社員からも新サービスのアイデアを積極的に取り入れる考えです。当社は今年で創業10周年を迎えました。日中友好への取り組みはまだまだこれからですが、国籍を意識せずに皆が仲良くできる社会づくりに少しでも貢献したいと思います」 

日発イベント
日発は社員旅行をはじめとしたイベントを通じて、国籍や年代を超えた社員の交流を促している
会社概要
設立 2012年1月
売上高 10億5,000万円
(2021年12月期)
本社 東京都杉並区
従業員数 116人
事業内容 ソフトウェア開発ソリューション、スマートデバイスアプリ開発ソリューション、インフラ構築ソリューション
https://www.hihatu.com/