経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

デジタル時代のベストパートナーとして企業のDX変革を支援する-エル・ティー・エス  樺島弘明

樺島弘明 エル・ティー・エス

主な事業は企業向けコンサルティングで、プロフェッショナルサービスとプラットフォームサービスを展開しているエル・ティー・エス。ビジネスプロセスの可視化・改善・実行支援などを行っており、企業のDX化を包括支援。IT業務をオンラインで受発注できるプラットフォーム「アサインナビ」も運営している。文=榎本正義(雑誌『経済界』2022年8月号より)

樺島弘明 エル・ティー・エス
エル・ティー・エス 樺島弘明
エル・ティー・エス社長
かばしま・ひろあき 1975年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ING生命保険(現エヌエヌ生命保険)入社。その後、ITベンチャー企業にて営業ゼネラルマネージャー。2002年3月エル・ティー・エス設立に参画し、取締役就任。同年12月社長に就任。

DXや業務改善をコンサル。必要なのは日常的な変革

 企業向けコンサルティングを手掛けるエル・ティー・エス。ロボティクス・AI・ビジネスプロセスマネジメントを活用することによって、企業変革と働き方改革を促進支援する。単なる外部支援ではなく、顧客の現場に入り込み、顧客の課題や変革テーマに応じた各種支援をワンストップで提供するプロフェッショナルサービス事業、および企業のIT人材不足を解消するプラットフォーム事業を展開している。

 プロフェッショナルサービス事業では、外部企業との連携推進や積極的な人材採用、人材育成基盤の整備など、安定的なサービス提供能力の拡大に向けた取り組みを推進している。

 プラットフォーム事業では、「アサインナビ」及びフリーコンサルタント特化型の案件紹介・相談サービス「コンサルタントジョブ」の積極展開に加え、事業会社とDX企業のマッチングを行う新サービス「CS Clip」の開発を推進している。また、創業20周年を機に、企業文化やブランドをより一層強化する取り組みも開始している。

 これらの結果、2022年12月期第1四半期決算は、売上高21億5400万円(前年同期比23・6%増)、営業利益2億6500万円(同54・0%増)、経常利益2億6200万円(同46・8%増)で、いずれも過去最高を記録した。22年度見通しは、売上高85億4200万円、営業利益4億8千万円、経常利益4億6千万円を見込んでいる。

 「DXや企業の変革が積極的に取り組まれているので、問い合わせや既存顧客からの依頼が非常に増えています。当社が他の大手コンサルティング会社やIT・AIベンチャー企業とちょっと違うのは、なぜプロフェッショナルサービスをやっているのかという着眼点のところです。私たちが着目しているのは、変革の日常化です。これまで多くの企業は10年に1回大きな変革を成し遂げて競争力を維持してきました。しかし、最近は大変革をしても競争力を維持できなくなっている。そんなに単純な時代ではなくなってきたのです。むしろ日常的に大中小、さまざまな変革をする必要があります。そこで当社が行っているのは、一つ一つのプロジェクトも支援しつつ、変化対応力をどう上げていくのかということです。ビジネスプロセスマネジメントという技術を日本で一番得意な会社になろうと決め、取り組んでいます」と樺島弘明社長は言う。

 続けて、「健全な変革サイクルを回すには、事業構造がきちんと見える化されていないといけない。それができている会社はDXもうまくいくし、M&Aをしても企業統合が上手に行える。どこに無駄があるかが見えているので、適切に改善できるのです。私たちは変革サイクル全体を支援することを得意技にしようと目標を定めました。そのためにビジネスプロセスマネジメントという技術を磨き続けてきた結果、今に至っています。累計で1千社を超える企業を支援し、10年20年と毎年変革活動を支援している企業も10社以上あります。大手企業かつ先進的な取り組みをいち早くやっていこうという企業が主要な顧客に多いのも当社の成長の一因です」

堅実な成長シナリオを見直し。飛躍的成長へモードチェンジ

エル・ティー・エス
エル・ティー・エス

 エル・ティー・エスは、コンサルティング会社ではあるが、コンサルタント以外の職種も多数用意されている。拠点を置く京都、大阪などの関西エリアの拡大や、合弁先であるベトナム最大のICT企業FPTソフトウェアや、出資関係のある企業に出向したりということもある。

 「採用競争が激化しているので、あらゆる手を講じて必要なレベルの人材を必要数採用できるよう取り組んでいます。ただ、うちに来ると、いろいろな仕事をすることができるというのは採用面でかなりプラスに作用しています」

 エル・ティー・エスの創業は、当時所属していたITベンチャー企業が経営に行き詰まり、その企業が受けていたプロジェクトを最後まで遂行するための受け皿となる会社が必要になったからだった。半年後にはそのプロジェクトが無事終了したが、前社長の体調不良による社長交代があり、樺島氏はいわば〝代打〟による社長就任だった。株主企業への借金返済などのアクシデントとそのリカバリーの連続がその後2年続く。

 それから数年かけて社員数を徐々に増やし、08年4月、念願の新卒採用を実現したが、すぐにリーマンショックが起き、毎年実施すると決めていた新卒採用は09年で一時停止せざるを得なくなった。さらに顧客の業績悪化により多くのプロジェクトが中止され、希望退職を募る状況に陥ってしまう。

 だが、サービスと顧客のポートフォリオを見直し、コンサルティング事業のカバー範囲の拡大、ストック型案件を増加させるなどの策を講じ、17年12月東証マザーズに上場することができた。

 その後、コンピューターソフトウェアの設計・開発、情報処理サービスなどを行うワクト、IoTサービスを提供するイオトイジャパンのM&Aを行い規模を拡大。20年7月東証1部に市場変更し、今年4月からプライム市場に移行している。22年1月までに香港法人のLTS、アサインナビ、ワクト、イオトイ、システム設計などを行うソフテックの5社でLTSグループを形成している。

 5月に発表した中期経営計画では、22年からこれまでの堅実な成長シナリオを見直し、飛躍的な成長に向けてモードチェンジすると謳っている。22年まで20%超成長を継続してきたが、23年以降は25%成長へ、24年の連結売上高は140億円、連結営業利益20億円、連結営業利益率14・3%を掲げる。その数値目標達成のためのドライバーを人員拡大と個人の成長にあると考え、これらを引き上げていくため、従来より積極的な取り組みを行うことにより、中計達成と25年以降の成長スピードを加速する、としている。

 創業期の廃業危機からの復活を見事にリードしてきた樺島氏。世界に必要とされるグローバルでブランド力のあるプロフェッショナルサービス会社を目指すその手腕に期待したい。