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民間企業主導での地域創生。九州から全国へ輪を広げる ジャパネットホールディングス 髙田旭人

ジャパネットホールディングス 髙田旭人

〝「今を生きる楽しさ」を!〟を企業理念に掲げ、通信販売事業、スポーツ・地域創生事業に取り組む。そんなジャパネットグループの考えるこれからの日本の「地域創生」について、髙田旭人社長に聞いた。(雑誌『経済界』2023年1月号より)

ジャパネットホールディングス 髙田旭人
ジャパネットホールディングス 代表取締役社長 兼 CEO 髙田旭人(たかた・あきと)

経済の好循環を生むにはまず働き方改革から

 「九州は、自分にとっても当社にとってもなじみ深い故郷。社員にも九州出身者が多くいますし、客観的に見ても温かい場所だと思います」髙田旭人社長は穏やかに語る。ジャパネットグループの原点は、髙田社長の祖父が長崎県佐世保市で開業したカメラ店。創業地への思いは深い。

 同社は2021年12月、福岡市天神地区の大規模再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の一環で建設されたオフィスビル、天神ビジネスセンター内に新たにオフィスを構えた。きっかけはコロナ禍にある。オフィスの存在意義が見直される中、社員同士が直接顔を合わせることを大切にしたかったという髙田社長。さらに、満員電車や通勤時間の長さといった問題もこの際解決してしまおうと考え、社員の多くが親しみを感じていた九州・福岡に最高の新オフィスを作ろうと決めたのだと言う。

 「最初は社員とのオンライン飲み会で出た案だったんです。本社のある長崎に比較的近くて住みやすい福岡にオフィスがあったらいいね、と」

 社員の働きやすさを重視する姿勢が表れるエピソードだ。「健康経営」を実現している企業を認定する「ホワイト500」に4年連続で選出されている同社。時代に沿った柔軟な働き方について、地域の企業や経営者に研修を行うこともあるそうだ。

 「地道ですが、これも地域創生の一環です。社員のパフォーマンスが上がる働き方を多くの企業が導入することで、経済の好循環が生まれます。理解してもらうのは難しいかもしれませんが、いずれ結果で証明できるはず。まだ40代ですから、ライフワークとして取り組んでいきます」

既存のノウハウを生かし、機内を顧客とのチャネルに

 22年8月、ジャパネットホールディングスは、福岡県北九州市に本拠地を置く航空会社スターフライヤーとの資本業務提携を発表。飛行機の機内をテレビ、ラジオ、インターネット、チラシ・カタログに並ぶ第5のチャネルに位置付け、機内コンテンツや物販事業、旅行事業における連携を23年1月から本格的に強化する。

 機内誌、機内モニターで視聴できる番組といった機内コンテンツの提供には、同社で行ってきた通信販売のカタログ製作や、自社BSチャンネルの番組制作で培ったノウハウが生きる。現在社内にあるリソースを機内のあらゆるサービスに盛り込むというわけだ。機内誌や番組に登場する九州の名産品などを機内で注文し、自宅に届けられる物販サービスも企画している。これもまた同社の九州への想いがうかがえる構想だ。

 また、17年に本格参入した旅行業の延長として、飛行機を使った旅行サービスのリリースも企画している。

 「ゆくゆくは長崎空港から飛行機を飛ばしたいと考えています。まずは当社の制作する機内コンテンツが、お客さまがスターフライヤーを選ぶ理由になってくれたら」

新しいスポーツ観戦の様式が長崎に「生き甲斐」をつくる

 ジャパネットグループは17年、経営不振に悩んでいた地元長崎のプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」をグループ化し、20年には長崎初のプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」を創立した。通信販売に次ぐ2つ目の事業の柱として掲げている「スポーツ・地域創生」の一環だ。

 現在同社は、V・ファーレン長崎のホームスタジアムと、それを取り巻くアリーナ、オフィスビル、商業施設などを建設する「長崎スタジアムシティプロジェクト」を進める。一般的にスタジアム建設は行政が主導・出資するケースが多いが、このプロジェクトではジャパネットホールディングスが全権を担う。豊富な種類のVIP席を備えたスタジアムや、試合前後にビールを楽しめるブルワリーカフェ。丸1日楽しめる施設造りで、スポーツ観戦の新しいスタイルをデザインする。

 「地域の経済成長を阻んでいるのは、日本独特の横並び意識だと感じています。行政主導では全方向への配慮が必要なため、画期的なアイデアを取り入れて事業を進めることは難しいでしょう。それに前例のない挑戦は民間企業にとっても大変勇気のいることです。まず当社が達成し、それが他の地域にとっての前例になればと思っています。全国の地域創生のモデルケースを長崎県で作ることが目標です」

 九州が日本の地域創生の先駆けとなるか。ジャパネットグループの挑戦は続く。 

会社概要
設立   1986年1月
資本金  12億4,500万円
売上高  2,506億円(連結・2021年12月期)
本社   長崎県佐世保市日宇町
従業員数 3,851人(パート、アルバイト含む・2022年10月現在)
事業内容 通信販売事業、スポーツ・地域創生事業 
https://corporate.japanet.co.jp/