デジタルマーケティング駆使し躍進するハウステックカンパニー 　Lib Work　瀬口 力

同業他社と一線を画したデジタルマーケティングによる集客で成長著しいＬｉｂ Ｗｏｒｋ（リブワーク）。３年間で年商は３倍弱になる見通しだ。23年からは３Ｄプリンター住宅の開発・製造も本格化させる。（雑誌『経済界』2023年1月号より）

３年で売上高２・８倍の見通し動画ｃｈ累計視聴１６００万回

　ウェブを活用した戸建て住宅企画・販売を手掛けるリブワークは、２０２２年９月から本社勤務の社員が電気自動車で通勤した場合、月額１万円の手当てを支給するユニークな施策を始めた。また、業界で初めて自社で施工した戸建て住宅のＣＯ２排出量を算出・明示し、削減に努めることも決めた。いずれもＥＳＧへの取り組みの一環であり、瀬口力社長は「ＣＯ２排出削減をはじめとする環境への負荷軽減と企業の成長は相反することであり、両立するのは簡単ではないがやり遂げていきたいですね」と語る。

　20年６月期に60億円であった同社の売上高は、１年後には94億円に。さらに22年６月期には１３７億円となり、今期は１７０億円に達する予定だ。営業利益も20年６月期の１億４４００万円に対し、21年が４億８６００万円、前期は６億６６００万円で、今期は９億円を見込む。売上高は３期連続、営業利益は２期連続で過去最高を更新する勢いだ。

　急激な右肩上がりの背景にあるのが、他の戸建て住宅会社とは一線を画すデジタルマーケティングを駆使した集客だ。同社は、土地探しの「ｅ土地ｎｅｔ」、平屋建て住宅を紹介する「ｅ平屋ｎｅｔ」、デザインやライフスタイルから選ぶ「ｅ注文住宅ｎｅｔ」といった各種専門サイトを複数運営している。エリアを限定することなく、全国から家を建てたい人をそれらのサイトで集客。インサイドセールスによって、必要であればユーザーの住む場所に近いモデルハウスへ送客する。初めからモデルハウスで集客する一般的な戸建て住宅会社と比較してコストは約10分の１で済む一方、集客数は３割以上多くなるという。22年６月期はこのデジタルマーケティング集客が前期比で約70％伸びた。

　さらに、独自メディアも立ち上げ発信力も強化する。20年７月にユーチューブで「リブワークチャンネル」を開設。同社の顧客が建てた実際の家を紹介するものだが、登録者数は４万人以上、１本の動画が90万回再生されるなど、累計視聴回数は１６００万回を超える人気ぶりだ。動画は施主がどのような思いで細部までこだわったかなど、物件そのものの紹介に徹し「当社の社名はほとんど出さない」（瀬口社長）という。それが結果的には同社のファンを生み出すことに成功している。

　22年２月には家づくりに関するユーザーの疑問に専門家が答えるウェブメディア「リブタイムズ」を開設。「リブワークチャンネル」と同様に自社の宣伝はせず、あくまで一メディアとしての運営を徹底。このほどスマートニュースへの掲載も決まった。

異業種企業とのコラボ住宅も人気

　同社は異業種企業とコラボレーションした住宅を複数手掛けており、いずれも人気を集めている。これまでに「無印良品の家」、「Ａｆｔｅｒｎｏｏｎ ｔｅａ ＨＯＵＳＥ」、niko and … とコラボレーションした「ｉｎｋ」を商品化した。

　「Ａｆｔｅｒｎｏｏｎ ｔｅａ ＨＯＵＳＥ」では、モデルハウスが完成する前に紹介動画を見たユーザーから受注があった。22年８月には千趣会のブランド「ベルメゾンデイズ」との提携が決定。同ブランドの住宅を共同開発し、23年をめどに通販で販売する。このほかにも「皆さんがよくご存じの企業とのコラボレーションも今後控えています」という。

３Ｄプリンター住宅の本格開発へ

　画期的な取り組みはまだある。国内でいまだ普及に至っていない３Ｄプリンター住宅の開発に本格的に乗り出すというのだ。

　同社は英国・ロンドンに本社を置く建築設計コンサルティングのグローバル企業であるＡＲＵＰ（アラップ）社と提携。建設用の大型３Ｄプリンターを活用した住宅「ＤＥＥＰ α」を研究開発している。22年中に海外メーカーの中から使用する３Ｄプリンターを決定し、23年春をめどにモデルハウスを建てる計画だ。開発、製造拠点としては熊本県山鹿市内にある廃校を活用する。

　「マテリアル（素材）を下から積層して出力（印刷）していくため、１日から２日で出来上がり、人手不足が言われている熟練工も必要としません。国内はもちろん、海外の発展途上国への提供も視野に入れています」

　徹底したデジタルマーケティング戦略と、従来の戸建て住宅業界にはなかった商品を取り扱う同社。単なる住宅メーカーの範囲には収まらず、業界にライバルは見当たらない。瀬口社長は「当社はハウスメーカーではない。ハウステックカンパニーだ」と力強く語った。