経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

社内の信頼が自走型組織をつくり商品のブランド価値を高める コラントッテ 小松克已

コラントッテ 社長 小松克已

医療機器認定を取得した磁気治療器を製造・販売するコラントッテ。2021年7月に東証グロース市場への上場を果たし、営業利益は5年連続で続伸、22年度は売上・利益ともに過去最高を更新した。持続成長の背景には、確かな商品力と、社員自ら目標を掲げて成長する企業風土がある。(雑誌『経済界』「関西経済! 次の一手!特集」2023年3月号より)

小松克已・コラントッテ社長 

コラントッテ 社長 小松克已
コラントッテ 社長 小松克已

技術力が光る医療機器製品。盤石の生産体制にも強み

 近年の健康志向の高まりを受け、ウェルネス市場は世界的に拡大傾向にある。競争自体は激化しているが、医療機器業界は品質マネジメントシステムに関する国際規格(ISО13485)の基準が高く、新規参入は容易ではない。

 そうした中、コラントッテは医療機器として差別化された製品を展開。特許を取得した独自技術「N極S極交互配列」を生かし、サポーターやアパレル、磁気ネックレスなどを製造・販売し、トップアスリートをはじめ幅広い層に親しまれている。近年は女性向けブランド「Lierrey」にも力を入れており、デザイン性と機能性を兼ね備えた高価格帯商品も好調だという。

 直近では世界情勢の変化により、材料費等の高騰が続いている中、同社が経営に影響を受けていないのは、「変化に対応できる生産体制があるから」だと小松社長は話す。自社で工場を持たず、アイテムごとに協力会社を増やしていることがリスク回避につながっているのだ。

業績好調の背景にある自律型社員が自走する組織

 コロナ禍ではEC販売が健闘した。好調を維持している理由を、「地に足の着いた経営」だと語る。

 「僕は社員に、売り上げをいくらにしろ、という指示は1度も出したことがない」。同社は半期に1度、事業方針説明会を開いている。その中で会社をステージアップさせる計画を立案・発表するのは社長でなく社員だという。「機関車ではだめ。社長にエンジンを載せて皆を引っ張る組織ではなく、社員が会社を動かしていく組織でないと」。

 創業当時は社長が先頭を走る組織だった。社員が主体的に行動し始めたのは上場準備の頃。内部統制を整備していく中で、社員がそれぞれ役割を見いだし、自走する仕組みが自然と醸成された。「僕は何もしていない」と繰り返す小松社長に対し、同社社員に話を聞くと、「小松社長が経営者として要の部分を担ってくれていることを社員は理解しています。そのため、自分たちのポジションで責任を持って行動できるのです」と話してくれた。

 小松社長が毎日欠かさず行っていることがある。それは9階建て本社ビルの全ての階に顔を出すこと。社員に声をかけ、エアグータッチでコミュニケーションを取る。とりとめのない会話の中で、言葉だけでなく、声のトーン、話し方などの微細な変化を感じ取り、必要に応じてその場で対応する。ちょっとした違和感を放置すると、大きな問題に発展するのを知っているからだ。

 小松社長は直感に素直に動くことを大切にしている。肌で感じ、良いと思ったことは即座に行動に移し、小さなズレを見つけたら必ず手を入れる。他人の意見を過剰に受け入れたり、ネガティブな考えを持つことは、判断の邪魔になりスピードを落とすからだという。

「本気の笑顔」を土台に商品のブランド価値を高める

 社長が仕事の指示を出さないのは、現場で働く社員が高い専門性を発揮しているとの考えに基づく。社員を全面的に信頼しており、心の距離も近い。

 「僕は『社長』と呼ばれるような存在ではない」と笑うのは、社内の雇用関係や取引先との関係も含め、人と人の関係を分け隔てなく築いているから。相手を尊重する姿勢は、小松社長が創業時から持ち続けているものだ。過去には多額の借金を抱えたこともあったが、たとえ裏切られても人に対する信頼は決して揺るがない。

 また、驚くべきことに経営目標もないそうだ。「社員が目指したいものを目指したらいい。その方がうまくいく」。社員への信頼はこうした人事管理にも表れている。だからこそ社員は安心して上を目指せるのだ。

 その代わりに軸となるのが、経営理念「本気の笑顔」だ。商品を通じてお客さまをもっと笑顔にしたい。経営を通じて社員をもっと笑顔にしたい。これが経営判断の基準となっている。商品開発も使用者の笑顔を想像しながら行っている。商品には医療用メスと同じ素材を使用し、アレルギー反応に対するクレームなどもないという。

 笑顔が伝播することを小松社長自ら体験したエピソードがある。プライベートで会場を貸し切り、300人を動員したライブを催した際に、来場者から「心から楽しめた」「自分の人生を考え直した」などと口々に感謝されたのだという。素人のイベントで観客の心を動かせたのは、小松社長本人が本気で楽しんでいるからこそ。

 笑顔を絶やさず、地に足の着いた経営を志向していく。未来に向けた課題を挙げるとすれば、医療機器製品のブランド価値をさらに磨き、世の中に浸透させていくことだという。これを続けることで、人々に健康と笑顔をもたらしていく。不安定な社会情勢が続く中、人々が求める安心や笑顔が同社の商品にはある。 

会社概要
設 立●1997年10月
資本金●4億7,678万円
売上高●46億6,300万円(2022年度)
本 社●大阪市中央区
従業員数●90人(2022年9月)
事業内容●医療機器・日用品雑貨の製造・販売、通信販売業務
https://colantotte.co.jp