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新社長就任で世界水準を目指すITサービスコーディネーター  JSOL 永井健志

JSOL 永井健志

JSOLは、NTTデータと日本総合研究所が50%ずつ出資するITサービスコーディネーターだ。2022年6月、新社長に永井健志氏が就任。医薬分野など特定分野に強みを持つ手堅さをさらに盤石にするため、採用を積極的に進めている。(雑誌『経済界』2023年5月号「注目企業2023」特集より)

JSOL 社長 永井健志氏

JSOL 永井健志

JSOL 永井健志 ながい・けんじ 社長

医薬分野で示した強みを他分野にも展開

JSOLの2022年度のセグメント別売り上げ割合は、医薬分野が83億円。全社売り上げ411億円のうち20%を占める。医薬ビジネスの中心となるEPRソリューション「SAP」関連は103億円と、25%を占めている。親会社であるNTTデータからの売り上げは5%ほど。約85%は親会社以外との取引で、独自の地位を築いている。

IT企業では、親会社の工程の一部を分担することも少なくないが、JSOLでは行っていない。ここからも常に新しい分野を開拓してきた歴史が垣間見える。

「今はJSOLを医薬業界に強い会社としてステークホルダーの皆さまに認識していただいていますが、設立初期は知名度もなく、全方位に業務が分散しており、事業の選択と集中を繰り返しました。海外のERPパッケージの日本国内企業への適用も相当な苦労を重ねてきました。SAPを医薬業界向けにカスタマイズすることで、業界の業務ノウハウが徐々に蓄積されていき、次第にJSOLのブランドとなったのです」と話す新社長の永井氏。

「独自のERP導入ソリューション SAPテンプレート『J-Model』はおかげさまで大変ご好評をいただいております。今では医薬業界でSAPを入れるならJSOLだ、と業界のお客さまから仰っていただけるまでになりました」

また、放送業界向けにはNTTデータグループのERPソリューション「Biz∫(ビズインテグラル)」を放送局に適応させるプロジェクトを担う。顧客はTBS他の放送局とも取引がある。

「放送業界は他業界と異なる特色を持っているので、Biz∫上でその特色を反映した部品類を整備し(「J’sTV」として独自ブランディング化)、お客さまのご要望に細やかに応えられるようにしています」

他にも、JSOLが開発した電磁界解析ソフトウエア「JMAG」という独自パッケージを持っている。電磁波のシミュレーションソフトウエアで、自動車の電動化に伴い、EV開発のシミュレーションに活用するべく、自動車メーカーから引き合いがあるという。

「電気自動車の設計を考える際、モーターの形状、配置などを最適化することでバッテリーを効率化・軽量化したいので、当社のシミュレーションソフトウエアを活用していただくことで貢献しています」

このソフトウエアはJSOLの中でも歴史が長く、「時代が追い付いてきた」格好だ。この部門については社内カンパニーをつくり、専門性の高さから採用も別枠にしている。

新卒を59人に拡大し人材教育に注力

社長に就任以降、最も力を入れているのは教育だという。

「最先端の技術を築き上げるソフトウエア産業は人が重要であり、唯一の財産と言っても過言ではありません。教育・研修プログラムに予算をしっかり取り、現在のITトレンドを捉えてカリキュラムを組んでいます」と永井社長。

NTTデータの教育プログラムなども参考にしつつ、「人を育てる」体制を整えている。23年4月は新卒を59人採用する。

「併せて中途採用も目標を高く設定しており、積極的に採用していきたい。ただし、ITはただ人数によったやり方になってはいけないというのが、エンジニアとしてキャリアを築いてきた私の考えです。最近ではローコードやノーコードという、設計すれば直接システムに落とし込まれるような、プログラミングをほとんど必要としない仕組みも出てきています。そうした新しい開発手法を研究し活用しながらキャリアシフトを進め、新しい価値を創造していきたい」

シフトチェンジで世界水準へスピードアップを図る

永井社長はかつてNTTデータに在籍していた頃、ベトナムの税関システム構築にプロジェクトマネジャーとして関わった経験がある。永井社長が「最も成長させてもらったプロジェクト」と振り返るその2年間は過酷を極めた。その時に日本のやり方が全く通用しないことを痛感したそうだ。

「日本ではバグが出ないことを重視して開発します。ところがベトナムでは、バグが出るのは当たり前と考えています。その代わり、バグが出た時にいかに早く対応できるかを重視します。アジャイル開発的な発想ですね。どちらが正しいやり方というわけではありませんが、日本の方法は時間がかかりすぎるアプローチで、海外の世界水準の開発スピードには負けています。お客さまのニーズや社会性によって、どちらの手法も対応できる必要がある。その点でJSOLは、高品質なサービスをお客さまに提供し続けていますが、今後は本来持っている基礎力を武器に、シフトチェンジしてギアを上げ、さらなるスピードアップを図っていきます」 

会社概要
設立 2006年7月
資本金 50億円
売上高 411億円
本社 東京都千代田区
従業員数 1,200人
(2022年4月現在)
事業内容 ITコンサルティングやシステム企画、構築・運用などトータル・ソリューションの提供
https://www.jsol.co.jp/