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主力の太陽光パネル製造事業とグリーンエネルギー事業で急成長 Abalance 龍 潤生

Abalance 取締役CEO 龍 潤生 りゅう・じゅんせい

Abalance(エーバランス)は再生可能エネルギーの総合カンパニー。太陽光パネル製造事業とグリーンエネルギー事業の2つを成長エンジンに、欧米に販路を確立。近年、売り上げ規模と業容を急速に拡大している。(雑誌『経済界』2023年5月号「注目企業2023」特集より)

Abalance 取締役CEO 龍 潤生氏

Abalance 取締役CEO 龍 潤生 りゅう・じゅんせい
Abalance 取締役CEO 龍 潤生 りゅう・じゅんせい

連結売上高が2年で14倍。ベトナムの子会社が貢献

エーバランスが展開する事業セグメントは太陽光パネル製造事業、グリーンエネルギー事業、IT事業、光触媒事業の4つ。中でも太陽光パネル製造事業とグリーンエネルギー事業は合わせて売上高の9割超を占める主力事業だ。

同社はもともとITサービスを手掛けてきたが、2011年に建設機械事業・太陽光発電事業を展開するWWBを株式交換で子会社化したのを機に事業内容を変容させてきた。

主力事業の一つである太陽光パネル製造事業をけん引するのが、20年に子会社化したベトナムの太陽光パネルメーカーのVSUNだ。年間製造能力は5・0ギガワット(1ギガワットは原子力発電所約1基分)。エーバランスによると、世界で上位20位に入る規模で(Tier1リスト)、日系太陽光パネルメーカーで首位だ。世界的に再生可能エネルギーの需要が拡大していることから販売は好調だ。欧州、米国向けが伸長しているほか、南米からの受注も増加している。地域別の販売割合は米国6割、欧州3割、日本・南米1割だ。受注・販売が好調なことから、工場増設も計画しているという。

「太陽光パネルは、中国企業が世界市場で高シェアを占めています。米中が貿易で対立する中にあっても、VSUNはベトナム製というメリットを生かし、米国への輸出を拡大させています」と龍潤生取締役CEOは話す。

もう一つの主力事業であるグリーンエネルギー事業では、太陽光発電所の企画・設計・開発・建設・販売のワンストップ体制のほか、太陽光パネル・蓄電池などの物品販売を手掛けている。さらに、ストック型の太陽光発電所の自社保有による売電も行っている。

太陽光パネル製造事業、グリーンエネルギー事業の好調で、同社の連結売上高はここ数年で急伸。20年6月期66億円、21年6月期269億円、22年6月期924億円と、わずか2年で14倍に拡大している。

急拡大の要因はベトナム子会社VSUNの連結効果によるものだ。VSUNを中心とする太陽光パネル製造事業の22年6月期売上高は817億円(前期比289%増)で、連結売上高の大半を稼ぐ。グリーンエネルギー事業も前期比93%増の売上高102億円となっている。

両事業とも足元の売り上げは好調を続けており、23年6月期の連結売上高は6割増の1500億円を見込んでいる。

サプライチェーンの川上へ。主原料シリコンを自前で製造

エーバランスの主力事業を担うWWBは、龍氏が早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(MBA)修了後、06年6月に設立した。建設機械を販売するとともに、太陽光発電ビジネスを手掛けていった。太陽光パネルの輸入に関してJET(一般財団法人電気安全環境研究所)の認証を同業他社に先駆けて取得するなど事業を推進していく。

転換点となったのは11年の東日本大震災だ。震災後、国内全ての原子力発電所が停止し、太陽光発電への関心が高まった。12年には再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)がスタートした。龍氏は「太陽光発電の普及元年だった。ビジネスチャンスが大きく広がっていった」と振り返る。

エーバランスとの経営統合後、龍氏は同社の経営陣に加わるとともに、33%超の株式を保有する筆頭株主となった。以後、再生可能エネルギーの総合カンパニーとして事業を拡大してきた。

次の成長に向けて構想しているのが太陽光パネル製造における上流工程への進出だ。太陽光パネルの主原料であるシリコンの製造を自前化することによって、川上から川下に至る一貫したサプライチェーンを構築しようとしている。

「日本は太陽光パネルの9割以上を中国から輸入しています。米中貿易摩擦の影響が及んでも、日本企業である当社が一貫したサプライチェーンを構築すれば、大きなアドバンテージになります。数千億円の投資が必要になりますが実現したいと考えています」

同社は、農地の上部に太陽光パネルを設置し農業生産と発電を両立させるソーラーシェアリング事業も推進している。昨年関連会社になった明治機械とシナジー効果を生みながらさらに加速していく予定だ。

ソーラーシェアリングは、農業だけでは採算が合わなくても太陽光発電収入で採算に乗せることができ、農業経営の安定化が可能になるのがメリットだ。全国にある耕作放棄地の再生利用にもつなげられる。龍氏は「再生可能エネルギーの供給を通じ、環境問題と食糧問題の解決に貢献したい」と決意を語る。

会社概要
設立 2000年4月
資本金 19億6,228万円
売上高 924億3,500万円
本社 東京都品川区
従業員数 連結1,668人
(2022年12月31日現在)
事業内容 太陽光パネル製造事業、グリーンエネルギー事業、IT事業、光触媒事業、水素事業、建機販売事業
https://www.abalance.jp